【3章】フォーリンラブin室町
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今日はずっと待ち望んでいた忍術学園の長期休暇。
この日のために私は馬車車のように働いた。
なんとか調整できた休み。
名前さんとより一層距離を縮められたら・・・と思うのだが、場所が実家ということもあり下手なことはできない。
だが、実家でないとこうやって誘い出すのも難しかったと思う。
母上は名前さんの話をすると大層喜んでいた。
変な吹聴はしないでほしいと散々念押ししたが、大丈夫だろうか・・・。
名前の持ってきた手土産でお茶の時間にしようと、母上は台所へ向かった。
「私手伝います」
スッと立ち上がって、母上の後についていった名前さん。
しかし、慣れない道で疲れただろう。
私もその後を追いかけた。
「名前さんは座っていてください。疲れたでしょう」
「そうよ。ここは遠いから」
「いえいえ、そんな。お茶運ぶぐらいできます」
お互い座って休んでください押し問答をしている内に、お茶が用意できてしまった。
「なんなんだ、全員で。そんなところに三人もいらないだろう」
一人だけ胡坐を掻いて座っている父上に向かって、手裏剣が飛んだ。
「えっ!?」
「貴方は利吉を見習ってください」
「母上は元くノ一なんです」
驚いている名前さんにコソッと耳打ちした。
「そ、そうなんですね」
用意できたお茶をお盆にのせて運んだ。
「利吉がそんなことするなんて珍しいじゃないか」
「あら。可愛らしいお嬢さんにいいところを見せたいのは当たり前です」
「父上!母上!」
今からのお茶会、大丈夫なのか。
土井先生じゃないのに胃がキリキリ痛んだ。
「台所に入れる男性は素敵ですよね」
たかがお茶運んだだけでこんな風に言ってもらえるなら、何杯でも運ぼう。
「あ、茶柱」
名前さんは湯呑を持ち上げて嬉しそうに微笑んだ。
「茶柱が立ったことを人に話すと幸運が移るそうですよ」
「そうなんですか。じゃあ山田家にいいことが起こりますね」
なんてことない会話。
四人で円になって茶を啜り、名前さんが持参した茶菓子を頂くこの時間をとてつもなく幸せなものに感じた。
忍務を詰め込みすぎて、忍務をしている時間が私にとって日常だから。
仕事を憂鬱に感じたことはなかったのに。
まだ名前さんが来て初日なのに、もう休み明けの仕事をする日が億劫になっている。
「名前さんのおかげね」
「え?」
「こうやって、皆揃ってお茶を飲めるのは」
この人、全然帰ってこないからと父上に恨みがましい目を向けた。
「そうだわ、うちにお嫁さんに来たらいいのよ」
「母上!!」
なんか言う気がしてた。
あれだけ口止めしたのに。
「ええっ!お嫁さんですか!」
「ふふふ。私はいつでも歓迎だわ」
母上は嬉しそうに微笑んだ。
「学園で住み込みで働いているんでしょう?利吉も忍術学園で働けばいいのよ」
正直・・・常日頃その選択肢は頭に過っていた。
今の状態ではあれだが、もし名前さんと恋仲になれて将来的に夫婦になれたらそれもありだな・・・と。
だが、現実はまだ恋仲どころか自分が恋仲候補に上がれるかどうかの段階なのだ。
「あの・・・利吉さん困っちゃってるのでその辺で・・・」
名前さんが暴走している母上をやんわり止めた。
「あら、もしかしてもう心に決めた人がいるの?」
「母上!」
彼女の恋愛事情が気になる。
気になるが・・・タイミングというものがあるだろう。
今はまだ聞く気になれないというのに。
「えっ・・・と。まだそういう人はいない・・・です」
「じゃあ・・・」
「あの・・・山田先生と利吉さんのお母様の馴れ初め聞きたいです。とても素敵なご夫婦なので」
後学のために・・・と名前さんが上手く話を躱した。
父上は恥ずかしがって、飲んだ湯呑と茶菓子の包をそのままに「薪を割ってくる」と言って外へ出て行ってしまった。
「どこから話そうかしら・・・」
私も聞いたことのない父上と母上の馴れ初めを、懐かしそうに母上は話した。
