【1章】さよなら令和、ようこそ室町
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「今日の湯浴みは全員終わりましたので、最後は名前さんだけです」
仙蔵くんに声を掛けられて、私は身体を起こした。
「すみません。くノ一長屋の方を使えれば一番いいのですが…距離的に遠くて」
「それは全然!むしろ気を使わせてごめんなさい」
借りている寝衣と手ぬぐいを持って立った。
「無理しないでください」
やはり体重を足に乗せるとズキリと痛んだ。
仙蔵くんは手を取って支えてくれた。
「でも本当に髪お願いしていいの?」
「ええ。明日起きたら元通り綺麗な髪になっているはずですので、楽しみにしてください」
風呂場に着くと仙蔵くんは❝立入禁止❞と書かれた札を表に掛けた。
「では、私は中へ先に入って準備しますので、荷物を置いたら入ってきてください」
そう言って、仙蔵くんは姿を消した。
私は脱衣所の籠に手荷物を入れて、そのまま入ろうとしたが、ここでふと疑問が湧いた。
「今着てるこれ濡らしたらマズイよね…?」
他学年に見られたら大きな噂になるから、とワンピースは早々に回収され、代わりに小袖という服を借りた。
洗い替えにと2枚借りたが、夜のこの時間に濡らしてしまって、そのまま置いておいたらカビが生えたりしないだろうか。
うーん…。
借りている手ぬぐいを広げてみると、思いのほか大きく身体をすっぽり覆えそうだ。
よくテレビ番組で女性アナウンサーがタオル1枚で温泉に入ってるよね。
水着の方がよっぽど露出面積多いし。
それに小袖のまま入ったら、仙蔵くんが濡らさないようにと気をつけなければならなくなる。
うん、よし。いける。
私は頷き小袖の腰紐を緩めた。
*******************
…遅くないか?
たかが荷物を置くだけでそんなに時間がかかるだろうか。
足を怪我しているからか?
しかし急かして転ばれても困るので、私は疑問符を浮かべながら名前さんが入ってくるのを待った。
「お待たせしました、仙蔵くん」
カラカラと戸を引いて入ってきた名前さんの方を振り向いた私は信じられない光景を目にした。
「!!!?????」
「仙蔵くん?」
手ぬぐい1枚を身体に巻き付けただけの彼女は扇情的だった。
「何でそうなったんですか!」
「え?だって濡れるかなって」
借り物濡らしたら悪いし、と続けた名前さんに私は項垂れた。
「濡らさないように私が気をつけますよ」
「それは申し訳ないです」
「仙蔵?そこにいるのか?」
伊作の声が外から聞こえて、私は咄嗟に名前さんの口を手で塞いだ。
喋らないように手で合図すると意図を読み取ってくれたようで、コクコクと彼女は頷いた。
口から手を離して換気用の格子に近づいた。
「あ、ああ。ちょっと壊れているところがあってな。修理していたところだ」
「大丈夫?留さん呼んでこようか?」
「いや、いい。簡単だから私でもできる」
「そっか。ありがとう、気を付けて」
名前さんに肩入れをしている伊作にこんなところを見られたらどうなることやら。
遠ざかる足音に胸をなでおろした。
「名前さん、一度小袖に」
「クシュン!」
もう一度小袖に着替えてくるように言おうとしたとき、くしゃみが名前さんから飛び出した。
「わかりました。小袖に…」
「……身体が冷えてしまってます。風邪をひくと良くないので、そのまま湯船に浸かってください。湯船からこちら側に髪を流してもらえれば」
私の言葉に従い、身体を湯船に沈めた彼女が木枠に指を掛けて髪が外側に出るように下を向いた。
「では、始めますね」
ただ、髪を洗うだけなのにそこに辿り着くまでに物凄く疲労した。
わざと私を油断させるためにこのようなことを?
