【2章】室町パニック
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まだ夕方なので蝋燭を点けなくてもお互いの顔はよく見えた。
「どうしたの?」
何やら深刻そうに悩んでいるので、こちらも固唾を飲んで伊作くんの言葉を待った。
「その・・・」
チラリと伊作くんが視線を向けたのは私が机に置いていた櫛だった。
「(あ、もしかして・・・)」
伊作くんも誰かから櫛の意味を聞いたのかもしれない。
私は櫛を手に取った。
「これのこと?」
尋ねたら小さく頷いた。
「僕、知らなくて・・・。櫛が・・・その」
「求婚する時に贈るものだってこと?」
再び小さく彼は頷いた。
「ごめんね。私も知らなかったの」
「いえ。名前さんは記憶がないので知らなくて当然です。僕が世間知らずだったから・・・」
落ち込む伊作くんにどうしたものか、と考える。
うーん・・・。
「名前さんさえ良ければ・・・やり直しさせてもらえないかなって。この櫛は返してもらって、別の物を贈らせてもらえませんか?」
そっかぁ・・・。
この櫛結構気に入ってたんだけどな。
でも伊作くんも好きな女の子にあげたいよね。
「あっ!」
私は襖の奥に隠しておいた残った銭を全て出した。
「あのね・・・これ、買い取らせてくれないかな?」
銭を全部合わせれば足りるはず。
本当は他に必要なものが出たときのために残しておきたかったけど、これを買い取るためなら惜しくない。
「え、でも・・・」
「だって、これ返しても、一度私の手に渡ったものを好きな子にあげるわけにはいかないでしょ?」
私は銭を全部伊作くんの前に寄せた。
「それに・・・伊作くんが選んでくれたやつだから、持っていたいの」
私は櫛を再び髪につけた。
「どう?似合うかな?」
「はい、とっても・・・」
伊作くんは銭を私の方に押し戻した。
「もし・・・名前さんが嫌じゃないなら、やっぱりそのまま持っていてもらえませんか?」
「嫌なんてとんでもないよ!すごく嬉しかったよ」
すると彼は嬉しそうに笑った。
「なんかさ、もう深いことは考えなくていいんじゃないかなって思うんだけど・・・。私はこの櫛欲しいし、伊作くんはあげたいって思ったから買ってくれたんでしょ?それだけじゃだめかな?」
現代人だからかだろうか。
求婚の時に櫛って言われて最初は動揺したけど、ダイヤのついた指輪じゃないんだからもういいのでは・・・と思ってしまう。
ダイヤの指輪は自分で買う人滅多にいないから特別感あるけど、櫛は自分で買って皆普通につけているものだし。
なんか周りが騒ぎすぎてかき乱された感ある。
この櫛の意味合いは双方ただのプレゼントとして認識しているわけで、そこにも齟齬はない。
郷に入らば・・・って思ってたけど、入れないこともあるわ。
非常識だって言われても、この櫛は持っていたい。
「伊作くんが周りから私と噂されて嫌じゃなければ・・・だけど」
「全然っ!嫌じゃないです!!」
「私も大丈夫」
これで万事解決。
ちょっとからかわれるかもしれないけど、でも堂々とこの櫛はつけることに決めた。
______________________________________________
※補足 本来櫛をプロポーズとして贈る文化は江戸時代あたりからだそうです。(簡易なネット調べなので信憑性薄)
「どうしたの?」
何やら深刻そうに悩んでいるので、こちらも固唾を飲んで伊作くんの言葉を待った。
「その・・・」
チラリと伊作くんが視線を向けたのは私が机に置いていた櫛だった。
「(あ、もしかして・・・)」
伊作くんも誰かから櫛の意味を聞いたのかもしれない。
私は櫛を手に取った。
「これのこと?」
尋ねたら小さく頷いた。
「僕、知らなくて・・・。櫛が・・・その」
「求婚する時に贈るものだってこと?」
再び小さく彼は頷いた。
「ごめんね。私も知らなかったの」
「いえ。名前さんは記憶がないので知らなくて当然です。僕が世間知らずだったから・・・」
落ち込む伊作くんにどうしたものか、と考える。
うーん・・・。
「名前さんさえ良ければ・・・やり直しさせてもらえないかなって。この櫛は返してもらって、別の物を贈らせてもらえませんか?」
そっかぁ・・・。
この櫛結構気に入ってたんだけどな。
でも伊作くんも好きな女の子にあげたいよね。
「あっ!」
私は襖の奥に隠しておいた残った銭を全て出した。
「あのね・・・これ、買い取らせてくれないかな?」
銭を全部合わせれば足りるはず。
本当は他に必要なものが出たときのために残しておきたかったけど、これを買い取るためなら惜しくない。
「え、でも・・・」
「だって、これ返しても、一度私の手に渡ったものを好きな子にあげるわけにはいかないでしょ?」
私は銭を全部伊作くんの前に寄せた。
「それに・・・伊作くんが選んでくれたやつだから、持っていたいの」
私は櫛を再び髪につけた。
「どう?似合うかな?」
「はい、とっても・・・」
伊作くんは銭を私の方に押し戻した。
「もし・・・名前さんが嫌じゃないなら、やっぱりそのまま持っていてもらえませんか?」
「嫌なんてとんでもないよ!すごく嬉しかったよ」
すると彼は嬉しそうに笑った。
「なんかさ、もう深いことは考えなくていいんじゃないかなって思うんだけど・・・。私はこの櫛欲しいし、伊作くんはあげたいって思ったから買ってくれたんでしょ?それだけじゃだめかな?」
現代人だからかだろうか。
求婚の時に櫛って言われて最初は動揺したけど、ダイヤのついた指輪じゃないんだからもういいのでは・・・と思ってしまう。
ダイヤの指輪は自分で買う人滅多にいないから特別感あるけど、櫛は自分で買って皆普通につけているものだし。
なんか周りが騒ぎすぎてかき乱された感ある。
この櫛の意味合いは双方ただのプレゼントとして認識しているわけで、そこにも齟齬はない。
郷に入らば・・・って思ってたけど、入れないこともあるわ。
非常識だって言われても、この櫛は持っていたい。
「伊作くんが周りから私と噂されて嫌じゃなければ・・・だけど」
「全然っ!嫌じゃないです!!」
「私も大丈夫」
これで万事解決。
ちょっとからかわれるかもしれないけど、でも堂々とこの櫛はつけることに決めた。
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※補足 本来櫛をプロポーズとして贈る文化は江戸時代あたりからだそうです。(簡易なネット調べなので信憑性薄)
