【1章】さよなら令和、ようこそ室町
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まるで儚い白雪のような人だと思った。
たまたま委員会活動が全員無かったその日。
せっかくなので六年生揃って裏山で鍛錬しようと移動していたときのこと。
「誰かいませんかぁ・・・」
小さくか細いその声は俺たちの耳にしっかり届いた。
「こんなところに誰だ、一体」
我先にと動いたのはギンギンに忍者している彼。
茂みを搔き分けて声がする方へ進むと彼女はそこに立っていた。
見たことのない風貌に、全員の足が止まった。
やはりここでも一番先に動いたのは文次郎で、強気な態度に戸惑いと怯えが彼女から感じられた。
それよりも僕が目についたのは彼女の服装よりも足元で。
草鞋を履いていない上に傷だらけだ。
どうしてこんなことに・・・。
文次郎は間者と疑うが、間者ならもっと他にやりようがあるだろう。
今は戦乱の世。
信じられないことが普通に起こる世の中だ。
ある日突然全てを奪われることだって珍しくない。
装いがなんだっていうんだ。
僕にとって重要なのは彼女が怪我をしていて、このまま見て見ぬふりをすればさらにひどい目に遭うかもしれないという事実だ。
だってそうだろう。
こんなに華奢で無知な彼女を治療だけして外に出したら・・・。
学園内にある全てを物珍しそうに見ている彼女はまるで何も知らない幼子だ。
南蛮姫が何らかしらの事情でどこかの城に監禁されていてそこから逃げ出してきた・・・というのが僕の憶測だけれど、実際のところ彼女が姫かどうかは二の次だ。
記憶が無く、誰かに守られていなければ生きていけない存在であることは明白だ。
疑う役割は文次郎に任せよう。
だから僕は彼女を信じる役割を担うことにする。
ここに来てから幾度となく震えているその手が震えなくなるように。
何度だってその手を握って安心させてあげたい。
大丈夫、僕は味方だよ。
不安になる度にキュッと遠慮がちに掴んでくるその指。
ささくれ一つない指に釘付けになる。
まるで僕だけが頼りなのだと、そう訴えかけられている気がして。
文次郎に言えばお前は術に嵌まっているのだと呆れられてしまうだろう。
でも、この庇護欲をもうどこにもしまうことはできない。
今が戦乱の世であることさえ分かってない彼女の様子に、やはり記憶が欠けているのだと確信した。
少し取り乱した彼女にもう一度寝るように促すと、案外早く眠りについた。
「おやすみ」
今度こそ眠った彼女の頭を撫でて、衝立の向こうへと移動した。
たまたま委員会活動が全員無かったその日。
せっかくなので六年生揃って裏山で鍛錬しようと移動していたときのこと。
「誰かいませんかぁ・・・」
小さくか細いその声は俺たちの耳にしっかり届いた。
「こんなところに誰だ、一体」
我先にと動いたのはギンギンに忍者している彼。
茂みを搔き分けて声がする方へ進むと彼女はそこに立っていた。
見たことのない風貌に、全員の足が止まった。
やはりここでも一番先に動いたのは文次郎で、強気な態度に戸惑いと怯えが彼女から感じられた。
それよりも僕が目についたのは彼女の服装よりも足元で。
草鞋を履いていない上に傷だらけだ。
どうしてこんなことに・・・。
文次郎は間者と疑うが、間者ならもっと他にやりようがあるだろう。
今は戦乱の世。
信じられないことが普通に起こる世の中だ。
ある日突然全てを奪われることだって珍しくない。
装いがなんだっていうんだ。
僕にとって重要なのは彼女が怪我をしていて、このまま見て見ぬふりをすればさらにひどい目に遭うかもしれないという事実だ。
だってそうだろう。
こんなに華奢で無知な彼女を治療だけして外に出したら・・・。
学園内にある全てを物珍しそうに見ている彼女はまるで何も知らない幼子だ。
南蛮姫が何らかしらの事情でどこかの城に監禁されていてそこから逃げ出してきた・・・というのが僕の憶測だけれど、実際のところ彼女が姫かどうかは二の次だ。
記憶が無く、誰かに守られていなければ生きていけない存在であることは明白だ。
疑う役割は文次郎に任せよう。
だから僕は彼女を信じる役割を担うことにする。
ここに来てから幾度となく震えているその手が震えなくなるように。
何度だってその手を握って安心させてあげたい。
大丈夫、僕は味方だよ。
不安になる度にキュッと遠慮がちに掴んでくるその指。
ささくれ一つない指に釘付けになる。
まるで僕だけが頼りなのだと、そう訴えかけられている気がして。
文次郎に言えばお前は術に嵌まっているのだと呆れられてしまうだろう。
でも、この庇護欲をもうどこにもしまうことはできない。
今が戦乱の世であることさえ分かってない彼女の様子に、やはり記憶が欠けているのだと確信した。
少し取り乱した彼女にもう一度寝るように促すと、案外早く眠りについた。
「おやすみ」
今度こそ眠った彼女の頭を撫でて、衝立の向こうへと移動した。
