【3章】フォーリンラブin室町
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「仙蔵くん、待って!」
私は早歩きで去っていく仙蔵くんの背中を追いかけた。
私の声はおそらく届いているはずなのに、振り返ることなく歩いていってしまう。
ああ、もう!
相変わらず走りにくい服だなぁ!
足が捌きづらい小袖が乱れることを気にすることなく、大股で走った。
なんか、このシチュエーション前にもあったな…。
ふと思い出した時、そういえば…確かこのあと。
「わっ!」
ドサッと前のめりに倒れた。
そう、あのとき私は転んでしまって…。
「大丈夫ですか?」
こうやって仙蔵くんが助けに来てくれたんだ。
「捕まえた」
ぎゅっと手を伸ばして仙蔵くんの手首を握った。
あのときは本当に転んでしまったけど、今のは…。
「わざとですか?」
「えへへ」
「騙されました」
わざと転んだので、当然怪我も無い。
少し砂で汚れた小袖を払って立ち上がった。
「仙蔵くんに助けてくれたお礼言いたくて…」
「……」
「ありがとう」
「いえ」
「……」
どこかよそよそしい雰囲気に、私は次に喋る言葉を探した。
「ごめんね…」
「どうして謝るんですか」
「わかんない…。だって仙蔵くんは、救出を面倒なんて思わないと思うから…。だから何に怒ってるのかわからなくて…」
でも怒ってるよね?と尋ねれば、仙蔵くんは表情を歪めた。
「怒っているのはタソガレドキに対してです。名前さんに対しては……表現しづらい感情が胸に渦巻いてます」
「表現しづらい感情?」
「あの生首フィギュア、作ったの私です」
「ああ!あれすごくよくできてたよね!本当にそっくりだった」
自分の生首見たときは、微妙な感情だったけど、見た瞬間にこれは仙蔵くんが作ったのだと気づいた。
「どんな気持ちであれを作ったかわかりますか…?」
仙蔵くんはぐっと拳を握りしめた。
「雑渡昆奈門に名前さんの生首を作れと言われて…。完成するたびに❝似てない❞とダメ出しを受けて…」
「ごめんね…。何度も作り直してくれたんだ…」
「そんなことはどうでもいいです」
彼はギリッと歯を軋ませた。
「❝今は赤い紅をつけている❞だの❝少し痩せたから頬の肉を落とせ❞だの、私の知らない名前さんの情報を出してきて…!!」
私達の間を駆け抜けた風が、仙蔵くんの長い髪を靡かせた。
「名前さんのことは私が一番よくわかっている!なのにあいつは知った風な口を…!」
一度口にしたら止まらなくなったのか、雑渡さんへのクレームが次々に溢れ出た。
私は、一つ一つ「うん、うん…」と遮らずに耳を傾けた。
「わかりますか…私の気持ちが。好きな人の生首を作らないといけない気持ちが」
私は言葉に詰まった。
仙蔵くんにすごく苦しい想いをさせてしまったと思ったら悲しくなった。
「ごめんね、悲しい想いをさせて」
「謝らないでください。貴方は何も悪くない」
仙蔵くんは眉間に皺を寄せた。
「あんなもの作って…。本当にこうなったらどうしようかと思うと怖くなったんです」
涙を堪えている仙蔵くんを、私はそっと抱き締めた。
「ここにいるよ、私。ちゃんと生きてる」
「はい」
「仙蔵くんが完璧な生首フィギュア作ってくれたおかげで、私は帰って来られたんだよ」
彼も私の背中にそっと手を回して、存在を確かめた。肩に落ちた雫には気づかないフリをして。
そして、サラッと言われた❝好きな人❞発言は、仙蔵くん自身興奮して自分が言ったことに気づいていない様子なので、私はその言葉をそっと胸の奥にしまった。
私は早歩きで去っていく仙蔵くんの背中を追いかけた。
私の声はおそらく届いているはずなのに、振り返ることなく歩いていってしまう。
ああ、もう!
相変わらず走りにくい服だなぁ!
足が捌きづらい小袖が乱れることを気にすることなく、大股で走った。
なんか、このシチュエーション前にもあったな…。
ふと思い出した時、そういえば…確かこのあと。
「わっ!」
ドサッと前のめりに倒れた。
そう、あのとき私は転んでしまって…。
「大丈夫ですか?」
こうやって仙蔵くんが助けに来てくれたんだ。
「捕まえた」
ぎゅっと手を伸ばして仙蔵くんの手首を握った。
あのときは本当に転んでしまったけど、今のは…。
「わざとですか?」
「えへへ」
「騙されました」
わざと転んだので、当然怪我も無い。
少し砂で汚れた小袖を払って立ち上がった。
「仙蔵くんに助けてくれたお礼言いたくて…」
「……」
「ありがとう」
「いえ」
「……」
どこかよそよそしい雰囲気に、私は次に喋る言葉を探した。
「ごめんね…」
「どうして謝るんですか」
「わかんない…。だって仙蔵くんは、救出を面倒なんて思わないと思うから…。だから何に怒ってるのかわからなくて…」
でも怒ってるよね?と尋ねれば、仙蔵くんは表情を歪めた。
「怒っているのはタソガレドキに対してです。名前さんに対しては……表現しづらい感情が胸に渦巻いてます」
「表現しづらい感情?」
「あの生首フィギュア、作ったの私です」
「ああ!あれすごくよくできてたよね!本当にそっくりだった」
自分の生首見たときは、微妙な感情だったけど、見た瞬間にこれは仙蔵くんが作ったのだと気づいた。
「どんな気持ちであれを作ったかわかりますか…?」
仙蔵くんはぐっと拳を握りしめた。
「雑渡昆奈門に名前さんの生首を作れと言われて…。完成するたびに❝似てない❞とダメ出しを受けて…」
「ごめんね…。何度も作り直してくれたんだ…」
「そんなことはどうでもいいです」
彼はギリッと歯を軋ませた。
「❝今は赤い紅をつけている❞だの❝少し痩せたから頬の肉を落とせ❞だの、私の知らない名前さんの情報を出してきて…!!」
私達の間を駆け抜けた風が、仙蔵くんの長い髪を靡かせた。
「名前さんのことは私が一番よくわかっている!なのにあいつは知った風な口を…!」
一度口にしたら止まらなくなったのか、雑渡さんへのクレームが次々に溢れ出た。
私は、一つ一つ「うん、うん…」と遮らずに耳を傾けた。
「わかりますか…私の気持ちが。好きな人の生首を作らないといけない気持ちが」
私は言葉に詰まった。
仙蔵くんにすごく苦しい想いをさせてしまったと思ったら悲しくなった。
「ごめんね、悲しい想いをさせて」
「謝らないでください。貴方は何も悪くない」
仙蔵くんは眉間に皺を寄せた。
「あんなもの作って…。本当にこうなったらどうしようかと思うと怖くなったんです」
涙を堪えている仙蔵くんを、私はそっと抱き締めた。
「ここにいるよ、私。ちゃんと生きてる」
「はい」
「仙蔵くんが完璧な生首フィギュア作ってくれたおかげで、私は帰って来られたんだよ」
彼も私の背中にそっと手を回して、存在を確かめた。肩に落ちた雫には気づかないフリをして。
そして、サラッと言われた❝好きな人❞発言は、仙蔵くん自身興奮して自分が言ったことに気づいていない様子なので、私はその言葉をそっと胸の奥にしまった。
