【3章】フォーリンラブin室町
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「もう、墨で書くとこないですよ」
「お互いにね」
元々勉強することが目的なのに、テストという名のゲームはだらだらと続き、お互いの目に見えてる範囲でこれ以上墨で書けなくなってしまった。
「もうそろそろ終わりにして、墨を落としましょうか」
これ以上放置してたら肌が傷んでしまいそう。
利吉さんは手鏡とお湯を持ってきてくれた。
「では、私も落としてきます」
彼が部屋を出ていくと、私は桶を使って墨を落としていった。
「もー!めっちゃ書かれたぁ」
でも、なんやかんや楽しかったし、負けず嫌いな私は利吉さんにも沢山やり返せた。
文字も上達した気がする。
粗方落とし終わって、鏡で落とし残しがないか確認した。
「あっ、そういえば…」
見えづらい首筋にも何か書かれた記憶がある。
鏡で位置を確認した。
「あ……」
そこには一つだけ、ぽつんとハートマークが描かれていた。
**************
翌日。
この日は天気がいいから川に行くことになった。
「この辺にしましょうか」
利吉さんは、適度な場所を見つけると川の中にザブザブ入っていった。
魚を捕るための罠を仕掛けるらしい。
「(本当にかかるのかな…?)」
不思議に思いながら私は石に腰掛けて利吉さんを待った。
「(昨日のハートマーク……どういう意味だったんだろう)」
深い意味はないのだろうか。
でも他は上から何度も墨で上書きされてぐちゃぐちゃになってたのに、あそこだけ綺麗にハートマークの原型が残っていた。
まさか…という思いと、でも利吉さんって私にすごく甘いんだよなぁ…という自惚れ。
第一、何とも思っていない女を実家に連れて行くのだろうか。
山田先生が、学園に籠もりっきりの私に声を掛けるならわかるが。
でも室町の感覚ってまだよく掴めてないから、人情に厚い室町では普通と言われてしまえば全て納得してしまう。
「何考えてるんですか?」
利吉さんが隣に腰掛けたことで現実に引き戻された。
「いえっ!何でも。お魚かかるかなぁーって」
「この辺は魚が多いですから。期待はできます」
利吉さんの言葉通り、しばらくしたらお魚が罠に掛かっていた。
「わあっ!とれたてって美味しいんですね」
「気に入ってもらえてよかったです」
火起こしから何まで全部利吉さんがやってくれて、私は手頃な大きさの石で焼き場を作るために円で囲っただけだった。
「もう明日には土井先生の家に行かれてしまうんですね」
その声は寂しそうで、胸がツキンと痛んだ。
「とても楽しかったです。ありがとうございました」
文字の上達は私の自信に繋がった。
学園で過ごす毎日もいいけれど、こうやって外に出るのも新しい刺激が得られる。
「あの…名前さん」
利吉さんはパチパチ火が当たっている魚に目をやりながら、指を膝の上で交差して何か言いたそうにしている。
「はい…」
言葉を探している利吉さんを待った。
しかし、彼は眉をハの字に下げて「やっぱり、何でもないです」と話を終えてしまった。
私も気にしてない風を装いながら、魚に火を通した。
「お互いにね」
元々勉強することが目的なのに、テストという名のゲームはだらだらと続き、お互いの目に見えてる範囲でこれ以上墨で書けなくなってしまった。
「もうそろそろ終わりにして、墨を落としましょうか」
これ以上放置してたら肌が傷んでしまいそう。
利吉さんは手鏡とお湯を持ってきてくれた。
「では、私も落としてきます」
彼が部屋を出ていくと、私は桶を使って墨を落としていった。
「もー!めっちゃ書かれたぁ」
でも、なんやかんや楽しかったし、負けず嫌いな私は利吉さんにも沢山やり返せた。
文字も上達した気がする。
粗方落とし終わって、鏡で落とし残しがないか確認した。
「あっ、そういえば…」
見えづらい首筋にも何か書かれた記憶がある。
鏡で位置を確認した。
「あ……」
そこには一つだけ、ぽつんとハートマークが描かれていた。
**************
翌日。
この日は天気がいいから川に行くことになった。
「この辺にしましょうか」
利吉さんは、適度な場所を見つけると川の中にザブザブ入っていった。
魚を捕るための罠を仕掛けるらしい。
「(本当にかかるのかな…?)」
不思議に思いながら私は石に腰掛けて利吉さんを待った。
「(昨日のハートマーク……どういう意味だったんだろう)」
深い意味はないのだろうか。
でも他は上から何度も墨で上書きされてぐちゃぐちゃになってたのに、あそこだけ綺麗にハートマークの原型が残っていた。
まさか…という思いと、でも利吉さんって私にすごく甘いんだよなぁ…という自惚れ。
第一、何とも思っていない女を実家に連れて行くのだろうか。
山田先生が、学園に籠もりっきりの私に声を掛けるならわかるが。
でも室町の感覚ってまだよく掴めてないから、人情に厚い室町では普通と言われてしまえば全て納得してしまう。
「何考えてるんですか?」
利吉さんが隣に腰掛けたことで現実に引き戻された。
「いえっ!何でも。お魚かかるかなぁーって」
「この辺は魚が多いですから。期待はできます」
利吉さんの言葉通り、しばらくしたらお魚が罠に掛かっていた。
「わあっ!とれたてって美味しいんですね」
「気に入ってもらえてよかったです」
火起こしから何まで全部利吉さんがやってくれて、私は手頃な大きさの石で焼き場を作るために円で囲っただけだった。
「もう明日には土井先生の家に行かれてしまうんですね」
その声は寂しそうで、胸がツキンと痛んだ。
「とても楽しかったです。ありがとうございました」
文字の上達は私の自信に繋がった。
学園で過ごす毎日もいいけれど、こうやって外に出るのも新しい刺激が得られる。
「あの…名前さん」
利吉さんはパチパチ火が当たっている魚に目をやりながら、指を膝の上で交差して何か言いたそうにしている。
「はい…」
言葉を探している利吉さんを待った。
しかし、彼は眉をハの字に下げて「やっぱり、何でもないです」と話を終えてしまった。
私も気にしてない風を装いながら、魚に火を通した。
