【2章】室町パニック
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名前さんとお近づきになりたいと思いつつ、忍術学園に在籍していない私は会える回数に限りがあった。
なんとかして一緒に過ごすチャンスを作れないものか…と考えていた折に、天は私に味方したらしい。
深刻そうな顔で何かを考えていたので、軽い気持ちで問うてみたら、アルバイトがしたいと言う。
咄嗟に頭が回転して、この案を出せた自分を褒めたい。
❝どこまでさせてくれるんですか❞
正直、許されるならどこまででも…。
甘美な妄想が頭を掠めたが、理性で消去した。
がっつきすぎたら引かれてしまうだろう。
コホンと咳払いをして、緩みそうになる頬を引き締め団子屋を出てから隣を歩く彼女を一瞥した。
男としての感情はさておき、忍びとして冷静に名前さんを分析すればするほど謎は深まっていく。
ここに着いてから、見るもの見るもの、全てが初めてのようでキラキラした表情はとても可愛いのだけれど、今まででどうやって生きてきたのか疑問に思う。
記憶が無いことを突いてみれば、目を泳がせながら肯定していた。
嘘が下手すぎる。
本当に記憶が無いのか?
南蛮の姫、というのが当面の見立てであったが、それもイマイチ私の中でしっくりこなかった。
最初は耳からの情報しかなかったので、そのように信じていたが、実際に彼女に会って視覚情報を得たことで疑問を持つようになった。
いや、姫のように美しいのは同意するが。
忍術学園に害をなすようにも到底思えない。
1年生相手にすら勝てるのか怪しい。
繋いだ手に視線を移すと、何の努力も知らない手をしていた。
❝記憶がない❞というよりは❝何も知らない❞のではないだろうか。
何も知らない・・・となるとどこかで匿われていて逃げ出してきたというのが見立てとして濃厚になるが、その割にしっかり栄養も取れていて虐げられているようにも見えない。
となるとやはり外の世界を知らない姫・・・?
結局思考は堂々巡りを繰り返し、答えなど出そうにもなかった。
これだけ嘘が下手なのだから、いっそ詰問してみようかとも思ったが、そんなことをすればおそらく嫌われるし、忍術学園の人たちがやっていないことを私が行うことも憚られた。
まあ、しばらく様子見でいいか・・・。
せっかく癒されているのに、こう頭を働かせると疲れてしまう。
ふう・・・と息を吐いた。
空を見上げれば、もうそろそろ日が落ちてきそうだ。
「帰りましょうか」
私の言葉に反応した名前さんは、辺りをキョロキョロ見回すと私の袖を引っ張った。
「あの・・・」
名前さんに手を引かれるままに連れて来られたところは路地裏で。
さっきまでの人通りが嘘のように人気が無かった。
「さっきの・・・なんですけど」
「さっき・・・」
はて、何の話をしているのだろう?
私が首を傾げると、名前さんは左右に目を泳がせながら、小声で私にだけ聞こえるように呟いた。
「口づけ・・・までなら」
❝さっき❞ってそのことか!
私が言った冗談を真に受けていたのか。
「(え!?口づけまでって・・・)」
まさか本気でさせてほしいなんて思っていなかった。
いや、したいけど。
覚悟を決めたように目を閉じている名前さんにドキリとした。
「(いいのか!?いや、でもここでしないのも逆に彼女に失礼か・・・?)」
目を瞑っている彼女は、私が情けなくもわたわた焦っているなどと思っていまい。
「(よ、よし・・・・)」
名前さんがいいと言うのなら。
私も覚悟を決めて名前さんの肩に手を置いた。
ぴくり、と肩が揺れた。
唇を重ねようとそっと顔を近づけた。
彼女の柔らかい肌の感触が私の唇を通して伝わった。
「・・・あ、の」
閉じていた瞼を開けた名前さんの表情は「なんで?」と私に問いかけていた。
「・・・無理しているように見えたので」
「無理なんてっ」
仕方なくとは思っていないとは思うが、彼女は自分に与えられた役割をこなさなければという使命感から突き動かされているように感じた。
その証拠に、口づけを待つその手は身体の横で固く握られていて。
寄せている眉からは緊張が読み取れた。
だから私は、唇ではなく、その端っこに口づけた。
なんとかして一緒に過ごすチャンスを作れないものか…と考えていた折に、天は私に味方したらしい。
深刻そうな顔で何かを考えていたので、軽い気持ちで問うてみたら、アルバイトがしたいと言う。
咄嗟に頭が回転して、この案を出せた自分を褒めたい。
❝どこまでさせてくれるんですか❞
正直、許されるならどこまででも…。
甘美な妄想が頭を掠めたが、理性で消去した。
がっつきすぎたら引かれてしまうだろう。
コホンと咳払いをして、緩みそうになる頬を引き締め団子屋を出てから隣を歩く彼女を一瞥した。
男としての感情はさておき、忍びとして冷静に名前さんを分析すればするほど謎は深まっていく。
ここに着いてから、見るもの見るもの、全てが初めてのようでキラキラした表情はとても可愛いのだけれど、今まででどうやって生きてきたのか疑問に思う。
記憶が無いことを突いてみれば、目を泳がせながら肯定していた。
嘘が下手すぎる。
本当に記憶が無いのか?
