【3章】フォーリンラブin室町
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「ああ…あの実習か…」
「ちょっと彼らの年齢にしては刺激が強すぎませんか…?」
土井先生は難しい顔をして考え込んでいた。
「確かに、私も初めて聞いた時は驚いたよ。生徒にそんなことさせられないと抗議もした。……しかし」
土井先生はゆらゆら揺れている蝋燭の火を見つめた。
「私がここに来る前の話なんだけど。学園の卒業生で、城勤めしていた子が、敵対する城のくノ一の色仕掛けに嵌ってしまって密書を奪われたことがあったんだ」
「えっ……」
「それが原因で戦の戦況が大きく変わってしまい、怒った城主がその子を打ち首にしようとした」
打ち首……。
現代では考えられない出来事にゾッとした。
「その情報を聞きつけた学園が、総出でその子を保護して遠くの村へ雲隠れさせた過去があるらしくて」
土井先生はぐっと拳を握りしめた。
「安藤先生がおっしゃっていたよ。彼は一流の忍びになるって学園でとても頑張っていたと。でも彼はもう忍びを続けることが叶わなくなった」
たった一度の過ちが人生を狂わせる。
その人は今どんな思いで生きているのだろうか。
もしかしたら生きていないかもしれない…。
私は自分の浅はかな思考を恥じた。
何がセクハラだ。
伊作くんだって、重要性は分かってるって言ってたのに。
「この件があってから、そういう実習を取り入れるようにしたらしい」
土井先生はちょうどいい具合に冷めたであろう手元のお茶を啜った。
「その…実習の目的って色仕掛けがどういうものかを実体験して学ぶってことですよね」
「うん」
「その……それってどこまでするんでしょうか…」
最後までしちゃうんですか?と聞いたら土井先生は目を丸くして驚いた。
「まさか!それはさすがにないよ」
私はホッと息を吐いた。
「もちろん色仕掛けのパターンを把握しておくことも大事なんだけど、実習でそこまで体得できるかと言われたら難しい。一番の目的は、女性の身体に見慣れて免疫をつけること」
「免疫をつける……」
私の脳裏に六年生の顔が過った。
「あのっ!それって私にできないですか?」
「ええ!?」
皆が女性の色気に惑わされて、命を奪われるなんてそんなこと絶対嫌だ。
その人は密書で済んだかもしれないけど、下手したら暗殺されるかもしれないんだよね?
「女性の身体に見慣れるためなら私でもいいじゃないですか!」
伊作くんと仙蔵くんが女性に翻弄されるのも勿論嫌だけど、一番は彼らの命が脅かされることだ。
「私、嫌です。皆が命の危険に晒されるなんて。裸なんて見られたって何も減らないし。それが彼らのためになるならいくらでも私脱ぎます!」
この話を聞いて、私は一気に不安になってしまった。
仙蔵くんも言ってた。
卒業したら過酷な環境に身を置くことになるから、学園にいる間は甘えるべきだって。
私、ずっとここで安全に暮らしてるから、危機感が足りてないんだと自覚した。
まだ誰も傷ついていないのに、私は勝手に想像が先をいって涙が溢れ出てきた。
「ちょ、ちょっと待って。落ち着いて」
「た、例えばっ。毎晩お風呂一緒に入るとか!」
頬に伝った涙を乱暴に拭って、土井先生に詰め寄った。
「ちょっ。そんな学園の風紀が乱れることは許可できないよ」
「土井先生が見張ってればいいじゃないですか」
「ええっ!?」
六人に見られるなら、土井先生が追加で増えたってもう何も思わないよ。
迫る私に土井先生は身体を仰け反らせた。
「一回落ち着こう」
ガシッと肩を掴まれて後ろに押し返された。
やだ…熱くなりすぎちゃった。
我に返った私は座り直した。
「私の言葉が足らなかったよ。不安にさせちゃったね」
土井先生は眉を下げて苦笑した。
「ほとんどの忍者にとって色仕掛けは仕掛けることもなければ、受けることもないんだ」
「えっ、そうなんですか?」
「ああ。だって基本的に忍者はその可能性を心得ているから、成功率が低いんだよ」
まあ…確かに、言われてみれば。
「忍相手に成功させるには関係性を入念に築き上げないといけないけど、時間がかかるからこの手法はあまり取られないんだよ」
「そっか……」
「一般人相手には有効だから、その時に使われるんだ」
そっか…。
顔も知らない一般人さんはお気の毒だが、つまり忍者になった時点で色仕掛けを受ける対象から外れやすいってことか。
「でも、さっき言ったみたいに例外もある。だから実習はするに越したことはない、ということなんだ」
私のバロメーターはシュンと一気に降下した。
「それに…」
土井先生はにっこりと笑顔を浮かべた。
「彼らはもう一人前の忍者だ。色仕掛けなんかには引っ掛からないよ」
土井先生は彼らを信じていた。
私も皆を信じよう。
だって私から見ても皆すごい忍者だと思う。
「あの…ごめんなさい。熱くなっちゃって…」
一人で勝手に暴走したことが今さらながら恥ずかしくなった。
「あの子達のために何かしようとするその気持ちは、すごく嬉しいよ。でも……」
スッと伸びてきた手が私の頬に添えられた。
「名前さんの裸を見られるのは私が嫌……かな」
