【2章】室町パニック
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「本当にいいのかい?」
「え?あ、冗談でしたか!?ごめんなさい、真に受けちゃって」
提案したのは自分だが、まさか承諾されると思っていなかったので驚いてしまった。
いや、軽い気持ちで提案したわけではないのだが。
冷えた足先は可哀そうなぐらい冷たくて。
しゅんと項垂れる彼女に慌てて否定した。
「いや、そうじゃなくて。・・・うん。名前さんがいいなら」
やましい気持ちは全くなく、ただとにかく寒そうな名前さんが少しでも暖かくなるなら、そう思っての提案だ。
そう、親切心から。
決して下心は・・・無いよな?
己の心に問いかけるが、返事など返ってくるはずもなく。
いつまでも行動に移さない私に名前さんは首を傾げた。
「あの・・・やっぱり無理しないでください」
「無理なんてしてないよ。じゃあ・・・失礼するよ」
覚悟を決めて名前さんの後ろに回り腕を前へ回した。
名前さんの肩が私の胸に付いた。
ぴくりと腕の中で反応する名前さんのうなじに視線を落とすと少し赤みがかっているように見えた。
ガチガチに強張っている身体。
緊張が伝わってきた。
私を意識してくれているのだろうか?
それはそれで嬉しいのだが、果たして彼女は暖まれているのだろうか。
しかししばらくすると名前さんの身体が徐々に弛緩していった。
「あったかい・・・」
後ろから抱きしめているので、表情は見えないがきっと柔らかく微笑んでいるのだろう。
「足先は大丈夫?」
「さっきよりだいぶ」
腕を伸ばして三角に折っている脚の先を触ると確かに最初触ったときよりは冷たくない。足先に触れるとぴくりと反応した。
恥ずかしそうにキュッと指先に力を入れる彼女の脚を下から上に撫でたい衝動に駆られた。
奥底に押し込めていた煩悩が顔を出しそうになっているので、無理矢理それを再び仕舞い込んだ。
このままあまり長居するのはよくないだろう。
そう思って回していた腕を解いて身体を離すと名前さんが首だけ振り返った。
その表情は何だか物足りなげで、まるで「もっと」と強請られているように見えた。
「帰っちゃうんですか?」
「もう遅いし・・・」
「そう・・・ですよね」
私はしゅんと少し悲しそうにするこの彼女の表情にめっぽう弱いらしい。
間違いを起こさぬ前に撤退しようと思っていたのに。
「もっと居てほしい?」
右手を頬に添えると、剝き出しだったそこはひんやり冷たかった。
添えた頬の上から彼女の小さな手が重なった。
「・・・もっと、ぎゅってしてほしいです」
・・・誘われてるわけじゃないよな?
*******************
後ろから抱きしめてくれる土井先生の身体は大きく、暖かくて、温かい。
全てを包み込んでくれる優しさがあった。
恥ずかしさはすぐにどこかへ飛んていき、ずっとこうしていてほしいと願ってしまう。
身体が離れていったときは寒さよりも寂しさが上回った。
もっと居てほしいか問いかける土井先生の優しさに甘えてしまった。
素直に甘える私に少し困惑した表情の土井先生を見ないフリして。
「もっと、お願いします」
今度は正面から両腕を伸ばした。
視線を左右に彷徨わせた先生に、やっぱりそれは図々しかったか…と思い腕を下げようとしたとき、再び土井先生に温もりに包まれた。
土井先生も緊張しているようで、正面から抱き合う私達は暖をとっているのではなく抱擁しているようにしか見えないだろう。
いや、私自身、どちらを求めているのかわからない。
「………」
「……泣いているのかい?」
一度溢れたら止まらなかった。
身体も冷たかったが、本当はずっと前から心が冷たかった。
私はすごく恵まれている。
わけわからない時代に飛ばされて、それでも初日から雨風凌げる場所を見つけられて。
しかしやっぱり辛いものは辛い。
力仕事なんてしたことないし、スマホやライフラインがが無い生活は現代人の私からしたら地獄だ。
大丈夫、私はやっていけるってそう思わないと心が壊れてしまいそうだった。
私が苦しいと思っていることは、こっちの世界の人達は当たり前にこなしている。
皆優しいから、愚痴なんて言えない。
でも確実に私の心のコップは溢れていた。
「ごめんなさい、私…」
泣き止まないと。
それに土井先生の衣を汚してしまう。
身体を離そうとしたとき、逆に後頭部を押さえられたことで、再びポスンと土井先生の胸におさまった。
「大丈夫だよ」
ゆるゆると私の頭を上から下へ撫でてくれる土井先生の手。
「大丈夫だから」
ポロポロと零れる涙は、土井先生の衣に吸収されていった。
心の中でごめんなさい、と呟いて私を包み込む大きな背中に手を回してギュッと衣を掴んだ。
涙と共に乱れる呼吸を落ち着かせるために、土井先生は頭を撫でていた手を背中へと移動させ、まるで幼子をあやすようにトントンと優しく叩いてくれた。
「え?あ、冗談でしたか!?ごめんなさい、真に受けちゃって」
提案したのは自分だが、まさか承諾されると思っていなかったので驚いてしまった。
いや、軽い気持ちで提案したわけではないのだが。
冷えた足先は可哀そうなぐらい冷たくて。
しゅんと項垂れる彼女に慌てて否定した。
「いや、そうじゃなくて。・・・うん。名前さんがいいなら」
やましい気持ちは全くなく、ただとにかく寒そうな名前さんが少しでも暖かくなるなら、そう思っての提案だ。
そう、親切心から。
決して下心は・・・無いよな?
