【3章】フォーリンラブin室町
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遡ること数日前。
名前さんが山田親子と山田先生の実家に向かうところを正門で見届けた後のこと。
「先生」
ちょいちょいと袖を引っ張って催促するきり丸に一つ頷いて見せた。
「よし、やるぞ。きり丸」
私はきり丸を普段火薬の実験で使う部屋に連れて行った。
「危険だから不用意に触るなよ」
「はーい」
「例のアレ、見せてみろ」
きり丸は懐から花火と呼ばれた細長い物を取り出した。
「商人のおっさんが言うには、こっち側を手に持って、ここに火を点けるらしいです」
ひらひらした半紙のようなものが尾ひれのようについていた。
「全部で何本あるんだ?」
「二本です。一本は見本で、もう一本は解体用」
「よし、一本つけてみるか」
外に出て、周りに延焼が起きそうなものがないかを確認して、花火に火をつけた。
パチパチパチ。
「「おお」」
火花を散らしたそれは、しばらく弾けた後に鎮火した。
「これを夜にやるのが南蛮で流行ってるらしいっす」
「確かに綺麗そうだな」
「作れそうですか・・・?」
「やってみよう」
そこから私はきり丸と花火の試作品を作り続けた。
結果、私達が家に帰宅したのは実は名前さんと利吉くんがやってくるその日の朝だったりする。
「でも、ドケチのお前が銭を使ってこれを買ってくるなんてどういう風の吹き回しだ?」
「だって、きっと利吉さん、この三日間で仕掛けてきますよ。土井先生、もうちょっと頑張らないと」
「おい・・・」
私はきり丸にそんな心配をされているのか!?
「損して得を取るってやつです。名前さんが南蛮人の姫ならもしかして花火知ってるかも。上流階級の遊びらしいんで。これ完成させて、土井先生が作った花火あげたらきっと喜びます」
きり丸は意外と聡いところがある。
歳を重ねれば私よりも女性の機微に敏感な、いい男になるかもしれない。
「三日目の午後はアルバイト入れてないんで。二人でどっか行って来てください。それで、夜は花火でいい感じに・・・」
私はきり丸の頭を撫でた。
「きり丸も一緒だ」
「え?」
「きり丸が居ないと私も名前さんも寂しい」
「でも、僕が居たら土井先生なかなか前に進めなさそうだし」
「きっと、きり丸が作った花火をあげたら名前さん喜ぶぞ」
「あげるぅ~!?そんなぁーーー」
「お前な・・・」
前言撤回。
やっぱりきり丸はきり丸だ。
*******************
ご近所さんの迷惑にならないように、人気のない土手まで移動した私達は早速花火を楽しんだ。
「うわぁ・・・すごい。これ本当に二人で作ったんですか?」
「結構時間はかかったけど、一度成功したらそこからは量産するだけだから」
「さすが土井先生!」
きり丸くんは花火を持って楽しそうに走りだした。
その後ろ姿を私も一本花火を持ちながら見守った。
「本当に良かった。櫛も取り返して、花火も出来て」
土井先生は私の隣にしゃがんだ。
「あのドケチのきり丸が名前さんをこの休暇中楽しませるために花火を作れないかって商人から試作用を買って来たときは驚いたよ。人の為に銭を使うなんて初めて見たから」
「きり丸くんが・・・」
「あの子なりに色々考えてくれてたんだけど、残念なことが起きてしまったから・・・」
私はきり丸くんが午後からアルバイトを入れていなかったことを思い出した。
「あ・・・私のせいで」
「名前さんのせいじゃない」
でも、せっかく楽しませようとしてくれていたのに、私は泣いてばかりいた。
「ごめんなさい。せっかくの休暇だったのに」
「謝らないで。それを言うなら、こっちに来たことで嫌な思いをさせてしまった」
「そんな・・・」
土井先生のせいじゃない、とお互いこのままだと謝ってばかりになりそうなので、ここからはもう花火を楽しむことにした。
「久しぶりにしました。花火・・・」
「やっぱり知っていたんだね」
「え?」
「花火は南蛮では一般流通してるかもしれないけど、ここでは一部の上流階級の遊びなんだ」
「そ、そうなんですか・・・」
「ふふ。こうなったら名前さんのことをとことん当ててみたくなってしまうね」
けれど土井先生はそれ以上追及することもなく、もう一本花火に火を点けて渡してくれた。
「綺麗・・・」
私が知っている花火はもっと色とりどりだけれど。