名前さんは文次郎の言う通りくノ一の間者なのではと過ったが、やはり日焼け一つしていない真っ白な首筋を見て、ただ隙がありすぎる姫か…と思い直した。
私の指先を通る髪の毛は表面的には1日で傷んでしまったものの、栄養はしっかり摂れている髪質だ。
始めは遠慮がちだったのに、今は鼻歌を歌っている彼女に、私の口元からくすりと笑みがこぼれた。
仙蔵くんに声を掛けられて、私は身体を起こした。
「すみません。くノ一長屋の方を使えれば一番いいのですが…距離的に遠くて」
「それは全然!むしろ気を使わせてごめんなさい」
借りている寝衣と手ぬぐいを持って立った。
「無理しないでください」
やはり体重を足に乗せるとズキリと痛んだ。
仙蔵くんは手を取って支えてくれた。
「でも本当に髪お願いしていいの?」
「ええ。明日起きたら元通り綺麗な髪になっているはずですので、楽しみにしてください」
風呂場に着くと仙蔵くんは❝立入禁止❞と書かれた札を表に掛けた。
「では、私は中へ先に入って準備しますので、荷物を置いたら入ってきてください」
そう言って、仙蔵くんは姿を消した。
私は脱衣所の籠に手荷物を入れて、そのまま入ろうとしたが、ここでふと疑問が湧いた。
「今着てるこれ濡らしたらマズイよね…?」
他学年に見られたら大きな噂になるから、とワンピースは早々に回収され、代わりに小袖という服を借りた。
洗い替えにと2枚借りたが、夜のこの時間に濡らしてしまって、そのまま置いておいたらカビが生えたりしないだろうか。
うーん…。
借りている手ぬぐいを広げてみると、思いのほか大きく身体をすっぽり覆えそうだ。
よくテレビ番組で女性アナウンサーがタオル1枚で温泉に入ってるよね。
水着の方がよっぽど露出面積多いし。
それに小袖のまま入ったら、仙蔵くんが濡らさないようにと気をつけなければならなくなる。
うん、よし。いける。
私は頷き小袖の腰紐を緩めた。
*******************
…遅くないか?
たかが荷物を置くだけでそんなに時間がかかるだろうか。
足を怪我しているからか?
しかし急かして転ばれても困るので、私は疑問符を浮かべながら名前さんが入ってくるのを待った。
「お待たせしました、仙蔵くん」
カラカラと戸を引いて入ってきた名前さんの方を振り向いた私は信じられない光景を目にした。
「!!!?????」
「仙蔵くん?」
手ぬぐい1枚を身体に巻き付けただけの彼女は扇情的だった。
「何でそうなったんですか!」
「え?だって濡れるかなって」
借り物濡らしたら悪いし、と続けた名前さんに私は項垂れた。
「濡らさないように私が気をつけますよ」
「それは申し訳ないです」
「仙蔵?そこにいるのか?」
伊作の声が外から聞こえて、私は咄嗟に名前さんの口を手で塞いだ。
喋らないように手で合図すると意図を読み取ってくれたようで、コクコクと彼女は頷いた。
口から手を離して換気用の格子に近づいた。
「あ、ああ。ちょっと壊れているところがあってな。修理していたところだ」
「大丈夫?留さん呼んでこようか?」
「いや、いい。簡単だから私でもできる」
「そっか。ありがとう、気を付けて」
名前さんに肩入れをしている伊作にこんなところを見られたらどうなることやら。
遠ざかる足音に胸をなでおろした。
「名前さん、一度小袖に」
「クシュン!」
もう一度小袖に着替えてくるように言おうとしたとき、くしゃみが名前さんから飛び出した。
「わかりました。小袖に…」
「……身体が冷えてしまってます。風邪をひくと良くないので、そのまま湯船に浸かってください。湯船からこちら側に髪を流してもらえれば」
私の言葉に従い、身体を湯船に沈めた彼女が木枠に指を掛けて髪が外側に出るように下を向いた。
「では、始めますね」
ただ、髪を洗うだけなのにそこに辿り着くまでに物凄く疲労した。
わざと私を油断させるためにこのようなことを?
名前さんは文次郎の言う通りくノ一の間者なのではと過ったが、やはり日焼け一つしていない真っ白な首筋を見て、ただ隙がありすぎる姫か…と思い直した。
私の指先を通る髪の毛は表面的には1日で傷んでしまったものの、栄養はしっかり摂れている髪質だ。
始めは遠慮がちだったのに、今は鼻歌を歌っている彼女に、私の口元からくすりと笑みがこぼれた。