【3章】フォーリンラブin室町
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私はおばちゃんの家を出て、隣の民家の戸を叩いた。
「大丈夫だった?」
「はい。お借りできました」
私の返事を聞いて、土井先生は安堵の溜息を吐いた。
家の中へ入るように促されたので従った。
二人しかいないけれど、土井先生は声を潜めた。
「何か聞かれなかった?」
「えっと…誤解がないように訂正だけしておきました」
土井先生の名誉は保たれたはず…。
「私は戦災を受けて、土井先生の職場でお世話になっていることになってます」
「わかった。あ、そうだ…。私が忍びをやっていることは内緒にしているんだ」
「わかりました。口を滑らさないように気をつけます」
お互いの話を擦り合わせて、今後隣のおばちゃんや大家さんに不審がられないように気をつけようということになった。
「いっそ恋仲ってことにしちゃいますか?」
冗談でそう言うと、土井先生は顔を赤くして口をモゴモゴさせて言葉を探していた。
「じょ、冗談ですよ!そんなに焦られると傷つきます」
プイッと拗ねて見せたら、慌てて弁明してきた。
「そ、そうじゃないんだ。嫌なわけじゃなくて」
「ふふ、冗談です」
敵わないなぁ、と頭を掻いた土井先生は私の手を引いて外に出た。
「就職祝い、買いに行こう」
肌小袖騒動ですっかり忘れていた。
手を引かれるがまま、再び露店の通りに戻った。
「(土井先生の手、おっきいなぁ…)」
こっちの人達は苦労している分、手に厚みがあった。
見た目は優しくて穏やかだけれど、厳しい環境を生き抜いてきた手をしていた。
男女差を考慮しても、私のなよなよした頼りない手とは大違いだ。
「名前さんの手は小さいね」
「え?」
土井先生も同じ事を考えていたようだ。
「強く握ったら折れてしまいそうだ」
「さすがにそんなに弱くないです」
赤ちゃんじゃないんだから、とケタケタ笑ったが土井先生は私と対照的に神妙な顔つきをしていた。
「少し怖いかな。しっかり握っていないと、失ってしまいそうで」
確かに、私はこっちの世界の女性のように節ばった手をしていない。
過ごしてきた環境があまりにも違いすぎるから。
私の外見は、違う時代から飛んできたことを証明できる唯一のものなのかもしれない。
土井先生は何かを失った過去があるのだろうか。
私は目の前にいるのに、どこか遠い目をしている土井先生の手をギュッと両手で握った。
「ここにいます」
もしかしたらまた突然タイムスリップしちゃうかもしれないけど。
「私、ここにいます。これからもここに居たいです。だから、この手を離さないでください。私もしがみつきますから」
現代に帰りたくないわけじゃない。
でもここで居場所を作ることができている今は、帰れるか不確かなタイムスリップを再び望むよりも、ここに留まることを願っていた。
「離さないです。絶対に」
私よりも強い力でぐっと握られた手は少し痛かったけれど、その痛みがこれが現実だと教えてくれた。
「あったあった」
就職祝い何買ってもらおうかなぁ…と悩んでいたら、土井先生はあるお店の前で足を止めた。
「すみません。肌小袖が欲しいんですけど…」
そこは被服屋さんで。
私はきょとりと目を丸くした。
「あ、あの…」
肌小袖は確かに欲しい。
でも私が持っている銭で買えるかわからないから、もうちょっと下調べをしてからにしたかった。
私の不安そうな顔を見て、土井先生はにこりと笑った。
「就職祝い。肌小袖でいいかい?」
「え……」
そりゃあ、喉から手が出るほど欲しい。
でも…。
「そんなの悪いです。肌小袖って高いんじゃ…」
室町は基本的に衣関係は自分で縫うようだ。
中には仕立ててあるものもあるが、要はハンドメイドするか既製品を買うかの違いで、後者は手間がない分高値になる。
「就職祝いなんだから。少しぐらい格好つけさせて」
きり丸のアルバイト散々手伝ってるからたまに臨時収入もあるんだ、と続けた。
確かにブラック企業もびっくりな程働き詰めの土井先生は、利吉さん同様銭を使う暇がないのかもしれない。
「ありがとうございます…」
ここまで来たら断るのも失礼だと思うし、何より店主がもう売る気満々で私の身体に肌小袖を当ててサイズを確かめている。
「肌小袖が贈り物って変かもしれないけど…」
私は首を大きく横に振った。
