【2章】室町パニック
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ある日の放課後。
今日はこの後何しようかなぁ…と考えていたら土井先生が前からやってきた。
「あ、名前さん!!ちょうどよかった。これから暇かい?」
「はい。何かやることありますか?」
「じゃあちょっと付き合って」
土井先生に連れられて、先生の自室兼職員室に入った。
先生の机には化粧品が並んでいた。
「これ…私が忍務のときに使うやつなんだ」
「へぇー…」
近寄ってみると、白粉や紅、頬紅など一通り揃っていた。
「え…?今から土井先生の女装を見せて頂けるんですか?」
「違う!!!」
土井先生は声を大にして否定した。
「ゴホン。名前さんが化粧したいって言ってたから、私ので良ければ貸そうと思って」
「えっ!!そんな、いいですよ」
「遠慮しないで」
「……」
一度は遠慮したものの、わざわざこう言ってくれてるし…。
「使ってみてもいいですか?」
「もちろん」
こっちの人はわりと厚化粧が基本のようだが、私は現代人なので少しのせるだけでいい。
白粉を手の甲で薄めて、周りに粉が飛び散らないように慎重にはたいた。
用意してあった手鏡で確認すると、肌のトーンが一段階アップした。
頬紅もおかめちゃんにならないよう気をつけて薄くのせる。
「どう…ですか?」
私的にはこんなもんかなと思ったのだが、こっちの時代の人的にはどうなんだろう。
「………」
「土井先生?」
「ああ!うん、すっごく綺麗だよ」
「直したほうがいいところありますか?」
「無いよ、本当に」
良かった。
私が胸を撫で下ろしていると、土井先生が化粧道具を風呂敷にまとめて私に渡した。
「これ、名前さんが持っていたらいいよ。忍務で必要になるときに私が借りることにする」
「えっ!?そんなの悪いですよ」
「でもそうしないと名前さんいつまで経っても私のところに借りに来なさそうだし」
確かに…。
貸してくれると言っても、毎朝訪ねるのは憚られた。
「いつも使い切る前に傷ませてしまって、買い直してるんだ。だから、使い切ってくれた方が嬉しい」
そこまで言われたら…。
「ありがとうございます。大事に使わせて頂きます」
化粧道具が入れられた風呂敷を落とさないようにぎゅっと抱きしめた。
「おお、名前くんじゃないか」
山田先生も職員室に戻ってきた。
「や、山田先生…」
土井先生の顔が引きつっている。
「学園長の用事はもういいんですか?」
「ああ。相変わらずしょうもない話だったよ」
よっこいせと腰を下ろした山田先生。
「ん?その風呂敷は何だ?」
「あ、土井先生がお化粧道具を貸してくださったんです」
「なに!?」
え?
私、そんな変なこと言った?
大きな目がギョロッとこちらに向いて驚いてしまった。
「化粧のことならなぜ私に相談しないんだ?」
「それはー、はは…ねぇ?」
土井先生が困ったように頭を掻いた。
山田先生お化粧に詳しいのかな?と私が首を傾げて風呂敷に視線を落とした後、顔を再度上げたら、見慣れぬ女性が立っていた。
「え?」
だ、誰?
