【1章】さよなら令和、ようこそ室町
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「誰だ!貴様!」
「えっ、あの…名字名前です…」
「名前を聞いているのではない!何者か聞いている!」
「えっ、何者…」
何者…何者………。
そんなのこっちが聞きたい。
なんで忍者の格好なのよ。
そういえば忍者村って施設あったよなぁ。
あれ何県だっけ?とぼんやり考えていたら、先ほどから前のめりな男がさらに語気を強めた。
「ここは忍術学園の敷地だぞ!どこから入った!?」
「えっ!?勝手に入ってごめんなさい!!」
まさかの私有地だった。
ってか忍術学園って何…?
人に出会えたのはいいけど、状況は良くない。
鋭い眼光で私を射抜かんとするこの男に助けを求めていいのだろうか…。
おろおろと視線を彷徨わせていると「俺の質問に答えんか!」と怒鳴られ、キュッとワンピースの裾を握った。
「おい、文次郎。そんな言い方じゃ答えられるものも答えられないだろう」
文次郎と呼ばれた男は腕を組んでフンとそっぽを向いてしまった。
代わりに長いサラサラヘアが特徴的な美人さんが私に近づいてきた。
「無礼な物言いをして申し訳ありません。あの男はいささか血の気が盛んでして。ところでここは私有地なのですが、どこから入られたのですか?」
先ほどの男と同じ質問をされたが、言い方が幾分か柔らかくてホッとした。
「どこから…。私も分からないんです…」
「わからない…とは…」
「えっと…気づいたらここにいて…」
私の言い分に困惑している様子が見て取れた。
そりゃそうだ。
だって言ってる本人も困惑してる。
「ちょっと!君、足怪我してるじゃないか」
ザッザッと前に出てきた男は私の前に跪いた。
「そこに座って」
戸惑いながら指差された石の上に腰掛けると、私の前で彼は膝をついた。
「切り傷がひどいな…。ここは枝の破片が刺さってる」
そういうと彼は私の足からピッと破片を抜いてくれた。
「あっ、あの。ありがとうございます。でももう大丈夫です…」
本当はすごく痛むけど、知らない男の人に足を触られて恥ずかしさの方が上回った。
「ほんと、汚いので…」
しげしげと足を見られる。
私の顔は茹で蛸のように真っ赤だろう。
「伊作。触りすぎだ」
私の心情を察してくれた美人さんが助け舟を出してくれた。
「ご、ごめんなさい!保健委員なのでつい…」
保健委員という馴染みのある単語が出てきて驚いた。
え、委員?ってことは学生?
「ところで草鞋は履いていないのですか?」
私の足を手に乗せたまま、伊作くん(名字がわからないからとりあえず心の中でそう呼ぼう)は首を傾げて聞いてきた。
「わ、草鞋?」
靴じゃなくて?
頭に疑問符を浮かべた。
「まぁ、細かいことはいいじゃないか!」
「全然細かくないだろう!」
ガハハと豪快に笑った男の子は竹筒を出して、ぐびっとそれを傾けた。
水…。
いいなぁ。
もう随分水分をとっていない。
今まで混乱していて意識が逸れていたが、目の前で水を飲んだ人を見ると、急に喉が渇いていると自覚した。
「喉が渇いているのですか?」
美人さんに問いかけられて私はハッとして俯いた。
そんなに物欲しそうな顔してたのかな。
恥ずかしい。
美人さんはスッと私の前に竹筒を出した。
「私の物で申し訳ないのですが、よければどうぞ」
「えっ!でも大事なものなんじゃ…」
「大丈夫ですよ。貴方が気にならないなら口をつけて飲んで頂いて構いません」
「ありがとうございます…!!」
軽く遠慮したが、正直もう限界だ。
格好が忍者だとか、なんで水筒じゃなくて竹筒なのかとかこの際どうでもいい。
美人さんから竹筒を受け取ると、一口飲んで喉を潤した。水分を受けた体内がさらにもう一口を強請ってきた。
「本当にありがとうございます。命の恩人です」
数口頂いて、竹筒から口を離すとその場にいた全員が私の方を凝視していた。
「あの…何か?あ、飲み過ぎちゃいましたか!?」
竹筒を振ったら中にはまだ沢山残ってそうだけど「こいつ遠慮ないな」って思われたかな!?
「いえいえ。全部飲んで頂いて大丈夫ですよ」
「流石にそれは悪いので…。本当にありがとうございました」
竹筒の口部分を拭って返した。
「で、さっきから何一つこちらの質問に答えていないが?」
そうだ。
忘れかけていたが、この文次郎って呼ばれた怖い人もいたんだった。
「何をどう説明したらいいのか…。私にも分からなくて」
「分からないばかりで話にならん」
「そう威圧的にならないで」
伊作くんが文次郎くんを止めてくれた。
優しい…。
「名前さんでしたね。先程申した通りここは私有地なんです。そして私達は一生徒の身分なので貴方の処遇を決める権利がない。今から学園長のところへお連れします」
美人さんが端的にこれからのことを説明してくれた。
「処遇…」
この人たちから見たら私って不法侵入した人間ってことだもんね。
どっちにしろ、こんなところではいさよならって言われても困るから、行くしかない。
「それよりもまず保健室だよ!」
不安になっていた私の足を、伊作くんは大きな手で包んでくれた。
「えっ、あの…名字名前です…」
「名前を聞いているのではない!何者か聞いている!」
「えっ、何者…」
何者…何者………。
そんなのこっちが聞きたい。
なんで忍者の格好なのよ。
そういえば忍者村って施設あったよなぁ。
あれ何県だっけ?とぼんやり考えていたら、先ほどから前のめりな男がさらに語気を強めた。
「ここは忍術学園の敷地だぞ!どこから入った!?」
「えっ!?勝手に入ってごめんなさい!!」
まさかの私有地だった。
ってか忍術学園って何…?
