【2章】室町パニック
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昼間の喧騒は嘘のように静まり返る夜。
真っ暗な夜は未だに慣れない。
蝋燭も無限にあるわけじゃないし、オール電化に慣れている私は不注意で火事を起こしかねないからなるべく点けないようにしている。
でも、そうするとやることなくて、寝るしかない。
布団を敷いて、横になろうとしたとき、障子の向こうに人影が見えた。
それはこの部屋の前で立ち止まる。
月明かりのシルエットから土井先生だと分かった。
「こんばんは…?」
そっと障子を開けると、土井先生が目を見開いた。
「あ、すまない。こんな夜中に…」
「私は構いませんが…」
中へどうぞ、と促せば土井先生はキョロキョロ周囲を見回して室内に足を踏み入れた。
私の代わりに慣れた手つきで蝋燭に火を点けてくれた。
「もう寝るところだった?」
敷いた布団に目線を向けた先生は申し訳なさそうな顔をした。
「寝ることしかもうやることがなくて…」
苦笑しながら答えた。
「何かありましたか?」
「私がそれを聞きにここに来たんだよ」
私が首を傾げていると、土井先生は続けた。
「昼間、元気がなかったようだから」
「えっ!?そう見えましたか?」
「傍目には普通だったけど、小松田くんとのやりとりで…ね」
そっか。
確かに、あのお饅頭のやりとりは元気がなかったと言ってるようなもんだもんね。
でも……。
「(これも五車の術…なのかな)」
ぐっと唇を噛んだ。
すると土井先生の長い指が伸びてきて、口元をそっとなぞられた。
「噛んだら血が出るよ」
「……」
「私は頼りないかい?大丈夫じゃないときは教えて欲しいって前に話したけど…」
「頼りないわけじゃなくて…」
きっと今は何を言われても疑ってしまう。
それでも土井先生が心の拠り所になっている私は結局話してしまうのだ。
「土井先生は五車の術使えるんですか…?」
「五車の術?ああ、忍びだからね」
「私に優しくしてくれるのは、五車の術なんじゃないかなって……」
口に出した後でハッとした。
考えてみればとんでもなく失礼なことを言ってる。
これだけ良くしてもらっておいて、何か裏があるんじゃないかって言ってるんだから。
「あっ!あの、ごめんなさい。今のは…」
「誰かにそう言われたんだね?」
「え…」
「特段疑り深くない名前さんがいきなりそんなこと言うなんて、誰かの影響だとしか思えない」
私は俯いた。
「まぁ、心当たりはついてる。潮江だろう?」
ここまで来たら隠しておく意味もないと思い、小さく頷いた。
「はぁ〜。あいつは…」
「潮江くん、私が隠し事してるって気づいてました。だから信用できないって…」
「あいつは学園一忍者してるって言われてるからなぁ」
土井先生は苦笑いを浮かべた。
「だが、まだ経験不足によって迅速かつ正確な判断ができないんだよ。だから恐車の術で君を揺さぶって判断の材料にしようとしてる」
そう言われてハッとした。
「今まさに術に嵌ってるんじゃないかな?」
「あ…」
「だが、そう言ってる私の方が五車の術を掛けてる可能性も無きにしもあらず。だから最後は名前さんが決めるしかない。私を信じるか、潮江を信じるか。はたまたどっちも信じないか」
そんなの決まってる。
潮江くんが私に投げたのはただ言葉だけ。
何の裏取りもない。
土井先生は今まで私に言葉だけじゃなくて行動で沢山示してくれた。
「土井先生を信じます」
私、何やってるんだろう。
「ごめんなさい、疑って」
簡単に潮江くんの言葉に揺らいだ自分を恥じた。
「疑うのは簡単で、信じることは難しい」
土井先生は全く疑われたことを気にしていないようだった。
「人は迷うし疑う生き物だ。だからこそ五車の術が成功する。名前さんは真っ当な人間だってことだよ」
土井先生は、は組の子達を撫でるみたいに私の頭に手を置いた。
「信じてくれてありがとう」
私はブンブンと横に頭を振った。
「私の方こそ、私を信じてくれてありがとうございます」
今度はもう何を言われても迷わない。
「潮江に私から言っておくよ」
「それはやめてください」
慌てて土井先生の袖を引っ張った。
「波風立てたくないし、土井先生に告げ口したって思われたら嫌なんです」
「しかし…」
「私なら大丈夫です」
もちろん、心無い言葉に傷つかないかと言われたら嘘になる。
それでもまだ耐えられる。
だから今は事を大きくしたくなかった。
それに土井先生が何か言ったところで、潮江くんの考えは変わらない。
むしろ良くない方向に進む気がした。
土井先生は悩んでいたが、最終的には私の意向を汲んでくれた。
「土井先生、いつもありがとうございます」
何も返せない私はお礼を言うことでしかできない。
お金さえあったら菓子折りの一つでも買えるのに。