細められた彼の目が私の寝衣の合わせを見ているようで、高鳴った胸を押さえるためにキュッとそこを握った。
「ちょっと彼らの年齢にしては刺激が強すぎませんか…?」
土井先生は難しい顔をして考え込んでいた。
「確かに、私も初めて聞いた時は驚いたよ。生徒にそんなことさせられないと抗議もした。……しかし」
土井先生はゆらゆら揺れている蝋燭の火を見つめた。
「私がここに来る前の話なんだけど。学園の卒業生で、城勤めしていた子が、敵対する城のくノ一の色仕掛けに嵌ってしまって密書を奪われたことがあったんだ」
「えっ……」
「それが原因で戦の戦況が大きく変わってしまい、怒った城主がその子を打ち首にしようとした」
打ち首……。
現代では考えられない出来事にゾッとした。
「その情報を聞きつけた学園が、総出でその子を保護して遠くの村へ雲隠れさせた過去があるらしくて」
土井先生はぐっと拳を握りしめた。
「安藤先生がおっしゃっていたよ。彼は一流の忍びになるって学園でとても頑張っていたと。でも彼はもう忍びを続けることが叶わなくなった」
たった一度の過ちが人生を狂わせる。
その人は今どんな思いで生きているのだろうか。
もしかしたら生きていないかもしれない…。
私は自分の浅はかな思考を恥じた。
何がセクハラだ。
伊作くんだって、重要性は分かってるって言ってたのに。
「この件があってから、そういう実習を取り入れるようにしたらしい」
土井先生はちょうどいい具合に冷めたであろう手元のお茶を啜った。
「その…実習の目的って色仕掛けがどういうものかを実体験して学ぶってことですよね」
「うん」
「その……それってどこまでするんでしょうか…」
最後までしちゃうんですか?と聞いたら土井先生は目を丸くして驚いた。
「まさか!それはさすがにないよ」
私はホッと息を吐いた。
「もちろん色仕掛けのパターンを把握しておくことも大事なんだけど、実習でそこまで体得できるかと言われたら難しい。一番の目的は、女性の身体に見慣れて免疫をつけること」
「免疫をつける……」
私の脳裏に六年生の顔が過った。
「あのっ!それって私にできないですか?」
「ええ!?」
皆が女性の色気に惑わされて、命を奪われるなんてそんなこと絶対嫌だ。
その人は密書で済んだかもしれないけど、下手したら暗殺されるかもしれないんだよね?
「女性の身体に見慣れるためなら私でもいいじゃないですか!」
伊作くんと仙蔵くんが女性に翻弄されるのも勿論嫌だけど、一番は彼らの命が脅かされることだ。
「私、嫌です。皆が命の危険に晒されるなんて。裸なんて見られたって何も減らないし。それが彼らのためになるならいくらでも私脱ぎます!」
この話を聞いて、私は一気に不安になってしまった。
仙蔵くんも言ってた。
卒業したら過酷な環境に身を置くことになるから、学園にいる間は甘えるべきだって。
私、ずっとここで安全に暮らしてるから、危機感が足りてないんだと自覚した。
まだ誰も傷ついていないのに、私は勝手に想像が先をいって涙が溢れ出てきた。
「ちょ、ちょっと待って。落ち着いて」
「た、例えばっ。毎晩お風呂一緒に入るとか!」
頬に伝った涙を乱暴に拭って、土井先生に詰め寄った。
「ちょっ。そんな学園の風紀が乱れることは許可できないよ」
「土井先生が見張ってればいいじゃないですか」
「ええっ!?」
六人に見られるなら、土井先生が追加で増えたってもう何も思わないよ。
迫る私に土井先生は身体を仰け反らせた。
「一回落ち着こう」
ガシッと肩を掴まれて後ろに押し返された。
やだ…熱くなりすぎちゃった。
我に返った私は座り直した。
「私の言葉が足らなかったよ。不安にさせちゃったね」
土井先生は眉を下げて苦笑した。
「ほとんどの忍者にとって色仕掛けは仕掛けることもなければ、受けることもないんだ」
「えっ、そうなんですか?」
「ああ。だって基本的に忍者はその可能性を心得ているから、成功率が低いんだよ」
まあ…確かに、言われてみれば。
「忍相手に成功させるには関係性を入念に築き上げないといけないけど、時間がかかるからこの手法はあまり取られないんだよ」
「そっか……」
「一般人相手には有効だから、その時に使われるんだ」
そっか…。
顔も知らない一般人さんはお気の毒だが、つまり忍者になった時点で色仕掛けを受ける対象から外れやすいってことか。
「でも、さっき言ったみたいに例外もある。だから実習はするに越したことはない、ということなんだ」
私のバロメーターはシュンと一気に降下した。
「それに…」
土井先生はにっこりと笑顔を浮かべた。
「彼らはもう一人前の忍者だ。色仕掛けなんかには引っ掛からないよ」
土井先生は彼らを信じていた。
私も皆を信じよう。
だって私から見ても皆すごい忍者だと思う。
「あの…ごめんなさい。熱くなっちゃって…」
一人で勝手に暴走したことが今さらながら恥ずかしくなった。
「あの子達のために何かしようとするその気持ちは、すごく嬉しいよ。でも……」
スッと伸びてきた手が私の頬に添えられた。
「名前さんの裸を見られるのは私が嫌……かな」
細められた彼の目が私の寝衣の合わせを見ているようで、高鳴った胸を押さえるためにキュッとそこを握った。