「本当に困っていたので、とても嬉しいです。大事にします」
土井先生は嬉しそうに笑った。
「大丈夫だった?」
「はい。お借りできました」
私の返事を聞いて、土井先生は安堵の溜息を吐いた。
家の中へ入るように促されたので従った。
二人しかいないけれど、土井先生は声を潜めた。
「何か聞かれなかった?」
「えっと…誤解がないように訂正だけしておきました」
土井先生の名誉は保たれたはず…。
「私は戦災を受けて、土井先生の職場でお世話になっていることになってます」
「わかった。あ、そうだ…。私が忍びをやっていることは内緒にしているんだ」
「わかりました。口を滑らさないように気をつけます」
お互いの話を擦り合わせて、今後隣のおばちゃんや大家さんに不審がられないように気をつけようということになった。
「いっそ恋仲ってことにしちゃいますか?」
冗談でそう言うと、土井先生は顔を赤くして口をモゴモゴさせて言葉を探していた。
「じょ、冗談ですよ!そんなに焦られると傷つきます」
プイッと拗ねて見せたら、慌てて弁明してきた。
「そ、そうじゃないんだ。嫌なわけじゃなくて」
「ふふ、冗談です」
敵わないなぁ、と頭を掻いた土井先生は私の手を引いて外に出た。
「就職祝い、買いに行こう」
肌小袖騒動ですっかり忘れていた。
手を引かれるがまま、再び露店の通りに戻った。
「(土井先生の手、おっきいなぁ…)」
こっちの人達は苦労している分、手に厚みがあった。
見た目は優しくて穏やかだけれど、厳しい環境を生き抜いてきた手をしていた。
男女差を考慮しても、私のなよなよした頼りない手とは大違いだ。
「名前さんの手は小さいね」
「え?」
土井先生も同じ事を考えていたようだ。
「強く握ったら折れてしまいそうだ」
「さすがにそんなに弱くないです」
赤ちゃんじゃないんだから、とケタケタ笑ったが土井先生は私と対照的に神妙な顔つきをしていた。
「少し怖いかな。しっかり握っていないと、失ってしまいそうで」
確かに、私はこっちの世界の女性のように節ばった手をしていない。
過ごしてきた環境があまりにも違いすぎるから。
私の外見は、違う時代から飛んできたことを証明できる唯一のものなのかもしれない。
土井先生は何かを失った過去があるのだろうか。
私は目の前にいるのに、どこか遠い目をしている土井先生の手をギュッと両手で握った。
「ここにいます」
もしかしたらまた突然タイムスリップしちゃうかもしれないけど。
「私、ここにいます。これからもここに居たいです。だから、この手を離さないでください。私もしがみつきますから」
現代に帰りたくないわけじゃない。
でもここで居場所を作ることができている今は、帰れるか不確かなタイムスリップを再び望むよりも、ここに留まることを願っていた。
「離さないです。絶対に」
私よりも強い力でぐっと握られた手は少し痛かったけれど、その痛みがこれが現実だと教えてくれた。
「あったあった」
就職祝い何買ってもらおうかなぁ…と悩んでいたら、土井先生はあるお店の前で足を止めた。
「すみません。肌小袖が欲しいんですけど…」
そこは被服屋さんで。
私はきょとりと目を丸くした。
「あ、あの…」
肌小袖は確かに欲しい。
でも私が持っている銭で買えるかわからないから、もうちょっと下調べをしてからにしたかった。
私の不安そうな顔を見て、土井先生はにこりと笑った。
「就職祝い。肌小袖でいいかい?」
「え……」
そりゃあ、喉から手が出るほど欲しい。
でも…。
「そんなの悪いです。肌小袖って高いんじゃ…」
室町は基本的に衣関係は自分で縫うようだ。
中には仕立ててあるものもあるが、要はハンドメイドするか既製品を買うかの違いで、後者は手間がない分高値になる。
「就職祝いなんだから。少しぐらい格好つけさせて」
きり丸のアルバイト散々手伝ってるからたまに臨時収入もあるんだ、と続けた。
確かにブラック企業もびっくりな程働き詰めの土井先生は、利吉さん同様銭を使う暇がないのかもしれない。
「ありがとうございます…」
ここまで来たら断るのも失礼だと思うし、何より店主がもう売る気満々で私の身体に肌小袖を当ててサイズを確かめている。
「肌小袖が贈り物って変かもしれないけど…」
私は首を大きく横に振った。
「本当に困っていたので、とても嬉しいです。大事にします」
土井先生は嬉しそうに笑った。