「美の伝道師!山田伝子よ!!」
山田先生が居なくなって、伝子さんと自称する女性(?)が立っている。
「えっと…山田先生でお間違いないですか?」
土井先生に尋ねたら、額に手を当てながら深い溜息を吐き頷いた。
「ほら、これが私の化粧道具よ」
伝子さんは自分の机に化粧道具を並べた。
「わあっ!!いっぱいあるんですね」
土井先生は最小限を買い揃えている感じだが、伝子さんは化粧を楽しんでいることがよくわかった。
「一軍はどれですか?」
「これとこれねぇ。発色がいいのよ」
「へー!!」
「勝負の日は言って頂戴!半助が持ってるやつだと色気が足りないから。こっちの方が男ウケいいわよ」
男ウケはどうやって確認したんだろうか。
気になるけど、聞けない。
化粧に詳しいのは仙蔵くんだと思ってた。
山田先生は厳しそうって勝手に思ってたけど、意外な一面を見られて嬉しかった。
せっかくだからちょっと忍たま達に女装の指南をしてくる…と伝子さんは出ていってしまった。
再び土井先生と2人きりになった部屋。
「名前さん、大丈夫かい?驚いただろう」
「まぁ…一瞬のうちに別人になったので」
「でもあまり動揺してないみたいだね」
「多様性を生きてるんで」
「どういうことだい?」
「いえ、なんでも」
多様性の時代である令和から来た私は、伝子さんに驚きはしたがただそれだけだ。
平成だったらちょっと引いてたかもしれない。
自分はしっかり令和を生きていたんだと感じた。
「私…土井先生の女装見てみたいです」
「ええ…それはちょっと」
「絶対綺麗。間違いない。ね、ちょっとだけ…」
風呂敷からさっきお借りした化粧道具を取り出し、じりじりと近づいたら、土井先生は私が近づいた分だけ下がっていく。
「な、何をするつもりなんだ」
「見せてくれないなら、私が土井先生に化粧しようかなって」
むふふ…と一歩、また一歩と壁際に土井先生を追い詰めていく。
「動かないでください…」
背が高いからやり辛い。
背伸びして紅をのせようとしたとき、土井先生は視線を上へと上げた。
「小袖の中見えてるよ」
「えっ!?」
私は瞬時に土井先生から離れてぎゅっと小袖の合わせを確認した。
「嘘だよ」
「あっ…」
化粧道具は油断した私の手から回収され風呂敷へと仕舞われてしまった。
「いたずらっ子だな」
ふに、と頬を軽く抓られた。
「調子に乗りました。すみません」
素直に謝ると、土井先生は離してくれた。
「でも…そうだな。私はこういうの良くわからないから、今度化粧を教えてくれたら嬉しい」
「仙蔵くんの方が得意かもしれないです」
私、教えられるほど化粧上手くないんだけどなぁ…。
そう思っていたら土井先生が私の唇に指を這わせた。
「名前さんに教わりたいんだ」
私はコクコクと黙って頷いた。
今日はこの後何しようかなぁ…と考えていたら土井先生が前からやってきた。
「あ、名前さん!!ちょうどよかった。これから暇かい?」
「はい。何かやることありますか?」
「じゃあちょっと付き合って」
土井先生に連れられて、先生の自室兼職員室に入った。
先生の机には化粧品が並んでいた。
「これ…私が忍務のときに使うやつなんだ」
「へぇー…」
近寄ってみると、白粉や紅、頬紅など一通り揃っていた。
「え…?今から土井先生の女装を見せて頂けるんですか?」
「違う!!!」
土井先生は声を大にして否定した。
「ゴホン。名前さんが化粧したいって言ってたから、私ので良ければ貸そうと思って」
「えっ!!そんな、いいですよ」
「遠慮しないで」
「……」
一度は遠慮したものの、わざわざこう言ってくれてるし…。
「使ってみてもいいですか?」
「もちろん」
こっちの人はわりと厚化粧が基本のようだが、私は現代人なので少しのせるだけでいい。
白粉を手の甲で薄めて、周りに粉が飛び散らないように慎重にはたいた。
用意してあった手鏡で確認すると、肌のトーンが一段階アップした。
頬紅もおかめちゃんにならないよう気をつけて薄くのせる。
「どう…ですか?」
私的にはこんなもんかなと思ったのだが、こっちの時代の人的にはどうなんだろう。
「………」
「土井先生?」
「ああ!うん、すっごく綺麗だよ」
「直したほうがいいところありますか?」
「無いよ、本当に」
良かった。
私が胸を撫で下ろしていると、土井先生が化粧道具を風呂敷にまとめて私に渡した。
「これ、名前さんが持っていたらいいよ。忍務で必要になるときに私が借りることにする」
「えっ!?そんなの悪いですよ」
「でもそうしないと名前さんいつまで経っても私のところに借りに来なさそうだし」
確かに…。
貸してくれると言っても、毎朝訪ねるのは憚られた。
「いつも使い切る前に傷ませてしまって、買い直してるんだ。だから、使い切ってくれた方が嬉しい」
そこまで言われたら…。
「ありがとうございます。大事に使わせて頂きます」
化粧道具が入れられた風呂敷を落とさないようにぎゅっと抱きしめた。
「おお、名前くんじゃないか」
山田先生も職員室に戻ってきた。
「や、山田先生…」
土井先生の顔が引きつっている。
「学園長の用事はもういいんですか?」
「ああ。相変わらずしょうもない話だったよ」
よっこいせと腰を下ろした山田先生。
「ん?その風呂敷は何だ?」
「あ、土井先生がお化粧道具を貸してくださったんです」
「なに!?」
え?
