【3章】フォーリンラブin室町
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今日は、あの人が会計委員会にやって来る日だ。
事務員になってから、精力的に働いている彼女。
初日に留三郎が委員会の話をしたからか、活動を知っておきたいと俺に見学を申し出てきた。
「こんにちは」
ひょこっと廊下から顔を出したのは、今しがた考え事に登場していた名前さんだ。
「こんにちは」
「お邪魔します」
今までのことはすっかり水に流した様子で、その姿が逆に罪悪感をいつまでも俺に持たせた。
「あっ!名前さんだ!」
「こんにちは。団蔵くん」
一年は組は名前さんとクラスごと懇意にしている。
嬉しそうに駆け寄るあの素直さを少し羨ましく思った。
「今日はどうされたんですか?」
「会計委員会がどんなことしてるのか、見学させてもらうね」
「名前さん!見てください!今帳簿を合わせてるんです」
「ふむふむ」
名前さんは団蔵が書いていた紙を覗き込んだ。
「……」
「どうしましたか?」
固まってしまった名前さんは悲しそうに瞼を伏せた。
「ごめんね。私、文字が読めないんだ。楷書体は読めるんだけど、くずし字が難しくて…」
「名前さん、団蔵の字は皆読めません」
「そ、そうなの?」
ホッとしたように息を吐く名前さんと対照的に団蔵は肩を落とした。
「落ち込むくらいなら文字を書く練習せんか」
「はいっ!」
「私も文字覚えるの頑張らないとなぁ…」
ポツリと名前さんは呟いた。
「ですが、名前さんは事務員になりたてで覚えることが多いでしょう」
「そうなの。なかなか手が回らなくて」
「焦る必要は無いですよ」
ずっとここにいるなら、いつか覚えるだろうからゆっくりでいい。
名前さんはポカンとした表情で俺を見つめていた。
「何か?」
「や、叱咤されるかと思ったから」
「それが俺の印象ですか」
わかってはいたが、怖いとはっきり突きつけられた気がした。
「潮江くんって自他共に厳しいタイプかなって」
その分析は当たっている。
だが、くだんの件もあり名前さんにだけは未来永劫強く出られないだろう。
「あの…ね。私に気を使ってくれてるなら、大丈夫だよ?」
「そんなつもりは」
「話し方だって、あの日以来敬語だし…」
それは貴方の方が年上だから。
女性に対し、年齢を引き合いに出して良いのか分からなかったので口を噤んだ。
「あの日からずっと気を使われてるなぁ…って思ってたから」
「あの日って?」
話に入れない団蔵が、我慢できずに割って入ってきた。
「団蔵、帳簿は終わったのか?」
事情を知っている三木ヱ門がすかさず団蔵を離した。
「ごめんなさい。話、脱線しちゃったね」
「……善処します」
それを貴方が望むのなら。
俺の返事を聞いた名前さんは嬉しそうにはにかんだ。
彼女と話せば話すほど、今までの自分はどうかしていたと思う。
名前さんは間者どころか忍びとしての素質がゼロに等しい。
先入観で視野が狭まっていた己を恥じた。
「あっ、そうだ!仙蔵くんに頼まれてるの。作法委員会の予算って増やせない?」
仙蔵のやつ…。
名前さんをダシに使うとは。
「難しいですね。予算はどこもカツカツで…」
「そうなんだ…」
彼女は悲しそうに眉を寄せた。
「用具委員会も予算が足りず、外壁の修理が滞ってるんです」
部屋から見える外壁を指さすと名前さんは驚いた表情を浮かべた。
「事故が起きたら大変!」
「ええ。名前さんも気をつけてください」
忠告すると、名前さんは険しい顔で何かを考え込んでいた。
「名前さん?」
「あっ。ううん。何でもないの。今日は見学させてくれてありがとう」
「えっ!名前さん、もう帰っちゃうんですか?」
団蔵が寂しそうに名前さんの袖を引っ張った。
「少し休憩するか」
いつもならやることやって、すぐに鍛錬に移るのだがこういう日があってもいいだろう。
お茶を淹れて全員でのんびり休憩を取った。
「ところで左門くんは?」
「裏山あたりで迷子になってるんじゃないでしょうか」
「こっちだー!!!」
「あ、いた」
