【3章】フォーリンラブin室町
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翌朝。
「おはようございます」
声がする方を向いたら、利吉さんが居た。
横並びに敷いた布団から伸びている手が私の手を握ってくれていた。
「安心しました。朝起きて、貴方が傍にいてくれて」
それは私の台詞だ。
昨日は不安になっている私のために、傍に居てくれると言って客間で利吉さんも一緒に寝た。
倫理観的に躊躇ったけれど、一人で寝る不安も大きくてお願いした。
「よかった…」
そもそもこっちに残るとか残らないとか、私の意思でなんとかなるものでもない。
記憶があるという大きなカミングアウトしたことが引き金にならなくてホッとした。
でも、私が未来人であるということの方が何倍も大きな隠し事だ。
これが引き金になるかもしれない不安があり、言う勇気がなかった。
「変ですね。名前さんが前までよりずっと近くに居るように感じます」
「私も……です」
心の壁を一枚砕いたからだろうか。
利吉さんへの心の距離が昨日よりぐっと近くなっている気がした。
「名残惜しいですが、準備をして出ましょうか」
今日から土井先生の家でお世話になる。
道中なにがあるかわからない、というか私の足では早く行かないと日が暮れてしまうので急いで準備をした。
**********************
「あ、町が見えてきましたね」
ほんの少しだけ期待していた。
不安になっている名前さんが「やっぱり利吉さんと一緒にいたい」と言ってくれることを。
しかし残念ながら一縷の望みは絶たれ、もう町は目の前だ。
正直、あの夜に泣きながら私に告げた内容はほとんど理解できなかったが、それでもよかった。
名前さんが私を頼りにしてくれている。
思いがけない形で好きな人と一夜を過ごせた。
まあ、至って健全な一夜であったが。
何が彼女をそんなに不安にさせているのか分からないが、記憶があるのならその不安にはしっかりとした理由があるのだろう。
布団から出した手で名前さんの手を握りしめれば、痛いぐらい握り返された。
眠りにつくと徐々に弛緩していったが、眠りが浅くなる度に、私の手を探そうとしていたので指を絡めて解けないようにしっかり握った。
そして何よりあの夜の収穫は、私が全く眼中に入っていないというわけではないということだ。
次はどんな手を打つか……。
考えている間に土井先生の家が見えて来た。
「あの、名前さん」
もうじき離さないといけないこの手に私は最後ぎゅっと力を込めた。
「私の気持ち、土井先生の家にいる間も忘れないで欲しいです」
「はい……」
名前さんは恥ずかしそうに頷いた。
「私からの宿題です。一日一回、私のことを思い出してください」
「ふふ、分かりました。利吉先生」
「ちゃんとできたか確認しに行きますよ?」
「どうやって確認するんですか」
ケタケタ笑う彼女。
最後に笑顔が見られて良かった。
「名前さーーん!!!」
「来ましたね」
実はすでに土井先生ときり丸が視界に入っていた。
途中で足を止めて会話をしている私達に待ちきれず、きり丸が走ってきてしまった。
「きり丸くん。こんにちは」
「名前さん。荷物持つよ」
土井先生もきり丸の後ろから追いついた。
「利吉さん。本当にありがとうございました」
彼女のお礼はただ宿泊させてもらったことに対してだけではないということが十分に伝わった。
「あの、これ…」
向こうで渡しそびれちゃって、と手渡されたのは巾着だった。
「利吉さん、色々飛び回ってるから。必需品とかちょっとした食料入れるのにどうかな…って思って」
「そんな。気を使わなくて良かったのに」
「私が、お礼したかっただけです」
まさか贈り物を貰えるなんて。
「ありがとうございます。大事にしますね。では土井先生、あとはよろしくお願いします」
「ああ。またね、利吉くん」
三人に背を向けて、このあと入れている忍務に向かった。
あーあ、行きたくない。
「おはようございます」
声がする方を向いたら、利吉さんが居た。
横並びに敷いた布団から伸びている手が私の手を握ってくれていた。
「安心しました。朝起きて、貴方が傍にいてくれて」
それは私の台詞だ。
昨日は不安になっている私のために、傍に居てくれると言って客間で利吉さんも一緒に寝た。
倫理観的に躊躇ったけれど、一人で寝る不安も大きくてお願いした。
「よかった…」
そもそもこっちに残るとか残らないとか、私の意思でなんとかなるものでもない。
記憶があるという大きなカミングアウトしたことが引き金にならなくてホッとした。
でも、私が未来人であるということの方が何倍も大きな隠し事だ。
これが引き金になるかもしれない不安があり、言う勇気がなかった。
「変ですね。名前さんが前までよりずっと近くに居るように感じます」
「私も……です」
心の壁を一枚砕いたからだろうか。
利吉さんへの心の距離が昨日よりぐっと近くなっている気がした。
「名残惜しいですが、準備をして出ましょうか」
今日から土井先生の家でお世話になる。
道中なにがあるかわからない、というか私の足では早く行かないと日が暮れてしまうので急いで準備をした。
**********************
「あ、町が見えてきましたね」
ほんの少しだけ期待していた。
不安になっている名前さんが「やっぱり利吉さんと一緒にいたい」と言ってくれることを。
しかし残念ながら一縷の望みは絶たれ、もう町は目の前だ。
正直、あの夜に泣きながら私に告げた内容はほとんど理解できなかったが、それでもよかった。
名前さんが私を頼りにしてくれている。
思いがけない形で好きな人と一夜を過ごせた。
まあ、至って健全な一夜であったが。
何が彼女をそんなに不安にさせているのか分からないが、記憶があるのならその不安にはしっかりとした理由があるのだろう。
布団から出した手で名前さんの手を握りしめれば、痛いぐらい握り返された。
眠りにつくと徐々に弛緩していったが、眠りが浅くなる度に、私の手を探そうとしていたので指を絡めて解けないようにしっかり握った。
そして何よりあの夜の収穫は、私が全く眼中に入っていないというわけではないということだ。
次はどんな手を打つか……。
考えている間に土井先生の家が見えて来た。
「あの、名前さん」
もうじき離さないといけないこの手に私は最後ぎゅっと力を込めた。
「私の気持ち、土井先生の家にいる間も忘れないで欲しいです」
「はい……」
名前さんは恥ずかしそうに頷いた。
「私からの宿題です。一日一回、私のことを思い出してください」
「ふふ、分かりました。利吉先生」
「ちゃんとできたか確認しに行きますよ?」
「どうやって確認するんですか」
ケタケタ笑う彼女。
最後に笑顔が見られて良かった。
「名前さーーん!!!」
「来ましたね」
実はすでに土井先生ときり丸が視界に入っていた。
途中で足を止めて会話をしている私達に待ちきれず、きり丸が走ってきてしまった。
「きり丸くん。こんにちは」
「名前さん。荷物持つよ」
土井先生もきり丸の後ろから追いついた。
「利吉さん。本当にありがとうございました」
彼女のお礼はただ宿泊させてもらったことに対してだけではないということが十分に伝わった。
「あの、これ…」
向こうで渡しそびれちゃって、と手渡されたのは巾着だった。
「利吉さん、色々飛び回ってるから。必需品とかちょっとした食料入れるのにどうかな…って思って」
「そんな。気を使わなくて良かったのに」
「私が、お礼したかっただけです」
まさか贈り物を貰えるなんて。
「ありがとうございます。大事にしますね。では土井先生、あとはよろしくお願いします」
「ああ。またね、利吉くん」
三人に背を向けて、このあと入れている忍務に向かった。
あーあ、行きたくない。
