【1章】さよなら令和、ようこそ室町
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「着きましたよ」
「え…?」
素直に乗ってよかったと思う。
とても自分で歩ける距離では無かった。
しかし、今までの足の疲れなど忘れてしまうぐらいに自分の目に飛び込んできた景色は衝撃的だった。
「ここが街…ですか?」
「ええ、町ですね」
私が知ってる街じゃない。
高層ビルも無ければ、流行りのアパレルや雑貨屋さんも無かった。
あるのはまるで時代劇のような町並み。
街じゃなくて町なのだ。
夢見心地で辺りの景色を見回しながら進んだ。
「その様子だと、町も覚えてなさそうだね」
「……」
知らない。
こんな町、知らない。
「あの、私ちょっと見て回りたいのでお家賃届けたらどこかで合流しませんか?」
「わかった。じゃあこのお地蔵さんの前にしよう」
土井先生は町の入り口にあった地蔵を指さした。
「でも一人にして大丈夫かい?」
「迷子にならない距離だけにしておきます」
ちょっと一人で頭の中を整理しながら回りたい。
土井先生も察してくれたようで、私達は一度解散した。
ゆっくり歩いて通路の左右で開かれている露店をそっと覗いた。
私が知っている店とはまるで違う。
自分の常識が全て覆された瞬間だった。
1時間も移動したのだ。
それでこの景色。町並み。
「(タイムスリップしてる…)」
もう認めざるをえなかった。
*******************
ふらふらと露店を一通り見終えて、元来た道を戻って地蔵を目指した。
タイムスリップしていることを認めたら、一気に不安が押し寄せてきた。
え、どうやって帰るの?コレ。
来た方法が分からないんだから、帰る方法も分かるわけない。
どうしよう、土井先生に相談する?
いや、でも私が今安全を確保してもらえているのは"姫"の可能性があるからで・・・。
タイムスリップしてきました、なんて言っても絶対信じてもらえないし最悪追い出されるのでは?
困る困る困る。
どう見ても私の今までの知識で生活できる世界じゃない。
根本が違う。
まだ現代の外国の方がいきなり飛んでも生活できるわ。
ぐるぐると思考が回り、周囲に注意を払うのをおろそかにしていた。
「わっ!」
「いってぇな!このブス!」
ああ!?んだとコラ。
睨み返そうと思ったが、ヒクリと口元が歪んだ。
相手は帯刀していた。
本物・・・なんだよね?
タイムスリップしているなら本物だ。
「すみません・・・」
まあ、ちゃんと見てなかった私も悪い。
そう思い素直に謝ったが、相手は許してくれなかった。
「どう落とし前つけてくれんだ!?」
「落とし前と言われましても・・・」
「こんなブス大した値もつかねぇしなぁー」
イラっとしたが、売られても困るので三郎くんの変装に感謝した。
「金目のモン出せ」
「持ってないです」
「嘘つけ。ここにいるんだから何か買いに来たんだろ」
「いえ、ただ見にきただけなので」
「見せてみろ」
そういって小袖を引っ張ろうとした男の腕を別の腕が掴んだ。
「やめておけ」
目元が涼し気な若い男性が男に釘を刺した。
「引くなら今だぞ」
「なんだお前。いてててて」
ぐっと捻り上げられて、手首があらぬ方向を向いている。
「くそっ・・・」
え、弱っ・・・。
尻尾を巻いて逃げていく男に呆然とした。
刀は飾りかよ。
「大丈夫ですか?」
「はい!ありがとうございます」
「・・・?何か?」
「あ、いえ。どこかでお見掛けした気がして・・・」
会ったことあるはずないのに、若い男性に既視感があった。
まじまじと見すぎてしまった。
男性が少し引いている。
「えっと・・・。私の記憶には無いので思い違いかと」
「す、すみません!助けてくれてありがとうございました」
ペコリと頭を下げたとき遠くの方から「名前さーん!!」と声が聞こえてきた。
振り向くと土井先生が走って来て、私達の前に止まった。
「あれ!?利吉くん!?」
「土井先生!」
2人は顔見知りなのか。
そういえば、利吉さんって伊作くんから聞いた・・・。
「あ、山田先生の息子さん!?」
そうだ、目がすごく似ている。
だから既視感があったんだ。
「父のこともご存じなんですか?」
「ええ。今学園でお世話になっているんです。私の情報を集めてくださっているとお聞きしています」
「貴方が話に聞いていた方だったんですね!すみません、特に有益な情報は得られていなくて・・・」
「いえいえ!本当にすみません。見ず知らずの私のために・・・」
「忍務ですから。気にしないでください」
そうと分かればすっきりした。
話に入って来たそうにしている土井先生に今しがた起こったことの経緯を話した。
「そんなことがあったんだね。一人にしてすまない」
「いえ、私が言いだしたことですから。お家賃は大丈夫でしたか?」
「ああ。問題ないよ」
「では、私はこれで」
