【2章】室町パニック
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食堂のおばちゃんが潤滑油となってくれたことであの場は収まったが、私は後悔していた。
忍者としての性が邪魔した…というのは言い訳にすぎない。
すぐに名前さんの元へ駆け寄れなかった自分に落胆した。
名前さんは間者ではない、と私自身結論付けていたし、その考えは変わらない。
あの潮江が見せていた暗器と疑ったものだって、名前さんが悪気無く持っていただけだと冷静に考えればわかるはずだったのに。
見たことない物を見たせいで一瞬思考が停止し足が動かなかった。
だが結局、どれもいい訳だ。
もし、小松田くんよりも早く彼女を庇って抱き締められたなら、今名前さんの隣に居たのは自分だったのだろうか。
名前さんの部屋に布団を敷きながらそんなことを思った。
「名前ちゃん、僕ちょっとトイレ行ってくるよ」
「えっ。私もついてく」
「ええ!でも寒いよ」
「名前さん、ここで待っていよう」
私に言われて、名前さんは不安そうに小松田くんが部屋を出ていくのを見送った。
まるで親鳥に置いていかれた雛鳥のようで。
同じように布団を敷いていた伊作と仙蔵も、不安そうな名前さんを見て後悔の念を浮かべていた。
「名前さん、すまなかった」
「え?」
小松田くんが居ない今を逃すと、謝るきっかけを掴めなくなってしまう。
まだか、まだか、と彼の帰りをひたむきに待つ名前さんがやっとこっちを見てくれた。
「名前さんのことを深く傷つけてしまった」
彼女は戸惑った様子で、言葉を探していた。
「……。仕方ないです。私、つい最近出てきた怪しい人間ですし。信じてもらえなくてもしょうがないって頭では分かってるんですけど……」
やっと涙が止まったはずの名前さんはまた目が潤んで、必死に止めようとしていた。
「三人に疑われて、すごく悲しかったです…」
我々の一瞬の動揺、混乱は、名前さんにしっかり届いてしまっていた。
必死に抑えていた涙はついに彼女の頬を伝った。
私が次の言葉を探している間に、伊作が名前さんの手を取った。
「ごめんなさい、ごめんなさい…」
伊作の目からも涙が溢れていた。
「名前さんのこと守るって言ったのに。守るどころか傷つけて…」
伊作の隣に仙蔵も腰を下ろした。
「本当に申し訳ありませんでした」
深く頭を下げる仙蔵はぐっと奥歯を噛み締めて、必死に涙が出ないように感情を押し殺しているように見える。
「ううん。もういいの。謝らないで」
謝られたら名前さんはこう言うしかなくなってしまう。
謝ったところで、先程の出来事が帳消しになるとは思っていない。
私は食堂のおばちゃんに言われたことを反芻していた。
❝土井先生が名前ちゃんの場所を作っておやりよ❞
今まで私がやっていたことは問題が起こる度に対処療法で解決して、感謝されて、それで満足していた。
そして彼女の居場所を作った気でいた。
実際、名前さん自身はここに留まることに限界を感じ始めているのではないだろうか。
別れ間際に発したおばちゃんへの問いかけが学園を去るという選択肢が彼女の中で生まれている証拠だった。
そんなの嫌だ。
子どもみたいだが、名前さんがここから居なくなるなんて考えられなかった。
まだ間に合う。
彼女は❝ここに居られなくなったら❞と表現していた。
それはつまりここにまだ居たいという裏返しだ。
「ただいま戻りました〜」
「あっ。おかえりなさい!」
小松田くんが帰ってきた途端、さっきまで暗かった表情がパッと明るくなった。
その表情を引き出したのが自分ではないことが、堪らなく悔しかった。
伊作と仙蔵を見て、きっと自分も同じ表情を浮かべているんだろうな、と苦笑した。
忍者としての性が邪魔した…というのは言い訳にすぎない。
すぐに名前さんの元へ駆け寄れなかった自分に落胆した。
名前さんは間者ではない、と私自身結論付けていたし、その考えは変わらない。
あの潮江が見せていた暗器と疑ったものだって、名前さんが悪気無く持っていただけだと冷静に考えればわかるはずだったのに。
見たことない物を見たせいで一瞬思考が停止し足が動かなかった。
だが結局、どれもいい訳だ。
もし、小松田くんよりも早く彼女を庇って抱き締められたなら、今名前さんの隣に居たのは自分だったのだろうか。
名前さんの部屋に布団を敷きながらそんなことを思った。
「名前ちゃん、僕ちょっとトイレ行ってくるよ」
「えっ。私もついてく」
「ええ!でも寒いよ」
「名前さん、ここで待っていよう」
私に言われて、名前さんは不安そうに小松田くんが部屋を出ていくのを見送った。
まるで親鳥に置いていかれた雛鳥のようで。
同じように布団を敷いていた伊作と仙蔵も、不安そうな名前さんを見て後悔の念を浮かべていた。
「名前さん、すまなかった」
「え?」
小松田くんが居ない今を逃すと、謝るきっかけを掴めなくなってしまう。
まだか、まだか、と彼の帰りをひたむきに待つ名前さんがやっとこっちを見てくれた。
「名前さんのことを深く傷つけてしまった」
彼女は戸惑った様子で、言葉を探していた。
「……。仕方ないです。私、つい最近出てきた怪しい人間ですし。信じてもらえなくてもしょうがないって頭では分かってるんですけど……」
やっと涙が止まったはずの名前さんはまた目が潤んで、必死に止めようとしていた。
「三人に疑われて、すごく悲しかったです…」
我々の一瞬の動揺、混乱は、名前さんにしっかり届いてしまっていた。
必死に抑えていた涙はついに彼女の頬を伝った。
私が次の言葉を探している間に、伊作が名前さんの手を取った。
「ごめんなさい、ごめんなさい…」
伊作の目からも涙が溢れていた。
「名前さんのこと守るって言ったのに。守るどころか傷つけて…」
伊作の隣に仙蔵も腰を下ろした。
「本当に申し訳ありませんでした」
深く頭を下げる仙蔵はぐっと奥歯を噛み締めて、必死に涙が出ないように感情を押し殺しているように見える。
「ううん。もういいの。謝らないで」
謝られたら名前さんはこう言うしかなくなってしまう。
謝ったところで、先程の出来事が帳消しになるとは思っていない。
私は食堂のおばちゃんに言われたことを反芻していた。
❝土井先生が名前ちゃんの場所を作っておやりよ❞
今まで私がやっていたことは問題が起こる度に対処療法で解決して、感謝されて、それで満足していた。
そして彼女の居場所を作った気でいた。
実際、名前さん自身はここに留まることに限界を感じ始めているのではないだろうか。
別れ間際に発したおばちゃんへの問いかけが学園を去るという選択肢が彼女の中で生まれている証拠だった。
そんなの嫌だ。
子どもみたいだが、名前さんがここから居なくなるなんて考えられなかった。
まだ間に合う。
彼女は❝ここに居られなくなったら❞と表現していた。
それはつまりここにまだ居たいという裏返しだ。
「ただいま戻りました〜」
「あっ。おかえりなさい!」
小松田くんが帰ってきた途端、さっきまで暗かった表情がパッと明るくなった。
その表情を引き出したのが自分ではないことが、堪らなく悔しかった。
伊作と仙蔵を見て、きっと自分も同じ表情を浮かべているんだろうな、と苦笑した。