【2章】室町パニック
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ずぶ濡れのまま名前さんと並んで歩く帰り道。
「くしゅん!」
「大丈夫ですか?」
日は沈み始めたらあっという間だ。
夜目が効かない名前さんの手をしっかり握った。
「ん、大丈夫」
言葉とは裏腹に唇は少し紫がかっている。
早く身体を温めないと。
「急ぐので背負います」
遠慮する名前さんを強引に背負った。
お互い水分を含んでいるので少し重いが落とさないようにしっかりと膝裏に腕を入れた。
「ごめんね、伊作くん。私が大人しく学園で帰りを待っていれば・・・」
走りっていると背中で申し訳なさそうに名前さんが呟いた。
「いえ。謝らないでください。そういえば、どうして僕を追いかけてきたんですか?」
「それは・・・最近伊作くん私を避けてるみたいだったから何か怒らせちゃったかなって・・・」
しゅん、と項垂れる名前さんを見て僕は子供染みた嫉妬をしたことに後悔した。
「違うんです。僕が狭量だったばっかりに・・・」
自分のせいだと勘違いしてほしくなくて。
格好悪いとは思いつつも、自分の気持ちを正直に話した。
「それって、下級生にやきもち焼いてたってこと?」
「うっ・・・」
解釈に間違いはないのだが、ズバリそのまま言葉にされると刺さるものがある。
名前さんは足をパタパタさせながら僕の首に回している腕にギュッと力を込めた。
「嬉しい!」
「・・・!」
「伊作くんは私のこと好きなんだねぇ」
「えっ、あの・・・その」
自分の胸中が全て名前さんに筒抜けで恥ずかしい。
というか、その気持ちはきちんと自分で伝えたかった。
「私も伊作くんのこと大好きだよ」
「ほ、本当ですか!?」
思わぬ言葉に首だけ振り返った。
「うん!だから今度一緒に放課後遊ぼうね」
あれ?
「他の6年生も誘う?」とニコニコしている名前さんを見て自分が早とちりしていることに気付いた。
ああ、その"好き"ね。
少しがっかりしたが、考えてみればわかることだ。
しかし名前さんから人間としてだったとしても好意的に思ってもらえているということは嬉しかった。
「(というか・・・さっきから・・・)」
ギュッと力を込められて一層密着されたことで、ふに、と柔らかいものがダイレクトに背中に感じた。
普段なら気にならないかもしれないが(いや、やっぱり気づいてしまうかも)、お互い水分を含んでいて衣がぴったり肌に張り付いている分、まるで素肌同士が触れ合っているのではと錯覚する。
そして、お互いのしこりが解消した今、冷静になった頭が思い出すのは名前さんを蘇生したときのこと。
「(・・・口づけしてしまった)」
あのときは無我夢中だったけど・・・。
名前さん嫌じゃなかったかな。
振り向くと「?」と名前さんは首を傾げた。
今は少し紫に変色してしまっているが、ふっくらしたその柔らかそうな唇に目が奪われた。
ぶんぶんと首を振り、煩悩を振り払おうとした。
「急ぎます!」
もう学園はすぐそこだ。
強く一歩を踏みしめたその時。
煩悩に振り回されていたせいか、不運のせいか、足元の小石に気付かなかった。
「うわあっ!」
「わっ!」
見事に躓いた僕は名前さんを空中に放り出してしまった。
「名前さん!」
渾身の力で前に飛び、自分が下になって落下してくる彼女を受け止めた。
「ぶっ!」
はずだったのだが、距離が僅かに足りなかった。
背中に感じていた柔らかい感触を今度は顔面に感じた。
鼻と口を塞がれてしまい、口を開いたり閉じたりして何とか呼吸を確保する。
その時、コリッ・・・と布越しに何かが唇を掠めた。
「ひゃあっ」
名前さんが飛び起きたことで息をしっかり吸えた。
自分も半身を起こして名前さんを見ると、身を守るように上半身を両腕で抱えている。
太陽が沈み、顔を覗かせた月明かりに映った名前さんの顔を真っ赤だった。
え・・・?今のって・・・?