己の心に問いかけるが、返事など返ってくるはずもなく。
いつまでも行動に移さない私に名前さんは首を傾げた。
「あの・・・やっぱり無理しないでください」
「無理なんてしてないよ。じゃあ・・・失礼するよ」
覚悟を決めて名前さんの後ろに回り腕を前へ回した。
名前さんの肩が私の胸に付いた。
ぴくりと腕の中で反応する名前さんのうなじに視線を落とすと少し赤みがかっているように見えた。
ガチガチに強張っている身体。
緊張が伝わってきた。
私を意識してくれているのだろうか?
それはそれで嬉しいのだが、果たして彼女は暖まれているのだろうか。
しかししばらくすると名前さんの身体が徐々に弛緩していった。
「あったかい・・・」
後ろから抱きしめているので、表情は見えないがきっと柔らかく微笑んでいるのだろう。
「足先は大丈夫?」
「さっきよりだいぶ」
腕を伸ばして三角に折っている脚の先を触ると確かに最初触ったときよりは冷たくない。足先に触れるとぴくりと反応した。
恥ずかしそうにキュッと指先に力を入れる彼女の脚を下から上に撫でたい衝動に駆られた。
奥底に押し込めていた煩悩が顔を出しそうになっているので、無理矢理それを再び仕舞い込んだ。
このままあまり長居するのはよくないだろう。
そう思って回していた腕を解いて身体を離すと名前さんが首だけ振り返った。
その表情は何だか物足りなげで、まるで「もっと」と強請られているように見えた。
「帰っちゃうんですか?」
「もう遅いし・・・」
「そう・・・ですよね」
私はしゅんと少し悲しそうにするこの彼女の表情にめっぽう弱いらしい。
間違いを起こさぬ前に撤退しようと思っていたのに。
「もっと居てほしい?」
右手を頬に添えると、剝き出しだったそこはひんやり冷たかった。
添えた頬の上から彼女の小さな手が重なった。
「・・・もっと、ぎゅってしてほしいです」
・・・誘われてるわけじゃないよな?
*******************
後ろから抱きしめてくれる土井先生の身体は大きく、暖かくて、温かい。
全てを包み込んでくれる優しさがあった。
恥ずかしさはすぐにどこかへ飛んていき、ずっとこうしていてほしいと願ってしまう。
身体が離れていったときは寒さよりも寂しさが上回った。
もっと居てほしいか問いかける土井先生の優しさに甘えてしまった。
素直に甘える私に少し困惑した表情の土井先生を見ないフリして。
「もっと、お願いします」
今度は正面から両腕を伸ばした。
視線を左右に彷徨わせた先生に、やっぱりそれは図々しかったか…と思い腕を下げようとしたとき、再び土井先生に温もりに包まれた。
土井先生も緊張しているようで、正面から抱き合う私達は暖をとっているのではなく抱擁しているようにしか見えないだろう。
いや、私自身、どちらを求めているのかわからない。
「………」
「……泣いているのかい?」
一度溢れたら止まらなかった。
身体も冷たかったが、本当はずっと前から心が冷たかった。
私はすごく恵まれている。
わけわからない時代に飛ばされて、それでも初日から雨風凌げる場所を見つけられて。
しかしやっぱり辛いものは辛い。
力仕事なんてしたことないし、スマホやライフラインがが無い生活は現代人の私からしたら地獄だ。
大丈夫、私はやっていけるってそう思わないと心が壊れてしまいそうだった。
私が苦しいと思っていることは、こっちの世界の人達は当たり前にこなしている。
皆優しいから、愚痴なんて言えない。
でも確実に私の心のコップは溢れていた。
「ごめんなさい、私…」
泣き止まないと。
それに土井先生の衣を汚してしまう。
身体を離そうとしたとき、逆に後頭部を押さえられたことで、再びポスンと土井先生の胸におさまった。
「大丈夫だよ」
ゆるゆると私の頭を上から下へ撫でてくれる土井先生の手。
「大丈夫だから」
ポロポロと零れる涙は、土井先生の衣に吸収されていった。
心の中でごめんなさい、と呟いて私を包み込む大きな背中に手を回してギュッと衣を掴んだ。
涙と共に乱れる呼吸を落ち着かせるために、土井先生は頭を撫でていた手を背中へと移動させ、まるで幼子をあやすようにトントンと優しく叩いてくれた。