【2章】室町パニック
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「できましたよ」
仙蔵くんの手が離れて、声が掛かった。
瞼を開けると仙蔵くんが手鏡をこちらに向けてくれていた。
「うわあっ」
綺麗。
いや、私がもってるポテンシャルの中でって意味で。
毎日生きるので精一杯で、こういうお洒落とか無頓着だったわけじゃないけど、気にしてる余裕が無かった。
「元の顔立ちを活かして、あまり濃すぎないようにしました」
「ありがとう。すごいね、お化粧ができるなんて」
「忍者の嗜みです」
忍者の嗜み?
私が首を傾げると、忍務で女装するときがあると教えてくれた。
「え、見てみたい」
仙蔵くんにせがんでみると、渋々オッケーが出た。
「すっごい!!綺麗!!!」
慣れた手つきで女装し終えた仙蔵くんに感嘆の声を上げた。
「めちゃくちゃ似合ってるよ!!!」
「褒められてるのに複雑ですね」
「美人コンテストがあったら確実に優勝だわ」
惚れ惚れする美しさ。
仙蔵くんって所作も綺麗だし、私よりよっぽど姫っぽいよね。
姫というか令嬢。
「さ、このまま学園内を散歩でも行きましょうか」
「だったら仙蔵くんもこのままで!!」
絶対このままがいい。
そう思って仙蔵くんの腕を取った。
「ええ…」
嫌そうな顔をしていたけど、見ないフリして腕を引っ張った。
「ね?お願い!」
「仕方ないですね」
*******************
最近疲れている彼女を自分なりに元気にする方法を考えてみた。
鉢屋に頼んで変装したとき、鏡を見た彼女は少しがっかりした様子だったので、化粧をすれば喜んでくれるのではないかと思った。
元が美しい名前さんの顔は少し化粧をのせるだけで格段にその輝きが増す。
始めは落ち着き無く視線をキョロキョロ彷徨わせていた彼女は、そっと目を閉じて待つことにしたようだ。
ふっくらした唇にどの紅を乗せるか吟味し、深紅の紅より橙の方が彼女らしいとそれに決めた。
指に少し取り、いざ乗せようと名前さんの顔に視線を移すと、まるで口づけをする前のようだと思った。
思っただけのつもりだったのだが、ついポロッと口に出してしまい、慌てた名前さんにこちらも動揺を悟られぬよう冷静に切り返して事なきを得た。
再び閉じる瞼。
「(まつ毛も長いな…)」
目を閉じているのをいいことにまじまじと観察する。
早くしないと紅が乾いてしまう。
唇に紅を乗せるとピクリと名前さんが反応した。
動揺してないですよ、と言わんばかりに冷静さを保とうとする彼女に少し意地悪したくなった。
まるで恋人が愛しい人の唇に触れるかのように、わざと、ゆっくり指を往復させた。
「ん…」
閉じられた口の中で溢れた息。
思わず私も息を呑んだ。
無意識にその唇に吸い寄せられてしまった。
ハッと我に返ったときはすぐ目の前に彼女の唇があった。
慌てて身を引き、平静を装いながら何事もなかったかのように続きの化粧を施した。
何をしているんだ…私は。
*****************
化粧をした自分の顔は鏡が無いと見ることはできないけれど、今の私はいつもより可愛くなっているという自信が背筋を伸ばしてくれた。
「わぁ!名前さんお化粧してる!可愛い!」
「ありがとう」
すれ違った1年は組の子達が私を褒めてくれた。
子供は素直な分、純粋な気持ちが伝わってきて嬉しくなる。
「土井先生!土井先生!」
後ろの方に土井先生も居たらしい。
喜三太くんが先生を私の前に引っ張ってきた。
「名前さん、とっても可愛いですよね」
ねー、ナメさん!とナメ壺をよしよししながらナメクジに語りかけている喜三太くんはすごく可愛いんだけど、どうかその蓋は開けないでと祈った。
どんな顔して会えばいいのか悩んでた私は、土井先生と目が合って視線が泳いでしまった。
「立花がやったのか?」
「はい、仙蔵くんにやってもらいました」
昨日のことを思い出してしまい、咄嗟に俯いた。
「よく見せて。……うん、すごく似合ってる。綺麗だ」
「あ、ありがとうございます」
顎を掬われて、上を向かされた。
じっと合う視線は私を逃してくれなくて。
ドキドキした。
は組の子達に可愛い可愛いと褒めてもらうのも嬉しいけれど、土井先生のような大人の男性に褒めてもらえるのは女としての喜びを感じた。
「さ、もうそろそろ行きましょう。名前さん」
「あ、うん」
なんか仙蔵くん、ピリピリしてる?