唇で食んでしまったあの感触ってもしかして・・・。
「ごごごごごめんなさい!!!!」
土下座して地面に埋もれるのではと思う程頭を下げた。
「伊作くん!頭上げて!私の方こそごめんね」
「何で名前さんが謝るんですか!」
「だってこんな貧相な身体を押し付けて申し訳ない・・・」
お互い謝り倒していたら、ザッザッと土を蹴る音が聞こえて2人で顔を上げた。
「名前さん?伊作?」
「「土井先生!!」」
暗がりから現れたのは土井先生だった。
「どうしたんだ、そんなずぶ濡れで・・・」
「じ、実はかくかくじかじかで」
名前さんが我先にと状況を土井先生に説明した。
もちろん最後に起こった出来事は省いて。
「ちょうど2人が戻ってこないから探しに行こうとしていたところだったんだ。風邪を引くから早く風呂に入りなさい。名前さんはくノ一長屋の方で。私が送っていこう」
「ありがとうございます」
土井先生に背中に手を添えられて、名前さんはそこに見えている学園の門をくぐった。
僕も続いて門を潜った。
今の出来事は忘れないと。
頭をぶんぶんを振るが、消えてくれない。
「伊作!無事・・・ではないな」
「留三郎。ただいま」
ずぶ濡れの僕を見て留三郎はため息を吐いた。
「(全然無事じゃないよ・・・)」
「風邪引いたんじゃないか?顔赤いぞ」
両手で顔を覆うと、留三郎は不思議そうに僕を見ていた。
「くしゅん!」
「大丈夫ですか?」
日は沈み始めたらあっという間だ。
夜目が効かない名前さんの手をしっかり握った。
「ん、大丈夫」
言葉とは裏腹に唇は少し紫がかっている。
早く身体を温めないと。
「急ぐので背負います」
遠慮する名前さんを強引に背負った。
お互い水分を含んでいるので少し重いが落とさないようにしっかりと膝裏に腕を入れた。
「ごめんね、伊作くん。私が大人しく学園で帰りを待っていれば・・・」
走りっていると背中で申し訳なさそうに名前さんが呟いた。
「いえ。謝らないでください。そういえば、どうして僕を追いかけてきたんですか?」
「それは・・・最近伊作くん私を避けてるみたいだったから何か怒らせちゃったかなって・・・」
しゅん、と項垂れる名前さんを見て僕は子供染みた嫉妬をしたことに後悔した。
「違うんです。僕が狭量だったばっかりに・・・」
自分のせいだと勘違いしてほしくなくて。
格好悪いとは思いつつも、自分の気持ちを正直に話した。
「それって、下級生にやきもち焼いてたってこと?」
「うっ・・・」
解釈に間違いはないのだが、ズバリそのまま言葉にされると刺さるものがある。
名前さんは足をパタパタさせながら僕の首に回している腕にギュッと力を込めた。
「嬉しい!」
「・・・!」
「伊作くんは私のこと好きなんだねぇ」
「えっ、あの・・・その」
自分の胸中が全て名前さんに筒抜けで恥ずかしい。
というか、その気持ちはきちんと自分で伝えたかった。
「私も伊作くんのこと大好きだよ」
「ほ、本当ですか!?」
思わぬ言葉に首だけ振り返った。
「うん!だから今度一緒に放課後遊ぼうね」
あれ?
「他の6年生も誘う?」とニコニコしている名前さんを見て自分が早とちりしていることに気付いた。
ああ、その"好き"ね。
少しがっかりしたが、考えてみればわかることだ。
しかし名前さんから人間としてだったとしても好意的に思ってもらえているということは嬉しかった。
「(というか・・・さっきから・・・)」
ギュッと力を込められて一層密着されたことで、ふに、と柔らかいものがダイレクトに背中に感じた。
普段なら気にならないかもしれないが(いや、やっぱり気づいてしまうかも)、お互い水分を含んでいて衣がぴったり肌に張り付いている分、まるで素肌同士が触れ合っているのではと錯覚する。
そして、お互いのしこりが解消した今、冷静になった頭が思い出すのは名前さんを蘇生したときのこと。
「(・・・口づけしてしまった)」
あのときは無我夢中だったけど・・・。
名前さん嫌じゃなかったかな。
振り向くと「?」と名前さんは首を傾げた。
今は少し紫に変色してしまっているが、ふっくらしたその柔らかそうな唇に目が奪われた。
ぶんぶんと首を振り、煩悩を振り払おうとした。
「急ぎます!」
もう学園はすぐそこだ。
強く一歩を踏みしめたその時。
煩悩に振り回されていたせいか、不運のせいか、足元の小石に気付かなかった。
「うわあっ!」
「わっ!」
見事に躓いた僕は名前さんを空中に放り出してしまった。
「名前さん!」
渾身の力で前に飛び、自分が下になって落下してくる彼女を受け止めた。
「ぶっ!」
はずだったのだが、距離が僅かに足りなかった。
背中に感じていた柔らかい感触を今度は顔面に感じた。
鼻と口を塞がれてしまい、口を開いたり閉じたりして何とか呼吸を確保する。
その時、コリッ・・・と布越しに何かが唇を掠めた。
「ひゃあっ」
名前さんが飛び起きたことで息をしっかり吸えた。
自分も半身を起こして名前さんを見ると、身を守るように上半身を両腕で抱えている。
太陽が沈み、顔を覗かせた月明かりに映った名前さんの顔を真っ赤だった。
え・・・?今のって・・・?
唇で食んでしまったあの感触ってもしかして・・・。
「ごごごごごめんなさい!!!!」
土下座して地面に埋もれるのではと思う程頭を下げた。
「伊作くん!頭上げて!私の方こそごめんね」
「何で名前さんが謝るんですか!」
「だってこんな貧相な身体を押し付けて申し訳ない・・・」
お互い謝り倒していたら、ザッザッと土を蹴る音が聞こえて2人で顔を上げた。
「名前さん?伊作?」
「「土井先生!!」」
暗がりから現れたのは土井先生だった。
「どうしたんだ、そんなずぶ濡れで・・・」
「じ、実はかくかくじかじかで」
名前さんが我先にと状況を土井先生に説明した。
もちろん最後に起こった出来事は省いて。
「ちょうど2人が戻ってこないから探しに行こうとしていたところだったんだ。風邪を引くから早く風呂に入りなさい。名前さんはくノ一長屋の方で。私が送っていこう」
「ありがとうございます」
土井先生に背中に手を添えられて、名前さんはそこに見えている学園の門をくぐった。
僕も続いて門を潜った。
今の出来事は忘れないと。
頭をぶんぶんを振るが、消えてくれない。
「伊作!無事・・・ではないな」
「留三郎。ただいま」
ずぶ濡れの僕を見て留三郎はため息を吐いた。
「(全然無事じゃないよ・・・)」
「風邪引いたんじゃないか?顔赤いぞ」
両手で顔を覆うと、留三郎は不思議そうに僕を見ていた。