会計委員会の前を通り過ぎようとしたので、首根っこを捉えて部屋に引きずりこんだのであった。
事務員になってから、精力的に働いている彼女。
初日に留三郎が委員会の話をしたからか、活動を知っておきたいと俺に見学を申し出てきた。
「こんにちは」
ひょこっと廊下から顔を出したのは、今しがた考え事に登場していた名前さんだ。
「こんにちは」
「お邪魔します」
今までのことはすっかり水に流した様子で、その姿が逆に罪悪感をいつまでも俺に持たせた。
「あっ!名前さんだ!」
「こんにちは。団蔵くん」
一年は組は名前さんとクラスごと懇意にしている。
嬉しそうに駆け寄るあの素直さを少し羨ましく思った。
「今日はどうされたんですか?」
「会計委員会がどんなことしてるのか、見学させてもらうね」
「名前さん!見てください!今帳簿を合わせてるんです」
「ふむふむ」
名前さんは団蔵が書いていた紙を覗き込んだ。
「……」
「どうしましたか?」
固まってしまった名前さんは悲しそうに瞼を伏せた。
「ごめんね。私、文字が読めないんだ。楷書体は読めるんだけど、くずし字が難しくて…」
「名前さん、団蔵の字は皆読めません」
「そ、そうなの?」
ホッとしたように息を吐く名前さんと対照的に団蔵は肩を落とした。
「落ち込むくらいなら文字を書く練習せんか」
「はいっ!」
「私も文字覚えるの頑張らないとなぁ…」
ポツリと名前さんは呟いた。
「ですが、名前さんは事務員になりたてで覚えることが多いでしょう」
「そうなの。なかなか手が回らなくて」
「焦る必要は無いですよ」
ずっとここにいるなら、いつか覚えるだろうからゆっくりでいい。
名前さんはポカンとした表情で俺を見つめていた。
「何か?」
「や、叱咤されるかと思ったから」
「それが俺の印象ですか」
わかってはいたが、怖いとはっきり突きつけられた気がした。
「潮江くんって自他共に厳しいタイプかなって」
その分析は当たっている。
だが、くだんの件もあり名前さんにだけは未来永劫強く出られないだろう。
「あの…ね。私に気を使ってくれてるなら、大丈夫だよ?」
「そんなつもりは」
「話し方だって、あの日以来敬語だし…」
それは貴方の方が年上だから。
女性に対し、年齢を引き合いに出して良いのか分からなかったので口を噤んだ。
「あの日からずっと気を使われてるなぁ…って思ってたから」
「あの日って?」
話に入れない団蔵が、我慢できずに割って入ってきた。
「団蔵、帳簿は終わったのか?」
事情を知っている三木ヱ門がすかさず団蔵を離した。
「ごめんなさい。話、脱線しちゃったね」
「……善処します」
それを貴方が望むのなら。
俺の返事を聞いた名前さんは嬉しそうにはにかんだ。
彼女と話せば話すほど、今までの自分はどうかしていたと思う。
名前さんは間者どころか忍びとしての素質がゼロに等しい。
先入観で視野が狭まっていた己を恥じた。
「あっ、そうだ!仙蔵くんに頼まれてるの。作法委員会の予算って増やせない?」
仙蔵のやつ…。
名前さんをダシに使うとは。
「難しいですね。予算はどこもカツカツで…」
「そうなんだ…」
彼女は悲しそうに眉を寄せた。
「用具委員会も予算が足りず、外壁の修理が滞ってるんです」
部屋から見える外壁を指さすと名前さんは驚いた表情を浮かべた。
「事故が起きたら大変!」
「ええ。名前さんも気をつけてください」
忠告すると、名前さんは険しい顔で何かを考え込んでいた。
「名前さん?」
「あっ。ううん。何でもないの。今日は見学させてくれてありがとう」
「えっ!名前さん、もう帰っちゃうんですか?」
団蔵が寂しそうに名前さんの袖を引っ張った。
「少し休憩するか」
いつもならやることやって、すぐに鍛錬に移るのだがこういう日があってもいいだろう。
お茶を淹れて全員でのんびり休憩を取った。
「ところで左門くんは?」
「裏山あたりで迷子になってるんじゃないでしょうか」
「こっちだー!!!」
「あ、いた」
会計委員会の前を通り過ぎようとしたので、首根っこを捉えて部屋に引きずりこんだのであった。