「本当にありがとうございました!」
再度お礼を言うと、利吉さんは颯爽とその場を去っていった。
「え…?」
素直に乗ってよかったと思う。
とても自分で歩ける距離では無かった。
しかし、今までの足の疲れなど忘れてしまうぐらいに自分の目に飛び込んできた景色は衝撃的だった。
「ここが街…ですか?」
「ええ、町ですね」
私が知ってる街じゃない。
高層ビルも無ければ、流行りのアパレルや雑貨屋さんも無かった。
あるのはまるで時代劇のような町並み。
街じゃなくて町なのだ。
夢見心地で辺りの景色を見回しながら進んだ。
「その様子だと、町も覚えてなさそうだね」
「……」
知らない。
こんな町、知らない。
「あの、私ちょっと見て回りたいのでお家賃届けたらどこかで合流しませんか?」
「わかった。じゃあこのお地蔵さんの前にしよう」
土井先生は町の入り口にあった地蔵を指さした。
「でも一人にして大丈夫かい?」
「迷子にならない距離だけにしておきます」
ちょっと一人で頭の中を整理しながら回りたい。
土井先生も察してくれたようで、私達は一度解散した。
ゆっくり歩いて通路の左右で開かれている露店をそっと覗いた。
私が知っている店とはまるで違う。
自分の常識が全て覆された瞬間だった。
1時間も移動したのだ。
それでこの景色。町並み。
「(タイムスリップしてる…)」
もう認めざるをえなかった。
*******************
ふらふらと露店を一通り見終えて、元来た道を戻って地蔵を目指した。
タイムスリップしていることを認めたら、一気に不安が押し寄せてきた。
え、どうやって帰るの?コレ。
来た方法が分からないんだから、帰る方法も分かるわけない。
どうしよう、土井先生に相談する?
いや、でも私が今安全を確保してもらえているのは"姫"の可能性があるからで・・・。
タイムスリップしてきました、なんて言っても絶対信じてもらえないし最悪追い出されるのでは?
困る困る困る。
どう見ても私の今までの知識で生活できる世界じゃない。
根本が違う。
まだ現代の外国の方がいきなり飛んでも生活できるわ。
ぐるぐると思考が回り、周囲に注意を払うのをおろそかにしていた。
「わっ!」
「いってぇな!このブス!」
ああ!?んだとコラ。
睨み返そうと思ったが、ヒクリと口元が歪んだ。
相手は帯刀していた。
本物・・・なんだよね?
タイムスリップしているなら本物だ。
「すみません・・・」
まあ、ちゃんと見てなかった私も悪い。
そう思い素直に謝ったが、相手は許してくれなかった。
「どう落とし前つけてくれんだ!?」
「落とし前と言われましても・・・」
「こんなブス大した値もつかねぇしなぁー」
イラっとしたが、売られても困るので三郎くんの変装に感謝した。
「金目のモン出せ」
「持ってないです」
「嘘つけ。ここにいるんだから何か買いに来たんだろ」
「いえ、ただ見にきただけなので」
「見せてみろ」
そういって小袖を引っ張ろうとした男の腕を別の腕が掴んだ。
「やめておけ」
目元が涼し気な若い男性が男に釘を刺した。
「引くなら今だぞ」
「なんだお前。いてててて」
ぐっと捻り上げられて、手首があらぬ方向を向いている。
「くそっ・・・」
え、弱っ・・・。
尻尾を巻いて逃げていく男に呆然とした。
刀は飾りかよ。
「大丈夫ですか?」
「はい!ありがとうございます」
「・・・?何か?」
「あ、いえ。どこかでお見掛けした気がして・・・」
会ったことあるはずないのに、若い男性に既視感があった。
まじまじと見すぎてしまった。
男性が少し引いている。
「えっと・・・。私の記憶には無いので思い違いかと」
「す、すみません!助けてくれてありがとうございました」
ペコリと頭を下げたとき遠くの方から「名前さーん!!」と声が聞こえてきた。
振り向くと土井先生が走って来て、私達の前に止まった。
「あれ!?利吉くん!?」
「土井先生!」
2人は顔見知りなのか。
そういえば、利吉さんって伊作くんから聞いた・・・。
「あ、山田先生の息子さん!?」
そうだ、目がすごく似ている。
だから既視感があったんだ。
「父のこともご存じなんですか?」
「ええ。今学園でお世話になっているんです。私の情報を集めてくださっているとお聞きしています」
「貴方が話に聞いていた方だったんですね!すみません、特に有益な情報は得られていなくて・・・」
「いえいえ!本当にすみません。見ず知らずの私のために・・・」
「忍務ですから。気にしないでください」
そうと分かればすっきりした。
話に入って来たそうにしている土井先生に今しがた起こったことの経緯を話した。
「そんなことがあったんだね。一人にしてすまない」
「いえ、私が言いだしたことですから。お家賃は大丈夫でしたか?」
「ああ。問題ないよ」
「では、私はこれで」
「本当にありがとうございました!」
再度お礼を言うと、利吉さんは颯爽とその場を去っていった。