それをニコニコ聞いている名前さんの顔を私はずっと見ていた。
この日のために私は馬車車のように働いた。
なんとか調整できた休み。
名前さんとより一層距離を縮められたら・・・と思うのだが、場所が実家ということもあり下手なことはできない。
だが、実家でないとこうやって誘い出すのも難しかったと思う。
母上は名前さんの話をすると大層喜んでいた。
変な吹聴はしないでほしいと散々念押ししたが、大丈夫だろうか・・・。
名前の持ってきた手土産でお茶の時間にしようと、母上は台所へ向かった。
「私手伝います」
スッと立ち上がって、母上の後についていった名前さん。
しかし、慣れない道で疲れただろう。
私もその後を追いかけた。
「名前さんは座っていてください。疲れたでしょう」
「そうよ。ここは遠いから」
「いえいえ、そんな。お茶運ぶぐらいできます」
お互い座って休んでください押し問答をしている内に、お茶が用意できてしまった。
「なんなんだ、全員で。そんなところに三人もいらないだろう」
一人だけ胡坐を掻いて座っている父上に向かって、手裏剣が飛んだ。
「えっ!?」
「貴方は利吉を見習ってください」
「母上は元くノ一なんです」
驚いている名前さんにコソッと耳打ちした。
「そ、そうなんですね」
用意できたお茶をお盆にのせて運んだ。
「利吉がそんなことするなんて珍しいじゃないか」
「あら。可愛らしいお嬢さんにいいところを見せたいのは当たり前です」
「父上!母上!」
今からのお茶会、大丈夫なのか。
土井先生じゃないのに胃がキリキリ痛んだ。
「台所に入れる男性は素敵ですよね」
たかがお茶運んだだけでこんな風に言ってもらえるなら、何杯でも運ぼう。
「あ、茶柱」
名前さんは湯呑を持ち上げて嬉しそうに微笑んだ。
「茶柱が立ったことを人に話すと幸運が移るそうですよ」
「そうなんですか。じゃあ山田家にいいことが起こりますね」
なんてことない会話。
四人で円になって茶を啜り、名前さんが持参した茶菓子を頂くこの時間をとてつもなく幸せなものに感じた。
忍務を詰め込みすぎて、忍務をしている時間が私にとって日常だから。
仕事を憂鬱に感じたことはなかったのに。
まだ名前さんが来て初日なのに、もう休み明けの仕事をする日が億劫になっている。
「名前さんのおかげね」
「え?」
「こうやって、皆揃ってお茶を飲めるのは」
この人、全然帰ってこないからと父上に恨みがましい目を向けた。
「そうだわ、うちにお嫁さんに来たらいいのよ」
「母上!!」
なんか言う気がしてた。
あれだけ口止めしたのに。
「ええっ!お嫁さんですか!」
「ふふふ。私はいつでも歓迎だわ」
母上は嬉しそうに微笑んだ。
「学園で住み込みで働いているんでしょう?利吉も忍術学園で働けばいいのよ」
正直・・・常日頃その選択肢は頭に過っていた。
今の状態ではあれだが、もし名前さんと恋仲になれて将来的に夫婦になれたらそれもありだな・・・と。
だが、現実はまだ恋仲どころか自分が恋仲候補に上がれるかどうかの段階なのだ。
「あの・・・利吉さん困っちゃってるのでその辺で・・・」
名前さんが暴走している母上をやんわり止めた。
「あら、もしかしてもう心に決めた人がいるの?」
「母上!」
彼女の恋愛事情が気になる。
気になるが・・・タイミングというものがあるだろう。
今はまだ聞く気になれないというのに。
「えっ・・・と。まだそういう人はいない・・・です」
「じゃあ・・・」
「あの・・・山田先生と利吉さんのお母様の馴れ初め聞きたいです。とても素敵なご夫婦なので」
後学のために・・・と名前さんが上手く話を躱した。
父上は恥ずかしがって、飲んだ湯呑と茶菓子の包をそのままに「薪を割ってくる」と言って外へ出て行ってしまった。
「どこから話そうかしら・・・」
私も聞いたことのない父上と母上の馴れ初めを、懐かしそうに母上は話した。
それをニコニコ聞いている名前さんの顔を私はずっと見ていた。
