【3章】フォーリンラブin室町
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
伊作くんと別れた後、私は仙蔵くんを探した。
「あっ!仙蔵くん!」
思っていたより彼はすぐに見つかった。
「……」
「仙蔵くん?」
確かに私に気づいていたのに、仙蔵くんは返事をしてくれなかった。
スタスタ歩いて行ってしまうので、必然的に距離が生まれた。
「ま、待って」
仙蔵くんを慌てて追いかけたが、今は小袖なので走りにくい。
この時代の人はなぜこんなに走りにくい服が平服なのか疑問だ。
「あっ!」
追いつくことばかり考えて、足元をちゃんと見てなかった。
小石に躓いて、転んでしまった。
ドサッと間抜けな音が辺りに響いた。
「いてて…」
痛む身体を起こすと、スッと目の前に手が差し出された。
「大丈夫ですか?」
「ありがとう…」
結構距離があったと思ったのに。
彼が私の目の前に現れたのは一瞬だった。
「顔に怪我がっ…」
仙蔵くんは慌てて私の頬についた土を払ってくれた。
少しヒリヒリするので、擦り傷ができてしまったかもしれない。
「これぐらい大丈夫。すぐ治るよ」
「水で落としましょう」
仙蔵くんは手持ちの水を使って落としてくれた。
「跡が残らなければいいのですが……」
そんな、いいのに。
見えないが、皮がズル剥けとか酷い状態じゃないのは痛みの度合いから分かる。
「大丈夫、大丈夫。それよりこっちの方が大丈夫かな……」
私は受け身を取れなかった原因の包みをそっと開いた。
「あ、よかった!大丈夫そう」
中には仙蔵くんのために握ったおにぎりが入っていた。
形は崩れてない。
「これ…仙蔵くんに。よかったら道中食べて」
私が渡すと彼は眉を寄せた。
「これを守るために…?」
「そんな!大げさだよ」
私が笑いながら包みを渡そうとしたら、彼はその包みごと私を抱き締めた。
「伊作のことしか見てないと思ってました…」
*****************
己の嫉妬深さが嫌になる。
以前も似たような感情をもったな。
あの日のことは随分前のことのように思えた。
出発前に名前さんの顔を見ておきたいと探していたのだが、やめておけばよかったと後悔した。
見つけた彼女は、伊作に抱き締められていて。
名前さんにとって伊作は特別だろう。
出会い頭、一番不安だった時に真っ先に助けてくれた人物なのだから。
遠くから二人を眺めている自分には付け入る隙など無いのだと思わされた。
実習だって、私も行きたくないのだが、名前さんは伊作の心配ばかりしているように見えた。
確かに伊作は目に見えて落ち込んでいたが。
それでも私だって同じ実習に行くのだから、少しぐらい心配してくれてもいいじゃないか、と不貞腐れた気分になった。
だから伊作と別れた名前さんが、まさか自分を探していたとは思わなかった。
彼らの近くを彷徨 いていたから、たまたま見つかってしまったのだと。
私ばかり嫌な思いをさせられているのだから、少しぐらい……そんな気持ちだった。
一生懸命私を追いかけて来てくれるのが内心嬉しくて。
名前さんの呼びかけに応答せずにいたら、後ろの方で転んだ音がした。
慌ててすぐに駆け寄ったが、転んだ彼女は受け身を取っておらず、包みを大事そうに腕に抱えていた。
「よかったら道中食べて」
渡そうとしている包みの中身はおにぎりだった。
確か、さっき伊作にも渡していた。
名前さんの中にはちゃんと私もいた。
それがたまらなく嬉しかった。
私も……抱き締めていいだろうか。
了承を取ることもせず、彼女の背中に腕を回した。
「あっ!仙蔵くん!」
思っていたより彼はすぐに見つかった。
「……」
「仙蔵くん?」
確かに私に気づいていたのに、仙蔵くんは返事をしてくれなかった。
スタスタ歩いて行ってしまうので、必然的に距離が生まれた。
「ま、待って」
仙蔵くんを慌てて追いかけたが、今は小袖なので走りにくい。
この時代の人はなぜこんなに走りにくい服が平服なのか疑問だ。
「あっ!」
追いつくことばかり考えて、足元をちゃんと見てなかった。
小石に躓いて、転んでしまった。
ドサッと間抜けな音が辺りに響いた。
「いてて…」
痛む身体を起こすと、スッと目の前に手が差し出された。
「大丈夫ですか?」
「ありがとう…」
結構距離があったと思ったのに。
彼が私の目の前に現れたのは一瞬だった。
「顔に怪我がっ…」
仙蔵くんは慌てて私の頬についた土を払ってくれた。
少しヒリヒリするので、擦り傷ができてしまったかもしれない。
「これぐらい大丈夫。すぐ治るよ」
「水で落としましょう」
仙蔵くんは手持ちの水を使って落としてくれた。
「跡が残らなければいいのですが……」
そんな、いいのに。
見えないが、皮がズル剥けとか酷い状態じゃないのは痛みの度合いから分かる。
「大丈夫、大丈夫。それよりこっちの方が大丈夫かな……」
私は受け身を取れなかった原因の包みをそっと開いた。
「あ、よかった!大丈夫そう」
中には仙蔵くんのために握ったおにぎりが入っていた。
形は崩れてない。
「これ…仙蔵くんに。よかったら道中食べて」
私が渡すと彼は眉を寄せた。
「これを守るために…?」
「そんな!大げさだよ」
私が笑いながら包みを渡そうとしたら、彼はその包みごと私を抱き締めた。
「伊作のことしか見てないと思ってました…」
*****************
己の嫉妬深さが嫌になる。
以前も似たような感情をもったな。
あの日のことは随分前のことのように思えた。
出発前に名前さんの顔を見ておきたいと探していたのだが、やめておけばよかったと後悔した。
見つけた彼女は、伊作に抱き締められていて。
名前さんにとって伊作は特別だろう。
出会い頭、一番不安だった時に真っ先に助けてくれた人物なのだから。
遠くから二人を眺めている自分には付け入る隙など無いのだと思わされた。
実習だって、私も行きたくないのだが、名前さんは伊作の心配ばかりしているように見えた。
確かに伊作は目に見えて落ち込んでいたが。
それでも私だって同じ実習に行くのだから、少しぐらい心配してくれてもいいじゃないか、と不貞腐れた気分になった。
だから伊作と別れた名前さんが、まさか自分を探していたとは思わなかった。
彼らの近くを
私ばかり嫌な思いをさせられているのだから、少しぐらい……そんな気持ちだった。
一生懸命私を追いかけて来てくれるのが内心嬉しくて。
名前さんの呼びかけに応答せずにいたら、後ろの方で転んだ音がした。
慌ててすぐに駆け寄ったが、転んだ彼女は受け身を取っておらず、包みを大事そうに腕に抱えていた。
「よかったら道中食べて」
渡そうとしている包みの中身はおにぎりだった。
確か、さっき伊作にも渡していた。
名前さんの中にはちゃんと私もいた。
それがたまらなく嬉しかった。
私も……抱き締めていいだろうか。
了承を取ることもせず、彼女の背中に腕を回した。