人に出会えたのはいいけど、状況は良くない。
鋭い眼光で私を射抜かんとするこの男に助けを求めていいのだろうか…。
おろおろと視線を彷徨わせていると「俺の質問に答えんか!」と怒鳴られ、キュッとワンピースの裾を握った。
「おい、文次郎。そんな言い方じゃ答えられるものも答えられないだろう」
文次郎と呼ばれた男は腕を組んでフンとそっぽを向いてしまった。
代わりに長いサラサラヘアが特徴的な美人さんが私に近づいてきた。
「無礼な物言いをして申し訳ありません。あの男はいささか血の気が盛んでして。ところでここは私有地なのですが、どこから入られたのですか?」
先ほどの男と同じ質問をされたが、言い方が幾分か柔らかくてホッとした。
「どこから…。私も分からないんです…」
「わからない…とは…」
「えっと…気づいたらここにいて…」
私の言い分に困惑している様子が見て取れた。
そりゃそうだ。
だって言ってる本人も困惑してる。
「ちょっと!君、足怪我してるじゃないか」
ザッザッと前に出てきた男は私の前に跪いた。
「そこに座って」
戸惑いながら指差された石の上に腰掛けると、私の前で彼は膝をついた。
「切り傷がひどいな…。ここは枝の破片が刺さってる」
そういうと彼は私の足からピッと破片を抜いてくれた。
「あっ、あの。ありがとうございます。でももう大丈夫です…」
本当はすごく痛むけど、知らない男の人に足を触られて恥ずかしさの方が上回った。
「ほんと、汚いので…」
しげしげと足を見られる。
私の顔は茹で蛸のように真っ赤だろう。
「伊作。触りすぎだ」
私の心情を察してくれた美人さんが助け舟を出してくれた。
「ご、ごめんなさい!保健委員なのでつい…」
保健委員という馴染みのある単語が出てきて驚いた。
え、委員?ってことは学生?
「ところで草鞋は履いていないのですか?」
私の足を手に乗せたまま、伊作くん(名字がわからないからとりあえず心の中でそう呼ぼう)は首を傾げて聞いてきた。
「わ、草鞋?」
靴じゃなくて?
頭に疑問符を浮かべた。
「まぁ、細かいことはいいじゃないか!」
「全然細かくないだろう!」
ガハハと豪快に笑った男の子は竹筒を出して、ぐびっとそれを傾けた。
水…。
いいなぁ。
もう随分水分をとっていない。
今まで混乱していて意識が逸れていたが、目の前で水を飲んだ人を見ると、急に喉が渇いていると自覚した。
「喉が渇いているのですか?」
美人さんに問いかけられて私はハッとして俯いた。
そんなに物欲しそうな顔してたのかな。
恥ずかしい。
美人さんはスッと私の前に竹筒を出した。
「私の物で申し訳ないのですが、よければどうぞ」
「えっ!でも大事なものなんじゃ…」
「大丈夫ですよ。貴方が気にならないなら口をつけて飲んで頂いて構いません」
「ありがとうございます…!!」
軽く遠慮したが、正直もう限界だ。
格好が忍者だとか、なんで水筒じゃなくて竹筒なのかとかこの際どうでもいい。
美人さんから竹筒を受け取ると、一口飲んで喉を潤した。水分を受けた体内がさらにもう一口を強請ってきた。
「本当にありがとうございます。命の恩人です」
数口頂いて、竹筒から口を離すとその場にいた全員が私の方を凝視していた。
「あの…何か?あ、飲み過ぎちゃいましたか!?」
竹筒を振ったら中にはまだ沢山残ってそうだけど「こいつ遠慮ないな」って思われたかな!?
「いえいえ。全部飲んで頂いて大丈夫ですよ」
「流石にそれは悪いので…。本当にありがとうございました」
竹筒の口部分を拭って返した。
「で、さっきから何一つこちらの質問に答えていないが?」
そうだ。
忘れかけていたが、この文次郎って呼ばれた怖い人もいたんだった。
「何をどう説明したらいいのか…。私にも分からなくて」
「分からないばかりで話にならん」
「そう威圧的にならないで」
伊作くんが文次郎くんを止めてくれた。
優しい…。
「名前さんでしたね。先程申した通りここは私有地なんです。そして私達は一生徒の身分なので貴方の処遇を決める権利がない。今から学園長のところへお連れします」
美人さんが端的にこれからのことを説明してくれた。
「処遇…」
この人たちから見たら私って不法侵入した人間ってことだもんね。
どっちにしろ、こんなところではいさよならって言われても困るから、行くしかない。
「それよりもまず保健室だよ!」
不安になっていた私の足を、伊作くんは大きな手で包んでくれた。