南蛮の姫、というのが当面の見立てであったが、それもイマイチ私の中でしっくりこなかった。
最初は耳からの情報しかなかったので、そのように信じていたが、実際に彼女に会って視覚情報を得たことで疑問を持つようになった。
いや、姫のように美しいのは同意するが。
忍術学園に害をなすようにも到底思えない。
1年生相手にすら勝てるのか怪しい。
繋いだ手に視線を移すと、何の努力も知らない手をしていた。
❝記憶がない❞というよりは❝何も知らない❞のではないだろうか。
何も知らない・・・となるとどこかで匿われていて逃げ出してきたというのが見立てとして濃厚になるが、その割にしっかり栄養も取れていて虐げられているようにも見えない。
となるとやはり外の世界を知らない姫・・・?
結局思考は堂々巡りを繰り返し、答えなど出そうにもなかった。
これだけ嘘が下手なのだから、いっそ詰問してみようかとも思ったが、そんなことをすればおそらく嫌われるし、忍術学園の人たちがやっていないことを私が行うことも憚られた。
まあ、しばらく様子見でいいか・・・。
せっかく癒されているのに、こう頭を働かせると疲れてしまう。
ふう・・・と息を吐いた。
空を見上げれば、もうそろそろ日が落ちてきそうだ。
「帰りましょうか」
私の言葉に反応した名前さんは、辺りをキョロキョロ見回すと私の袖を引っ張った。
「あの・・・」
名前さんに手を引かれるままに連れて来られたところは路地裏で。
さっきまでの人通りが嘘のように人気が無かった。
「さっきの・・・なんですけど」
「さっき・・・」
はて、何の話をしているのだろう?
私が首を傾げると、名前さんは左右に目を泳がせながら、小声で私にだけ聞こえるように呟いた。
「口づけ・・・までなら」
❝さっき❞ってそのことか!
私が言った冗談を真に受けていたのか。
「(え!?口づけまでって・・・)」
まさか本気でさせてほしいなんて思っていなかった。
いや、したいけど。
覚悟を決めたように目を閉じている名前さんにドキリとした。
「(いいのか!?いや、でもここでしないのも逆に彼女に失礼か・・・?)」
目を瞑っている彼女は、私が情けなくもわたわた焦っているなどと思っていまい。
「(よ、よし・・・・)」
名前さんがいいと言うのなら。
私も覚悟を決めて名前さんの肩に手を置いた。
ぴくり、と肩が揺れた。
唇を重ねようとそっと顔を近づけた。
彼女の柔らかい肌の感触が私の唇を通して伝わった。
「・・・あ、の」
閉じていた瞼を開けた名前さんの表情は「なんで?」と私に問いかけていた。
「・・・無理しているように見えたので」
「無理なんてっ」
仕方なくとは思っていないとは思うが、彼女は自分に与えられた役割をこなさなければという使命感から突き動かされているように感じた。
その証拠に、口づけを待つその手は身体の横で固く握られていて。
寄せている眉からは緊張が読み取れた。
だから私は、唇ではなく、その端っこに口づけた。
