【2章】室町パニック
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「くそっ…」
なんて不運だ。
僕の足元が崩れたことで、落とすはずのイノシシは崖の上にいて、助けようとしてくれた名前さんを巻き込んで2人とも真下の川に落下した。
学園へ帰る途中、名前さんの声が聞こえたときは僕には珍しく運がいいと思っていたのに!
僕の腕の中でぐったりしている名前さんに目をやる。
「もう少し…!」
衣に水分をぐっしょり含んだ人間を引っ張り上げるのは至難の業で、なんとか岸に引きずり上げられてホッと息を吐いた。
しかし、安心したのも束の間。
すぐに絶望が僕を襲った。
「…息してないっ」
僕はすぐに心臓マッサージを開始した。
「名前さん…」
反応がなく青白くなっていく名前さんを見て焦りを感じる。
胸骨圧迫を30回繰り返したが反応がなく、次に人工呼吸に切り替えた。
気道を確保し2回息を吹き込んだ。
ぴくり、と小さく指が動いた。
「頼む…戻ってきて」
再び胸骨圧迫を開始してすぐのこと。
「げほっ…!げほげほ」
体内の水が口から出てきて、息を吹き返した。
身体を横にして背中を擦る。
「名前さん!」
思わず名前を呼んだ。
するとぼんやりと僕を見つめて「伊作くん?」と声を掛けてくれた。
よかった、意識もはっきりしてる。
「助かったの…?」
身体をゆっくり起こす名前さんの背中に手を添えた。
「すみません…。僕のせいです」
「え?」
「僕が不運だから。足元の崖が崩れて落ちてしまったんです」
「不運?」
「はい、学園では有名な話です」
そうだ、僕は不運なんだ。
だから僕の傍に彼女が居たら不運に巻き込んでしまう。
名前さんとは距離を置いたほうがいいのかもしれない。
ぐっと拳を膝上で握ると、その上に小さな手が重なった。
「どこが?私達めっちゃ運いいよ!だってあの崖から落ちたんだよ?」
上を指さす名前さんに倣って見上げた。
「落ちた先に川があったのもラッキーだし、普通なら叩きつけられて死ぬか、溺れて死ぬかのところをこうやって助かったんだよ!」
「でも名前さんは危うく死ぬところだった…」
そう、名前さんは死ぬかもしれなかった。
無我夢中だったけど、少し冷静になった今恐怖が身体の底から湧き上がってきた。
俯いて、身体の震えを必死に抑えた。
「んもう!伊作くん、私をしっかり見て!」
恐る恐る顔を上げると、にこりと笑った名前さんと目が合った。
「私を救ってくれたのは間違いなく、伊作くんだよ。出会ったときもそう。私は、伊作くんにずっと助けられてる」
ギュッと手に力を入れた名前さんはそのまま繋がれた手を持ち上げて額にくっつけた。
「いつもありがとう。これからも私のこと助けてくれる…?」
そんなの、決まってる。
「はい、必ず貴方を守ります」
僕の返事を聞いて「良かった、嬉しい」と名前さんははにかんだ。
「日が落ちてきて寒いね。早く帰ろう」
ぐっしょり濡れた小袖を限界まで絞って、いくらか軽くなったところで帰路についた。
なんて不運だ。
僕の足元が崩れたことで、落とすはずのイノシシは崖の上にいて、助けようとしてくれた名前さんを巻き込んで2人とも真下の川に落下した。
学園へ帰る途中、名前さんの声が聞こえたときは僕には珍しく運がいいと思っていたのに!
僕の腕の中でぐったりしている名前さんに目をやる。
「もう少し…!」
衣に水分をぐっしょり含んだ人間を引っ張り上げるのは至難の業で、なんとか岸に引きずり上げられてホッと息を吐いた。
しかし、安心したのも束の間。
すぐに絶望が僕を襲った。
「…息してないっ」
僕はすぐに心臓マッサージを開始した。
「名前さん…」
反応がなく青白くなっていく名前さんを見て焦りを感じる。
胸骨圧迫を30回繰り返したが反応がなく、次に人工呼吸に切り替えた。
気道を確保し2回息を吹き込んだ。
ぴくり、と小さく指が動いた。
「頼む…戻ってきて」
再び胸骨圧迫を開始してすぐのこと。
「げほっ…!げほげほ」
体内の水が口から出てきて、息を吹き返した。
身体を横にして背中を擦る。
「名前さん!」
思わず名前を呼んだ。
するとぼんやりと僕を見つめて「伊作くん?」と声を掛けてくれた。
よかった、意識もはっきりしてる。
「助かったの…?」
身体をゆっくり起こす名前さんの背中に手を添えた。
「すみません…。僕のせいです」
「え?」
「僕が不運だから。足元の崖が崩れて落ちてしまったんです」
「不運?」
「はい、学園では有名な話です」
そうだ、僕は不運なんだ。
だから僕の傍に彼女が居たら不運に巻き込んでしまう。
名前さんとは距離を置いたほうがいいのかもしれない。
ぐっと拳を膝上で握ると、その上に小さな手が重なった。
「どこが?私達めっちゃ運いいよ!だってあの崖から落ちたんだよ?」
上を指さす名前さんに倣って見上げた。
「落ちた先に川があったのもラッキーだし、普通なら叩きつけられて死ぬか、溺れて死ぬかのところをこうやって助かったんだよ!」
「でも名前さんは危うく死ぬところだった…」
そう、名前さんは死ぬかもしれなかった。
無我夢中だったけど、少し冷静になった今恐怖が身体の底から湧き上がってきた。
俯いて、身体の震えを必死に抑えた。
「んもう!伊作くん、私をしっかり見て!」
恐る恐る顔を上げると、にこりと笑った名前さんと目が合った。
「私を救ってくれたのは間違いなく、伊作くんだよ。出会ったときもそう。私は、伊作くんにずっと助けられてる」
ギュッと手に力を入れた名前さんはそのまま繋がれた手を持ち上げて額にくっつけた。
「いつもありがとう。これからも私のこと助けてくれる…?」
そんなの、決まってる。
「はい、必ず貴方を守ります」
僕の返事を聞いて「良かった、嬉しい」と名前さんははにかんだ。
「日が落ちてきて寒いね。早く帰ろう」
ぐっしょり濡れた小袖を限界まで絞って、いくらか軽くなったところで帰路についた。