土井先生は私のお礼の言葉をいつもの爽やかな笑顔で受け取ってくれた。
真っ暗な夜は未だに慣れない。
蝋燭も無限にあるわけじゃないし、オール電化に慣れている私は不注意で火事を起こしかねないからなるべく点けないようにしている。
でも、そうするとやることなくて、寝るしかない。
布団を敷いて、横になろうとしたとき、障子の向こうに人影が見えた。
それはこの部屋の前で立ち止まる。
月明かりのシルエットから土井先生だと分かった。
「こんばんは…?」
そっと障子を開けると、土井先生が目を見開いた。
「あ、すまない。こんな夜中に…」
「私は構いませんが…」
中へどうぞ、と促せば土井先生はキョロキョロ周囲を見回して室内に足を踏み入れた。
私の代わりに慣れた手つきで蝋燭に火を点けてくれた。
「もう寝るところだった?」
敷いた布団に目線を向けた先生は申し訳なさそうな顔をした。
「寝ることしかもうやることがなくて…」
苦笑しながら答えた。
「何かありましたか?」
「私がそれを聞きにここに来たんだよ」
私が首を傾げていると、土井先生は続けた。
「昼間、元気がなかったようだから」
「えっ!?そう見えましたか?」
「傍目には普通だったけど、小松田くんとのやりとりで…ね」
そっか。
確かに、あのお饅頭のやりとりは元気がなかったと言ってるようなもんだもんね。
でも……。
「(これも五車の術…なのかな)」
ぐっと唇を噛んだ。
すると土井先生の長い指が伸びてきて、口元をそっとなぞられた。
「噛んだら血が出るよ」
「……」
「私は頼りないかい?大丈夫じゃないときは教えて欲しいって前に話したけど…」
「頼りないわけじゃなくて…」
きっと今は何を言われても疑ってしまう。
それでも土井先生が心の拠り所になっている私は結局話してしまうのだ。
「土井先生は五車の術使えるんですか…?」
「五車の術?ああ、忍びだからね」
「私に優しくしてくれるのは、五車の術なんじゃないかなって……」
口に出した後でハッとした。
考えてみればとんでもなく失礼なことを言ってる。
これだけ良くしてもらっておいて、何か裏があるんじゃないかって言ってるんだから。
「あっ!あの、ごめんなさい。今のは…」
「誰かにそう言われたんだね?」
「え…」
「特段疑り深くない名前さんがいきなりそんなこと言うなんて、誰かの影響だとしか思えない」
私は俯いた。
「まぁ、心当たりはついてる。潮江だろう?」
ここまで来たら隠しておく意味もないと思い、小さく頷いた。
「はぁ〜。あいつは…」
「潮江くん、私が隠し事してるって気づいてました。だから信用できないって…」
「あいつは学園一忍者してるって言われてるからなぁ」
土井先生は苦笑いを浮かべた。
「だが、まだ経験不足によって迅速かつ正確な判断ができないんだよ。だから恐車の術で君を揺さぶって判断の材料にしようとしてる」
そう言われてハッとした。
「今まさに術に嵌ってるんじゃないかな?」
「あ…」
「だが、そう言ってる私の方が五車の術を掛けてる可能性も無きにしもあらず。だから最後は名前さんが決めるしかない。私を信じるか、潮江を信じるか。はたまたどっちも信じないか」
そんなの決まってる。
潮江くんが私に投げたのはただ言葉だけ。
何の裏取りもない。
土井先生は今まで私に言葉だけじゃなくて行動で沢山示してくれた。
「土井先生を信じます」
私、何やってるんだろう。
「ごめんなさい、疑って」
簡単に潮江くんの言葉に揺らいだ自分を恥じた。
「疑うのは簡単で、信じることは難しい」
土井先生は全く疑われたことを気にしていないようだった。
「人は迷うし疑う生き物だ。だからこそ五車の術が成功する。名前さんは真っ当な人間だってことだよ」
土井先生は、は組の子達を撫でるみたいに私の頭に手を置いた。
「信じてくれてありがとう」
私はブンブンと横に頭を振った。
「私の方こそ、私を信じてくれてありがとうございます」
今度はもう何を言われても迷わない。
「潮江に私から言っておくよ」
「それはやめてください」
慌てて土井先生の袖を引っ張った。
「波風立てたくないし、土井先生に告げ口したって思われたら嫌なんです」
「しかし…」
「私なら大丈夫です」
もちろん、心無い言葉に傷つかないかと言われたら嘘になる。
それでもまだ耐えられる。
だから今は事を大きくしたくなかった。
それに土井先生が何か言ったところで、潮江くんの考えは変わらない。
むしろ良くない方向に進む気がした。
土井先生は悩んでいたが、最終的には私の意向を汲んでくれた。
「土井先生、いつもありがとうございます」
何も返せない私はお礼を言うことでしかできない。
お金さえあったら菓子折りの一つでも買えるのに。
土井先生は私のお礼の言葉をいつもの爽やかな笑顔で受け取ってくれた。