それでも今持っている花火は、今まで見たどの花火よりも綺麗だった。
名前さんが山田親子と山田先生の実家に向かうところを正門で見届けた後のこと。
「先生」
ちょいちょいと袖を引っ張って催促するきり丸に一つ頷いて見せた。
「よし、やるぞ。きり丸」
私はきり丸を普段火薬の実験で使う部屋に連れて行った。
「危険だから不用意に触るなよ」
「はーい」
「例のアレ、見せてみろ」
きり丸は懐から花火と呼ばれた細長い物を取り出した。
「商人のおっさんが言うには、こっち側を手に持って、ここに火を点けるらしいです」
ひらひらした半紙のようなものが尾ひれのようについていた。
「全部で何本あるんだ?」
「二本です。一本は見本で、もう一本は解体用」
「よし、一本つけてみるか」
外に出て、周りに延焼が起きそうなものがないかを確認して、花火に火をつけた。
パチパチパチ。
「「おお」」
火花を散らしたそれは、しばらく弾けた後に鎮火した。
「これを夜にやるのが南蛮で流行ってるらしいっす」
「確かに綺麗そうだな」
「作れそうですか・・・?」
「やってみよう」
そこから私はきり丸と花火の試作品を作り続けた。
結果、私達が家に帰宅したのは実は名前さんと利吉くんがやってくるその日の朝だったりする。
「でも、ドケチのお前が銭を使ってこれを買ってくるなんてどういう風の吹き回しだ?」
「だって、きっと利吉さん、この三日間で仕掛けてきますよ。土井先生、もうちょっと頑張らないと」
「おい・・・」
私はきり丸にそんな心配をされているのか!?
「損して得を取るってやつです。名前さんが南蛮人の姫ならもしかして花火知ってるかも。上流階級の遊びらしいんで。これ完成させて、土井先生が作った花火あげたらきっと喜びます」
きり丸は意外と聡いところがある。
歳を重ねれば私よりも女性の機微に敏感な、いい男になるかもしれない。
「三日目の午後はアルバイト入れてないんで。二人でどっか行って来てください。それで、夜は花火でいい感じに・・・」
私はきり丸の頭を撫でた。
「きり丸も一緒だ」
「え?」
「きり丸が居ないと私も名前さんも寂しい」
「でも、僕が居たら土井先生なかなか前に進めなさそうだし」
「きっと、きり丸が作った花火をあげたら名前さん喜ぶぞ」
「あげるぅ~!?そんなぁーーー」
「お前な・・・」
前言撤回。
やっぱりきり丸はきり丸だ。
*******************
ご近所さんの迷惑にならないように、人気のない土手まで移動した私達は早速花火を楽しんだ。
「うわぁ・・・すごい。これ本当に二人で作ったんですか?」
「結構時間はかかったけど、一度成功したらそこからは量産するだけだから」
「さすが土井先生!」
きり丸くんは花火を持って楽しそうに走りだした。
その後ろ姿を私も一本花火を持ちながら見守った。
「本当に良かった。櫛も取り返して、花火も出来て」
土井先生は私の隣にしゃがんだ。
「あのドケチのきり丸が名前さんをこの休暇中楽しませるために花火を作れないかって商人から試作用を買って来たときは驚いたよ。人の為に銭を使うなんて初めて見たから」
「きり丸くんが・・・」
「あの子なりに色々考えてくれてたんだけど、残念なことが起きてしまったから・・・」
私はきり丸くんが午後からアルバイトを入れていなかったことを思い出した。
「あ・・・私のせいで」
「名前さんのせいじゃない」
でも、せっかく楽しませようとしてくれていたのに、私は泣いてばかりいた。
「ごめんなさい。せっかくの休暇だったのに」
「謝らないで。それを言うなら、こっちに来たことで嫌な思いをさせてしまった」
「そんな・・・」
土井先生のせいじゃない、とお互いこのままだと謝ってばかりになりそうなので、ここからはもう花火を楽しむことにした。
「久しぶりにしました。花火・・・」
「やっぱり知っていたんだね」
「え?」
「花火は南蛮では一般流通してるかもしれないけど、ここでは一部の上流階級の遊びなんだ」
「そ、そうなんですか・・・」
「ふふ。こうなったら名前さんのことをとことん当ててみたくなってしまうね」
けれど土井先生はそれ以上追及することもなく、もう一本花火に火を点けて渡してくれた。
「綺麗・・・」
私が知っている花火はもっと色とりどりだけれど。
それでも今持っている花火は、今まで見たどの花火よりも綺麗だった。