「どうして立花先輩も女装してるんですか?」
仙蔵くんの雰囲気の変化を感じ取れない喜三太くんは純粋に疑問をぶつけた。
「名前さんが望んだからだ」
ね?と流し目で同意を得ようとする仙蔵くんにコクコクと頷いた。
やっぱり綺麗……。
ほう…と呆けそうになっている私の腕に仙蔵くんは自身の腕を絡ませて、先程とは逆の立場で私を引っ張っていった。
仙蔵くんの手が離れて、声が掛かった。
瞼を開けると仙蔵くんが手鏡をこちらに向けてくれていた。
「うわあっ」
綺麗。
いや、私がもってるポテンシャルの中でって意味で。
毎日生きるので精一杯で、こういうお洒落とか無頓着だったわけじゃないけど、気にしてる余裕が無かった。
「元の顔立ちを活かして、あまり濃すぎないようにしました」
「ありがとう。すごいね、お化粧ができるなんて」
「忍者の嗜みです」
忍者の嗜み?
私が首を傾げると、忍務で女装するときがあると教えてくれた。
「え、見てみたい」
仙蔵くんにせがんでみると、渋々オッケーが出た。
「すっごい!!綺麗!!!」
慣れた手つきで女装し終えた仙蔵くんに感嘆の声を上げた。
「めちゃくちゃ似合ってるよ!!!」
「褒められてるのに複雑ですね」
「美人コンテストがあったら確実に優勝だわ」
惚れ惚れする美しさ。
仙蔵くんって所作も綺麗だし、私よりよっぽど姫っぽいよね。
姫というか令嬢。
「さ、このまま学園内を散歩でも行きましょうか」
「だったら仙蔵くんもこのままで!!」
絶対このままがいい。
そう思って仙蔵くんの腕を取った。
「ええ…」
嫌そうな顔をしていたけど、見ないフリして腕を引っ張った。
「ね?お願い!」
「仕方ないですね」
*******************
最近疲れている彼女を自分なりに元気にする方法を考えてみた。
鉢屋に頼んで変装したとき、鏡を見た彼女は少しがっかりした様子だったので、化粧をすれば喜んでくれるのではないかと思った。
元が美しい名前さんの顔は少し化粧をのせるだけで格段にその輝きが増す。
始めは落ち着き無く視線をキョロキョロ彷徨わせていた彼女は、そっと目を閉じて待つことにしたようだ。
ふっくらした唇にどの紅を乗せるか吟味し、深紅の紅より橙の方が彼女らしいとそれに決めた。
指に少し取り、いざ乗せようと名前さんの顔に視線を移すと、まるで口づけをする前のようだと思った。
思っただけのつもりだったのだが、ついポロッと口に出してしまい、慌てた名前さんにこちらも動揺を悟られぬよう冷静に切り返して事なきを得た。
再び閉じる瞼。
「(まつ毛も長いな…)」
目を閉じているのをいいことにまじまじと観察する。
早くしないと紅が乾いてしまう。
唇に紅を乗せるとピクリと名前さんが反応した。
動揺してないですよ、と言わんばかりに冷静さを保とうとする彼女に少し意地悪したくなった。
まるで恋人が愛しい人の唇に触れるかのように、わざと、ゆっくり指を往復させた。
「ん…」
閉じられた口の中で溢れた息。
思わず私も息を呑んだ。
無意識にその唇に吸い寄せられてしまった。
ハッと我に返ったときはすぐ目の前に彼女の唇があった。
慌てて身を引き、平静を装いながら何事もなかったかのように続きの化粧を施した。
何をしているんだ…私は。
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化粧をした自分の顔は鏡が無いと見ることはできないけれど、今の私はいつもより可愛くなっているという自信が背筋を伸ばしてくれた。
「わぁ!名前さんお化粧してる!可愛い!」
「ありがとう」
すれ違った1年は組の子達が私を褒めてくれた。
子供は素直な分、純粋な気持ちが伝わってきて嬉しくなる。
「土井先生!土井先生!」
後ろの方に土井先生も居たらしい。
喜三太くんが先生を私の前に引っ張ってきた。
「名前さん、とっても可愛いですよね」
ねー、ナメさん!とナメ壺をよしよししながらナメクジに語りかけている喜三太くんはすごく可愛いんだけど、どうかその蓋は開けないでと祈った。
どんな顔して会えばいいのか悩んでた私は、土井先生と目が合って視線が泳いでしまった。
「立花がやったのか?」
「はい、仙蔵くんにやってもらいました」
昨日のことを思い出してしまい、咄嗟に俯いた。
「よく見せて。……うん、すごく似合ってる。綺麗だ」
「あ、ありがとうございます」
顎を掬われて、上を向かされた。
じっと合う視線は私を逃してくれなくて。
ドキドキした。
は組の子達に可愛い可愛いと褒めてもらうのも嬉しいけれど、土井先生のような大人の男性に褒めてもらえるのは女としての喜びを感じた。
「さ、もうそろそろ行きましょう。名前さん」
「あ、うん」
なんか仙蔵くん、ピリピリしてる?
「どうして立花先輩も女装してるんですか?」
仙蔵くんの雰囲気の変化を感じ取れない喜三太くんは純粋に疑問をぶつけた。
「名前さんが望んだからだ」
ね?と流し目で同意を得ようとする仙蔵くんにコクコクと頷いた。
やっぱり綺麗……。
ほう…と呆けそうになっている私の腕に仙蔵くんは自身の腕を絡ませて、先程とは逆の立場で私を引っ張っていった。