【4章】今も未来も
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「名前さん!?大丈夫かい!?」
土井先生は私の返事を聞く前に穴の中に降りてきた。
「だ、大丈夫です…」
「泣いてるじゃないか!どこか痛いんだろう?」
手や足を確認してくれるが、本当に怪我はしてない。
「身体は大丈夫です……」
そう言うと、土井先生は膝を抱えた私を丸ごと抱き締めた。
「さっきの…。信じられなくて、何を言っているのか一瞬分からなかったけど…」
頬に伝った涙を、指で拭ってくれた。
「未来から来たんだね?」
私が自分の口で言う前に、土井先生は核心を突いた。観念して小さく頷いた私は、さらに身体を縮こませた。
「泣かないで」
まるで小さな幼子にするように、頭をゆっくり撫でて、落ち着かせようとしてくれた。
「名前さんが話してくれるのを待つって言ったけど、今がその時だと思うんだ。私はどんな名前さんでも受け入れる覚悟がある」
だから話してほしい。
土井先生の声色は終始優しくて、私は身の上に起こったことをポツリポツリと話し始めた。
話したら引き金になってまた飛んでしまうかもしれない、という不安は一旦心の隅に追いやった。
「と、いうわけなんです」
私は土井先生の胸元に身を預けながら、全部話した。
「なるほど……」
「信じてくれますか?」
「もちろん」
こんな突飛な話を信じてくれるなんて。
土井先生、人が良すぎないか?と思ったが、そんな私の胸中は筒抜けだった。
「名前さんが嘘を吐く理由がないし、今までのことや見たことのない衣を着ていたことが証拠だよ。むしろ全て腑に落ちた……かな」
「南蛮の知識なんて、全然無いんです。脱水機もミサンガも現代の物です」
土井先生はハハッと笑って夜空を見上げた。
「数百年後か…。すごく便利なんだろうね」
「はい。井戸は無いです。手を翳したら水が出てくる機械があります」
「ええ!?それはすごいな」
土井先生は後ろから抱き締めたまま、私の腕を取って小袖を捲った。
「どうりで、こんなに細いわけだ」
「現代では普通の腕ですよ」
こっちの人達が逞しすぎるんです。
移動手段は車、バス、電車だと言えば、それを一から説明してそのたびに土井先生は目を丸くしていた。
「どうりで、歩けないわけだ」
「現代では普通です」
こんなやり取りが何回も続き、面白くなって、いつの間にか涙の代わりに笑顔が溢れた。
「でも…。本当にいいのかい?そんなに便利な世界から来たなら帰りたいんじゃないか?」
土井先生に聞かれて、私は首を横に振った。
「現代は確かに便利です。でも思ったんです。もしこっちの人が現代に飛んだらどうなるかなって」
現代は一人一人識別番号が与えられていて、人ひとりが急に増えたら、きっと大問題になる。
戸籍がまず無いし、住所が無ければ定職につくのも難しい。
子どもならまだしも、土井先生のような大人が突然飛んできたら生活なんてしていけるのだろうか。
もし、私が突然土井先生に出会って「助けてほしい」と言われたら、助けてあげられただろうか。
現代は便利だけど、不自由だ。
室町は不便だけど、自由だ。
「私、自由な室町時代が好きです。だから私はここで生きていきたいです」
みんなが受け入れてくれたら……ですが、と言葉が尻すぼみになっていく。
土井先生は、一旦私から離れると、肩を掴んでくるりと彼の方に向かせた。
「私はもう受け入れている」
土井先生は私の返事を聞く前に穴の中に降りてきた。
「だ、大丈夫です…」
「泣いてるじゃないか!どこか痛いんだろう?」
手や足を確認してくれるが、本当に怪我はしてない。
「身体は大丈夫です……」
そう言うと、土井先生は膝を抱えた私を丸ごと抱き締めた。
「さっきの…。信じられなくて、何を言っているのか一瞬分からなかったけど…」
頬に伝った涙を、指で拭ってくれた。
「未来から来たんだね?」
私が自分の口で言う前に、土井先生は核心を突いた。観念して小さく頷いた私は、さらに身体を縮こませた。
「泣かないで」
まるで小さな幼子にするように、頭をゆっくり撫でて、落ち着かせようとしてくれた。
「名前さんが話してくれるのを待つって言ったけど、今がその時だと思うんだ。私はどんな名前さんでも受け入れる覚悟がある」
だから話してほしい。
土井先生の声色は終始優しくて、私は身の上に起こったことをポツリポツリと話し始めた。
話したら引き金になってまた飛んでしまうかもしれない、という不安は一旦心の隅に追いやった。
「と、いうわけなんです」
私は土井先生の胸元に身を預けながら、全部話した。
「なるほど……」
「信じてくれますか?」
「もちろん」
こんな突飛な話を信じてくれるなんて。
土井先生、人が良すぎないか?と思ったが、そんな私の胸中は筒抜けだった。
「名前さんが嘘を吐く理由がないし、今までのことや見たことのない衣を着ていたことが証拠だよ。むしろ全て腑に落ちた……かな」
「南蛮の知識なんて、全然無いんです。脱水機もミサンガも現代の物です」
土井先生はハハッと笑って夜空を見上げた。
「数百年後か…。すごく便利なんだろうね」
「はい。井戸は無いです。手を翳したら水が出てくる機械があります」
「ええ!?それはすごいな」
土井先生は後ろから抱き締めたまま、私の腕を取って小袖を捲った。
「どうりで、こんなに細いわけだ」
「現代では普通の腕ですよ」
こっちの人達が逞しすぎるんです。
移動手段は車、バス、電車だと言えば、それを一から説明してそのたびに土井先生は目を丸くしていた。
「どうりで、歩けないわけだ」
「現代では普通です」
こんなやり取りが何回も続き、面白くなって、いつの間にか涙の代わりに笑顔が溢れた。
「でも…。本当にいいのかい?そんなに便利な世界から来たなら帰りたいんじゃないか?」
土井先生に聞かれて、私は首を横に振った。
「現代は確かに便利です。でも思ったんです。もしこっちの人が現代に飛んだらどうなるかなって」
現代は一人一人識別番号が与えられていて、人ひとりが急に増えたら、きっと大問題になる。
戸籍がまず無いし、住所が無ければ定職につくのも難しい。
子どもならまだしも、土井先生のような大人が突然飛んできたら生活なんてしていけるのだろうか。
もし、私が突然土井先生に出会って「助けてほしい」と言われたら、助けてあげられただろうか。
現代は便利だけど、不自由だ。
室町は不便だけど、自由だ。
「私、自由な室町時代が好きです。だから私はここで生きていきたいです」
みんなが受け入れてくれたら……ですが、と言葉が尻すぼみになっていく。
土井先生は、一旦私から離れると、肩を掴んでくるりと彼の方に向かせた。
「私はもう受け入れている」
