【2章】室町パニック
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「まったく…」
「ありがとうございます」
「……」
き、気まずい!
私の羞恥が伝播してしまっている利吉さん。
話題を変えようと思って、私は口を開いた。
「利吉さんには助けてもらってばっかりですね」
「え?どこかでお会いしたことありますか?」
会ってたら忘れないはずなんだけどなぁ…と呟く利吉さんにハッとした。
「あ、この間町で助けてもらった娘です。私の情報を探ってもらってるっていう…」
「え!?あの時の!?なるほど…変装していたんですね」
私はコクコクと頷いた。
利吉さんは頬をかいた。
「いや、まさか素顔がこんなに綺麗な方だとは」
「え!?そんな…」
なんで皆こんなに私のことをヨイショしてくれるんだろう…って思ってたけど、タイムスリップしているなら腑に落ちた。
現代では庶民の私でも、生活レベルはこちらの姫同等かもしくはそれ以上の生活水準なのだ。
現代の化粧水や乳液はこっちでは絶対に手に入らない高級品。というか生産がそもそもない。
医療レベルだって段違い。
そりゃ現代技術が集約されてる私はこちらの世界の人間から見たら姫レベルで間違いないのだ。
タイムスリップしてよかったことと言えば、皆が「美人、可愛い」ともてはやしてくれることぐらいだ。
一部からは高貴さが無いと言われているが。
「お世辞でも嬉しいです」
もじもじと身体の前で指を遊ばせる。
その指を利吉さんがちょん、と触った。
顔を上げると微笑む利吉さんと目が合った。
「お世辞じゃないです。これまでも手を抜いていたわけではないですが、より一層やる気が出ました。有益な情報を必ず手に入れるので待っててください」
そう言われて私はぐっと口を噤んだ。
利吉さんは私をどこかの南蛮の姫かなんかだと当たりをつけて情報を探してくれてるんだよね…?
無駄足踏ませてると思うと心が苦しくて、正直に話そうかと迷った。
しかし結局我が身可愛さで今後のことを考えると言えなかった。
*****************
確かにおかしいな、とは感じていた。
掃き掃除をしていた彼女とは初対面なはずなのに知り合いのような雰囲気を出していたから。
こんなに見目が美しい人なら忘れるはずがない。
まさかあの時の女性だったとは。
鉢屋くんの変装は相変わらずすごい腕だな。
それにしても小松田さんは相変わらずのポンコツぶりだ。
一体何年働いているんだ。
いい加減穴に落ちるなよ。
さらには彼女を巻き添えにして、あろうことかあのしなやかな身体に触れたとは。
なんて羨まし…ゴホン。
そして天然とは怖いものだ。
ある意味小松田さんはこの学園で最強なのかもしれない。
羞恥でプルプル震えている名前さんをどうにか元気づけたいが、小松田のせいで視線が身体を追ってしまう。
「えっと、山田先生なら職員室にいらっしゃると思いますよ!」
「え、ええ!忘れるところでした」
学園に来た目的を危うく見失うところだった。
ドギマギしながら校舎へと向かおうとしたとき。
掃き掃除を再開した彼女に別れの挨拶を告げようと振り返ったら、彼女の足元の土の色が周りと違うことに気づいた。
「名前さん!そこ!!」
「へっ!?」
ぽっかり空いた足元。
重力に従って落ちていく名前さんの腕を取ろうとしたが間に合わず、咄嗟に自分も穴の中へ落ちて地面と名前さんの間に身体を滑り込ませた。
「す、すみません!!!」
「いえ。怪我はありませんか?」
間に合ってよかった。
多少背中は痛いが、名前さんは無傷だったようなので身を挺した甲斐があった。
「私はどこも…。利吉さんは?」
「私も大丈夫ですよ」
「でも…」
私が気を使っていると思っているらしい。
眉をハの字に下げて、心配そうに見上げてくる名前さん。
「とにかく穴から出ましょう」
「二人とも落ちちゃったから誰か呼ばないといけませんね」
「このぐらいの深さなら大丈夫ですよ」
「え?」
失礼します、と一声掛けて名前さんを抱き上げた。
「ええ!?」
穴から自力で脱出すると彼女は頬を赤らめながら目を白黒させていた。
「ね?造作もないでしょう?」
「す、すごいです」
私の腕から降りた名前さんはお礼を述べると再び心配そうな表情で私を見上げた。
「あの、やっぱり保健室に寄って行きませんか?後から痛みが出るかもしれませんし……」
本当に大丈夫なので断ろうとしたが、行かなければ彼女は私を心配して今夜眠れないかもしれない。
それはそれで名前さんの脳内を私が占めるのは優越感があるが、こんな形では望んでいない。
そして、そんな感情を抱いている私はどうやら名前さんに一目惚れをしてしまったようだ。
「じゃあ、念の為行っておきましょうか。背中が少し痛いので」
そう言うと彼女は焦って私の背中に手を添えて介助してくれた。
名前さんの優しさに甘えて、少し身体を寄せてみるとしっかり支えようと腕を肩に回してくれる。
どうやら、私は小松田さんをとやかく責める権利はなさそうだ。
今度こそ穴に落ちないように一歩、一歩わざと歩調を落として保健室へと向かった。
「ありがとうございます」
「……」
き、気まずい!
