【2章】室町パニック
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「今日はありがとうございました」
「お礼を言うのは私の方です!」
帰り道、もうすぐ学園に着きそうな頃合いで利吉さんが切り出した。
「こんなに素敵な紅まで頂いて…」
受け取った包みに視線を落とした。
「それ、開けてみてくれませんか?」
利吉さんに言われて、私はそのへんの座りやすい岩に腰かけて紅を開けた。
「え、これ…?」
中を開けると私が欲しいと言った紅とは違うもので。
それは利吉さんが推したものだった。
確かにそれはとても素敵だったけど、他の商品とディスプレイの仕方が違ったので、おそらく高いんだろうと予想がついて断ったのだ。
色や質感も他の商品より精巧で、目が惹きつけられた。
「店主から聞きました。貴方が一番安い紅はどれかと聞いてきたと」
そう。
確かに聞いた。
それらの中から一番好きなやつを選んだのだ。
「ちなみに名前さんが持ってきた物は、一番安いものではなく平均的な物らしいです」
「えっ!?そうなんですか!?」
私が立て札に書かれた値段を読めないことに気づいた店主が、平均的なものを最安だと言って騙したのだという。
「どうせ私が買うと分かっていたからでしょう。しかし、私が勧めたのがもっと高級なものだったので、それを売りたかった店主がネタばらししてくれましたよ」
「もう…」
商魂魂が逞しい店主に騙されてしまった。
遠慮する気持ちもあったが、ここでそれを出したらせっかく利吉さんが買ってくれた厚意を無駄にしてしまう。
「本当は…これが一番素敵だと思っていたんです」
だから素直に自分の気持ちを伝えた。
「よかった」
利吉さんがホッとしたように胸を撫で下ろした。
「まさか…今日こんなに素敵な紅を頂けるなんて思っていなかったので、すごく嬉しいです」
「喜んでもらえてよかったです」
現代では簡単に手に入っていた化粧品。
たまに贅沢してブランド物を買ったり。
それがこっちに来てからは手が届かない物になってしまった。
考えないようにしていたが、やっぱりお洒落したい気持ちは人並みにある。
だから、本当に本当に嬉しかった。
「ど、どうしましたか!?」
感極まって、涙が零れてしまった。
「すみません。嬉しくて」
利吉さんは「そんなに?泣くほど?」と戸惑っている。
「だって、私がこれを手に入れられるのはもっと遠い先のことだと思ってたので」
「今、少し塗ってもいいですか?」
利吉さんに聞かれて頷いた。
忍務で女装するからか、慣れた手つきで紅を指につけると私の唇に触れた。
紅をのせてくれていると分かっていても、唇の上を往復する感触にドキドキした。
「うん、とってもよく似合ってます」
すごく嬉しい。
早く鏡で見たい。
「本当にありがとうございます」
「ちゃんと使ってくださいね?」
勿体なくて使えないかもと思っていた私の思考を読まれてしまった。
私は大きく頷いた。
「お礼を言うのは私の方です!」
帰り道、もうすぐ学園に着きそうな頃合いで利吉さんが切り出した。
「こんなに素敵な紅まで頂いて…」
受け取った包みに視線を落とした。
「それ、開けてみてくれませんか?」
利吉さんに言われて、私はそのへんの座りやすい岩に腰かけて紅を開けた。
「え、これ…?」
中を開けると私が欲しいと言った紅とは違うもので。
それは利吉さんが推したものだった。
確かにそれはとても素敵だったけど、他の商品とディスプレイの仕方が違ったので、おそらく高いんだろうと予想がついて断ったのだ。
色や質感も他の商品より精巧で、目が惹きつけられた。
「店主から聞きました。貴方が一番安い紅はどれかと聞いてきたと」
そう。
確かに聞いた。
それらの中から一番好きなやつを選んだのだ。
「ちなみに名前さんが持ってきた物は、一番安いものではなく平均的な物らしいです」
「えっ!?そうなんですか!?」
私が立て札に書かれた値段を読めないことに気づいた店主が、平均的なものを最安だと言って騙したのだという。
「どうせ私が買うと分かっていたからでしょう。しかし、私が勧めたのがもっと高級なものだったので、それを売りたかった店主がネタばらししてくれましたよ」
「もう…」
商魂魂が逞しい店主に騙されてしまった。
遠慮する気持ちもあったが、ここでそれを出したらせっかく利吉さんが買ってくれた厚意を無駄にしてしまう。
「本当は…これが一番素敵だと思っていたんです」
だから素直に自分の気持ちを伝えた。
「よかった」
利吉さんがホッとしたように胸を撫で下ろした。
「まさか…今日こんなに素敵な紅を頂けるなんて思っていなかったので、すごく嬉しいです」
「喜んでもらえてよかったです」
現代では簡単に手に入っていた化粧品。
たまに贅沢してブランド物を買ったり。
それがこっちに来てからは手が届かない物になってしまった。
考えないようにしていたが、やっぱりお洒落したい気持ちは人並みにある。
だから、本当に本当に嬉しかった。
「ど、どうしましたか!?」
感極まって、涙が零れてしまった。
「すみません。嬉しくて」
利吉さんは「そんなに?泣くほど?」と戸惑っている。
「だって、私がこれを手に入れられるのはもっと遠い先のことだと思ってたので」
「今、少し塗ってもいいですか?」
利吉さんに聞かれて頷いた。
忍務で女装するからか、慣れた手つきで紅を指につけると私の唇に触れた。
紅をのせてくれていると分かっていても、唇の上を往復する感触にドキドキした。
「うん、とってもよく似合ってます」
すごく嬉しい。
早く鏡で見たい。
「本当にありがとうございます」
「ちゃんと使ってくださいね?」
勿体なくて使えないかもと思っていた私の思考を読まれてしまった。
私は大きく頷いた。
