【3章】フォーリンラブin室町
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翌朝。
私はきり丸くんの隣で大量の洗濯物と向き合っていた。
「名前さん、俺やっとくんで櫛探してきていいですよ」
「ううん。こんなに沢山あるから、一緒にやるよ」
きり丸くんに気を使われてしまった。
こんなんじゃいけない、と思いながらもやっぱり気持ちは沈んだ。
気を緩めたら泣いてしまいそうになるから、ぐっと唇に力を入れた。
「おはよう。今日も大変だねぇ」
「「おはようございます」」
隣のおばちゃんは、よっこいしょと私達の横にしゃがんでごしごし洗濯物を洗った。
「ほんと嫌になるよ。最近は腰が痛いってのに」
「大変ですよね…」
ほんとに。
洗濯機を知っている私からしたら、何でこんなことに時間割いてるんだと時々気が遠くなりそうになる。
「冬は地獄だよ…」
おばちゃんの一言に、もうすぐやってくる冬を想像して、私は身震いした。凍傷にならなきゃいいけど…。
気がつけば、私達の他にもこの辺りの御婦人がゾロゾロと洗濯物を持って集まってそれぞれ家事をこなしていた。
「大変ね。自分のところだけじゃなくて、他所の洗濯物も洗わないといけないなんて」
頭上から声が振ってきて、顔を上げた。
そこには昨日の女が立っていて、私を見下ろしていた。
「そう…ですね」
一見朗らかな笑みを浮かべているが、言葉には棘があった。
きり丸くんかギュッと私の小袖を掴んだ。
「半助さんも私と結婚すれば家事なんてしなくていいのに」
この時代は金や身分が物を言う。
現代も貧富の差はあるけれど、レベルが違う。
土井先生の家からは赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。
「じゃ、頑張って」
くるりと身を翻した彼女の髪を見て、私は驚愕した。
「あっ!その櫛!」
私が失くしたと思っていた櫛と簪が彼女の頭に挿さっていたのだ。
「あっ!」
きり丸くんも目を丸くして指差した。
「それ!私のですよね?」
「何言ってるの?私の物だけど」
「だって…!」
私が食い下がると、周囲が私達の空気がおかしいことに気づいた。
「どうしたんだい?」
隣のおばちゃんに事情を説明したが、苦い顔をした。そしてコソッと私に耳打ちした。
「今回は諦めた方がいいよ」
「そんなっ…」
「悔しい気持ちはわかるけど…」
目の前に私の櫛と簪があるのに簡単に諦められない。
去っていこうとする女の腕を掴んだ。
「ちょっと待って!」
「何するのよっ!」
振り払われた腕がジンと痛んだ。
「どうしたの?」
私達の騒ぎを聞きつけて、赤ん坊を背負った土井先生がやってきた。
「半助さん!私の櫛と簪が…」
女の髪を見て、状況を理解した土井先生が女に尋ねた。
「それは、君の物なのかい?」
「ええ、そうです」
「どっちも被るなんてあり得ない!」
櫛か簪どちらかだけなら、たまたま同じ物を持ってることはあるかもしれない。
でも両方なんてあり得ない。
私が食ってかかると、土井先生にやんわり肩を押さえられた。
彼を見上げると眉間に皺を寄せていた。
「これが貴方の物っていう証拠は?名前書いてあるの?」
書いてないと分かっていて言ってくる底意地の悪さ。ぐっと歯を食いしばった。
土井先生は隣のおばちゃんと同じように私に耳打ちした。
「名前さん、気持ちはわかるけどここは退こう」
「そんな……」
手を伸ばせば届く距離にあるのに。
昨日の大家さんと土井先生の会話が脳裏を過った。
周囲を見渡すと、みんな少し不安そうな顔をしている。
地主を怒らせたくないんだ…。
「分かりました…」
悔しかった。
私は再び大量の洗濯物を無心に洗い始めた。
私はきり丸くんの隣で大量の洗濯物と向き合っていた。
「名前さん、俺やっとくんで櫛探してきていいですよ」
「ううん。こんなに沢山あるから、一緒にやるよ」
きり丸くんに気を使われてしまった。
こんなんじゃいけない、と思いながらもやっぱり気持ちは沈んだ。
気を緩めたら泣いてしまいそうになるから、ぐっと唇に力を入れた。
「おはよう。今日も大変だねぇ」
「「おはようございます」」
隣のおばちゃんは、よっこいしょと私達の横にしゃがんでごしごし洗濯物を洗った。
「ほんと嫌になるよ。最近は腰が痛いってのに」
「大変ですよね…」
ほんとに。
洗濯機を知っている私からしたら、何でこんなことに時間割いてるんだと時々気が遠くなりそうになる。
「冬は地獄だよ…」
おばちゃんの一言に、もうすぐやってくる冬を想像して、私は身震いした。凍傷にならなきゃいいけど…。
気がつけば、私達の他にもこの辺りの御婦人がゾロゾロと洗濯物を持って集まってそれぞれ家事をこなしていた。
「大変ね。自分のところだけじゃなくて、他所の洗濯物も洗わないといけないなんて」
頭上から声が振ってきて、顔を上げた。
そこには昨日の女が立っていて、私を見下ろしていた。
「そう…ですね」
一見朗らかな笑みを浮かべているが、言葉には棘があった。
きり丸くんかギュッと私の小袖を掴んだ。
「半助さんも私と結婚すれば家事なんてしなくていいのに」
この時代は金や身分が物を言う。
現代も貧富の差はあるけれど、レベルが違う。
土井先生の家からは赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。
「じゃ、頑張って」
くるりと身を翻した彼女の髪を見て、私は驚愕した。
「あっ!その櫛!」
私が失くしたと思っていた櫛と簪が彼女の頭に挿さっていたのだ。
「あっ!」
きり丸くんも目を丸くして指差した。
「それ!私のですよね?」
「何言ってるの?私の物だけど」
「だって…!」
私が食い下がると、周囲が私達の空気がおかしいことに気づいた。
「どうしたんだい?」
隣のおばちゃんに事情を説明したが、苦い顔をした。そしてコソッと私に耳打ちした。
「今回は諦めた方がいいよ」
「そんなっ…」
「悔しい気持ちはわかるけど…」
目の前に私の櫛と簪があるのに簡単に諦められない。
去っていこうとする女の腕を掴んだ。
「ちょっと待って!」
「何するのよっ!」
振り払われた腕がジンと痛んだ。
「どうしたの?」
私達の騒ぎを聞きつけて、赤ん坊を背負った土井先生がやってきた。
「半助さん!私の櫛と簪が…」
女の髪を見て、状況を理解した土井先生が女に尋ねた。
「それは、君の物なのかい?」
「ええ、そうです」
「どっちも被るなんてあり得ない!」
櫛か簪どちらかだけなら、たまたま同じ物を持ってることはあるかもしれない。
でも両方なんてあり得ない。
私が食ってかかると、土井先生にやんわり肩を押さえられた。
彼を見上げると眉間に皺を寄せていた。
「これが貴方の物っていう証拠は?名前書いてあるの?」
書いてないと分かっていて言ってくる底意地の悪さ。ぐっと歯を食いしばった。
土井先生は隣のおばちゃんと同じように私に耳打ちした。
「名前さん、気持ちはわかるけどここは退こう」
「そんな……」
手を伸ばせば届く距離にあるのに。
昨日の大家さんと土井先生の会話が脳裏を過った。
周囲を見渡すと、みんな少し不安そうな顔をしている。
地主を怒らせたくないんだ…。
「分かりました…」
悔しかった。
私は再び大量の洗濯物を無心に洗い始めた。