私、そんな変なこと言った?
大きな目がギョロッとこちらに向いて驚いてしまった。
「化粧のことならなぜ私に相談しないんだ?」
「それはー、はは…ねぇ?」
土井先生が困ったように頭を掻いた。
山田先生お化粧に詳しいのかな?と私が首を傾げて風呂敷に視線を落とした後、顔を再度上げたら、見慣れぬ女性が立っていた。
「え?」
だ、誰?
「美の伝道師!山田伝子よ!!」
山田先生が居なくなって、伝子さんと自称する女性(?)が立っている。
「えっと…山田先生でお間違いないですか?」
土井先生に尋ねたら、額に手を当てながら深い溜息を吐き頷いた。
「ほら、これが私の化粧道具よ」
伝子さんは自分の机に化粧道具を並べた。
「わあっ!!いっぱいあるんですね」
土井先生は最小限を買い揃えている感じだが、伝子さんは化粧を楽しんでいることがよくわかった。
「一軍はどれですか?」
「これとこれねぇ。発色がいいのよ」
「へー!!」
「勝負の日は言って頂戴!半助が持ってるやつだと色気が足りないから。こっちの方が男ウケいいわよ」
男ウケはどうやって確認したんだろうか。
気になるけど、聞けない。
化粧に詳しいのは仙蔵くんだと思ってた。
山田先生は厳しそうって勝手に思ってたけど、意外な一面を見られて嬉しかった。
せっかくだからちょっと忍たま達に女装の指南をしてくる…と伝子さんは出ていってしまった。
再び土井先生と2人きりになった部屋。
「名前さん、大丈夫かい?驚いただろう」
「まぁ…一瞬のうちに別人になったので」
「でもあまり動揺してないみたいだね」
「多様性を生きてるんで」
「どういうことだい?」
「いえ、なんでも」
多様性の時代である令和から来た私は、伝子さんに驚きはしたがただそれだけだ。
平成だったらちょっと引いてたかもしれない。
自分はしっかり令和を生きていたんだと感じた。
「私…土井先生の女装見てみたいです」
「ええ…それはちょっと」
「絶対綺麗。間違いない。ね、ちょっとだけ…」
風呂敷からさっきお借りした化粧道具を取り出し、じりじりと近づいたら、土井先生は私が近づいた分だけ下がっていく。
「な、何をするつもりなんだ」
「見せてくれないなら、私が土井先生に化粧しようかなって」
むふふ…と一歩、また一歩と壁際に土井先生を追い詰めていく。
「動かないでください…」
背が高いからやり辛い。
背伸びして紅をのせようとしたとき、土井先生は視線を上へと上げた。
「小袖の中見えてるよ」
「えっ!?」
私は瞬時に土井先生から離れてぎゅっと小袖の合わせを確認した。
「嘘だよ」
「あっ…」
化粧道具は油断した私の手から回収され風呂敷へと仕舞われてしまった。
「いたずらっ子だな」
ふに、と頬を軽く抓られた。
「調子に乗りました。すみません」
素直に謝ると、土井先生は離してくれた。
「でも…そうだな。私はこういうの良くわからないから、今度化粧を教えてくれたら嬉しい」
「仙蔵くんの方が得意かもしれないです」
私、教えられるほど化粧上手くないんだけどなぁ…。
そう思っていたら土井先生が私の唇に指を這わせた。
「名前さんに教わりたいんだ」
私はコクコクと黙って頷いた。
