【3章】フォーリンラブin室町
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そして実習の日。
私が実習に行くわけじゃないのに、ソワソワしてしまう。
夕方、伊作くんと待ち合わせをしている学園内の木の下に向かった。
すでに伊作くんは外出の準備をして立っていた。
私が近づいても気づく様子がなかった。
「伊作くん?」
「あ、名前さん」
声を掛けるとやっと顔を上げてくれた。
「いよいよ今日…だね」
「はい」
あ、思い出させないように違う話題にした方がよかったかな?
私は木の根っこに腰を下ろした。
伊作くんも隣にしゃがみ込んだ。
「………」
「………」
なんて話しかけたらいいか分からない。
沈黙が私達の間に流れた。
「あっ、あのね!貰った櫛、すっごく気に入ってて、毎日付けてるんだよ」
「はい。気づいてます。嬉しいです」
無理やり捻り出した話題は三秒で終了した。
「(うーん……)」
どうしよう。
頑張って、は何か違う気がするし…。
沈黙が辛くて、地面に生えている草を引っこ抜いた。
「あの……」
伊作くんが顔を上げたので、私もそれに倣った。
「お願いがあって…」
「うん、何?」
彼の瞳の奥は少し揺らいでいた。
「少しだけ、抱き締めてもいいですか」
眉を下げて、遠慮がちにお願いする伊作くん。
私はそっと両手を広げた。
「ど、どうぞ…」
彼は私の背中に腕を回すと、きつく抱き締めた。
まるでもう二度と会えないのではと思ってしまう。
「私…ここで待ってるから」
帰ってきたら、ここでもう一度抱き締めて。
そう伝えると、伊作くんは目を丸くして、口元を歪めた。
「行きたくないです…」
「うん」
「僕が喜んで実習に参加してるって名前さんには誤解されたくないです」
「してないよ!」
びっくりした。
そんな風に思ってたの?
「僕がその……変わってしまっても、これまでと変わりなく一緒に居てくれますか?」
……?
あ!!
「あ、あのね。伊作くん!土井先生、最後まではしないって言ってたよ!」
「ほ、本当ですか?」
やっぱり!
伊作くん、童貞奪われるって思ってる!!
「うんうん」
「よ、よかった……」
ちょっと、先生!
説明はちゃんとしといてよ。
無駄に不安にさせちゃってるじゃん。
「あのね、これおにぎり」
私は約束したおにぎりを伊作くんに手渡した。
「これ、今食べてもいいですか?」
「もちろんいいけど…」
「最近食欲無くて。でも名前さんと喋ったら急にお腹空いてきました」
ちょっと元気出たみたいでよかった。
「でも、伊作くんぐらいの歳だったら、そういうことできてラッキーみたいな感じでもおかしくないのに」
私が笑いながら言ったら、伊作くんは恥ずかしそうに、おにぎりに視線を落とした。
「やっぱり、肌を重ねる相手は好きな人だけがいいです」
当たり前の感覚なんだろうけど。
それでも彼の歳でそう言い切れるのは、すごく素敵なことだと思った。
伊作くんが将来誰と肌を重ねるのか…。
顔も分からない相手にやはりモヤッとした感情が胸に宿ったのであった。
私が実習に行くわけじゃないのに、ソワソワしてしまう。
夕方、伊作くんと待ち合わせをしている学園内の木の下に向かった。
すでに伊作くんは外出の準備をして立っていた。
私が近づいても気づく様子がなかった。
「伊作くん?」
「あ、名前さん」
声を掛けるとやっと顔を上げてくれた。
「いよいよ今日…だね」
「はい」
あ、思い出させないように違う話題にした方がよかったかな?
私は木の根っこに腰を下ろした。
伊作くんも隣にしゃがみ込んだ。
「………」
「………」
なんて話しかけたらいいか分からない。
沈黙が私達の間に流れた。
「あっ、あのね!貰った櫛、すっごく気に入ってて、毎日付けてるんだよ」
「はい。気づいてます。嬉しいです」
無理やり捻り出した話題は三秒で終了した。
「(うーん……)」
どうしよう。
頑張って、は何か違う気がするし…。
沈黙が辛くて、地面に生えている草を引っこ抜いた。
「あの……」
伊作くんが顔を上げたので、私もそれに倣った。
「お願いがあって…」
「うん、何?」
彼の瞳の奥は少し揺らいでいた。
「少しだけ、抱き締めてもいいですか」
眉を下げて、遠慮がちにお願いする伊作くん。
私はそっと両手を広げた。
「ど、どうぞ…」
彼は私の背中に腕を回すと、きつく抱き締めた。
まるでもう二度と会えないのではと思ってしまう。
「私…ここで待ってるから」
帰ってきたら、ここでもう一度抱き締めて。
そう伝えると、伊作くんは目を丸くして、口元を歪めた。
「行きたくないです…」
「うん」
「僕が喜んで実習に参加してるって名前さんには誤解されたくないです」
「してないよ!」
びっくりした。
そんな風に思ってたの?
「僕がその……変わってしまっても、これまでと変わりなく一緒に居てくれますか?」
……?
あ!!
「あ、あのね。伊作くん!土井先生、最後まではしないって言ってたよ!」
「ほ、本当ですか?」
やっぱり!
伊作くん、童貞奪われるって思ってる!!
「うんうん」
「よ、よかった……」
ちょっと、先生!
説明はちゃんとしといてよ。
無駄に不安にさせちゃってるじゃん。
「あのね、これおにぎり」
私は約束したおにぎりを伊作くんに手渡した。
「これ、今食べてもいいですか?」
「もちろんいいけど…」
「最近食欲無くて。でも名前さんと喋ったら急にお腹空いてきました」
ちょっと元気出たみたいでよかった。
「でも、伊作くんぐらいの歳だったら、そういうことできてラッキーみたいな感じでもおかしくないのに」
私が笑いながら言ったら、伊作くんは恥ずかしそうに、おにぎりに視線を落とした。
「やっぱり、肌を重ねる相手は好きな人だけがいいです」
当たり前の感覚なんだろうけど。
それでも彼の歳でそう言い切れるのは、すごく素敵なことだと思った。
伊作くんが将来誰と肌を重ねるのか…。
顔も分からない相手にやはりモヤッとした感情が胸に宿ったのであった。