私の羞恥が伝播してしまっている利吉さん。
話題を変えようと思って、私は口を開いた。
「利吉さんには助けてもらってばっかりですね」
「え?どこかでお会いしたことありますか?」
会ってたら忘れないはずなんだけどなぁ…と呟く利吉さんにハッとした。
「あ、この間町で助けてもらった娘です。私の情報を探ってもらってるっていう…」
「え!?あの時の!?なるほど…変装していたんですね」
私はコクコクと頷いた。
利吉さんは頬をかいた。
「いや、まさか素顔がこんなに綺麗な方だとは」
「え!?そんな…」
なんで皆こんなに私のことをヨイショしてくれるんだろう…って思ってたけど、タイムスリップしているなら腑に落ちた。
現代では庶民の私でも、生活レベルはこちらの姫同等かもしくはそれ以上の生活水準なのだ。
現代の化粧水や乳液はこっちでは絶対に手に入らない高級品。というか生産がそもそもない。
医療レベルだって段違い。
そりゃ現代技術が集約されてる私はこちらの世界の人間から見たら姫レベルで間違いないのだ。
タイムスリップしてよかったことと言えば、皆が「美人、可愛い」ともてはやしてくれることぐらいだ。
一部からは高貴さが無いと言われているが。
「お世辞でも嬉しいです」
もじもじと身体の前で指を遊ばせる。
その指を利吉さんがちょん、と触った。
顔を上げると微笑む利吉さんと目が合った。
「お世辞じゃないです。これまでも手を抜いていたわけではないですが、より一層やる気が出ました。有益な情報を必ず手に入れるので待っててください」
そう言われて私はぐっと口を噤んだ。
利吉さんは私をどこかの南蛮の姫かなんかだと当たりをつけて情報を探してくれてるんだよね…?
無駄足踏ませてると思うと心が苦しくて、正直に話そうかと迷った。
しかし結局我が身可愛さで今後のことを考えると言えなかった。
*****************
確かにおかしいな、とは感じていた。
掃き掃除をしていた彼女とは初対面なはずなのに知り合いのような雰囲気を出していたから。
こんなに見目が美しい人なら忘れるはずがない。
まさかあの時の女性だったとは。
鉢屋くんの変装は相変わらずすごい腕だな。
それにしても小松田さんは相変わらずのポンコツぶりだ。
一体何年働いているんだ。
いい加減穴に落ちるなよ。
さらには彼女を巻き添えにして、あろうことかあのしなやかな身体に触れたとは。
なんて羨まし…ゴホン。
そして天然とは怖いものだ。
ある意味小松田さんはこの学園で最強なのかもしれない。
羞恥でプルプル震えている名前さんをどうにか元気づけたいが、小松田のせいで視線が身体を追ってしまう。
「えっと、山田先生なら職員室にいらっしゃると思いますよ!」
「え、ええ!忘れるところでした」
学園に来た目的を危うく見失うところだった。
ドギマギしながら校舎へと向かおうとしたとき。
掃き掃除を再開した彼女に別れの挨拶を告げようと振り返ったら、彼女の足元の土の色が周りと違うことに気づいた。
「名前さん!そこ!!」
「へっ!?」
ぽっかり空いた足元。
重力に従って落ちていく名前さんの腕を取ろうとしたが間に合わず、咄嗟に自分も穴の中へ落ちて地面と名前さんの間に身体を滑り込ませた。
「す、すみません!!!」
「いえ。怪我はありませんか?」
間に合ってよかった。
多少背中は痛いが、名前さんは無傷だったようなので身を挺した甲斐があった。
「私はどこも…。利吉さんは?」
「私も大丈夫ですよ」
「でも…」
私が気を使っていると思っているらしい。
眉をハの字に下げて、心配そうに見上げてくる名前さん。
「とにかく穴から出ましょう」
「二人とも落ちちゃったから誰か呼ばないといけませんね」
「このぐらいの深さなら大丈夫ですよ」
「え?」
失礼します、と一声掛けて名前さんを抱き上げた。
「ええ!?」
穴から自力で脱出すると彼女は頬を赤らめながら目を白黒させていた。
「ね?造作もないでしょう?」
「す、すごいです」
私の腕から降りた名前さんはお礼を述べると再び心配そうな表情で私を見上げた。
「あの、やっぱり保健室に寄って行きませんか?後から痛みが出るかもしれませんし……」
本当に大丈夫なので断ろうとしたが、行かなければ彼女は私を心配して今夜眠れないかもしれない。
それはそれで名前さんの脳内を私が占めるのは優越感があるが、こんな形では望んでいない。
そして、そんな感情を抱いている私はどうやら名前さんに一目惚れをしてしまったようだ。
「じゃあ、念の為行っておきましょうか。背中が少し痛いので」
そう言うと彼女は焦って私の背中に手を添えて介助してくれた。
名前さんの優しさに甘えて、少し身体を寄せてみるとしっかり支えようと腕を肩に回してくれる。
どうやら、私は小松田さんをとやかく責める権利はなさそうだ。
今度こそ穴に落ちないように一歩、一歩わざと歩調を落として保健室へと向かった。