【1章】さよなら令和、ようこそ室町
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さすがに六年生は六年生で授業があるので私につきっきりというわけにはいかない。
保健室には基本的に新野先生が在中しており、時折足の様子を見てくれたり、世間話をしてくださったり。
新野先生の柔らかな雰囲気は安心した。
「少し席を外します。もし誰か来たら四半時ほどで戻ると伝えてください」
「分かりました」
障子を閉めて出ていった新野先生の足音が遠ざかっていく。
私は「うーん」と一つ伸びをした。
入れ替わるようにして遠ざかっていった足音と逆方向から足音が近づいてきた。
ズズズと障子を引いて入ってきたのは、二十代ぐらいの黒い忍装束を纏った男性だった。
「あ、新野先生ならたった今出ていかれて、四半時程で戻るそうです」
四半時が一体どれぐらいの長さなのか分からない。
が、きっと言えば分かるだろうと思い、そのまま伝えた。
「そうなんですね。では私がいつもの薬を貰いに来ていたとだけ伝えてもらえますか?」
「あ、えっと・・・」
「すみません。名乗ってませんでしたね」
優しそうな笑顔を浮かべた男性が私の前に正座した。
「土井半助と申します。一年は組の教科担当をしています」
「土井先生・・・。私は名字名前です。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げると土井先生も下げてくれた。
いい人そうだ。
「記憶が無いなんて大変ですね。お辛いでしょう」
気遣うように眉を下げた土井先生に対して、私はハハ・・・と乾いた笑いが出そうになるのを飲み込んだ。
「私も実は記憶喪失になったことがありまして」
「え!?そうなんですか!?」
実際に記憶喪失になったことがある人なんて初めて出会った。
「ええ。そのときは随分と人格も変わってしまって」
「二重人格・・・」
「だから貴方の辛い気持ちはよく分かります」
い、言えない!!!
これではもう記憶喪失のフリしてますなんて絶対言えない・・・。
「いえ、でもそんなに辛い感じはしなくて・・・戸惑いの方が大きいです。分からないことが多いので・・・」
「困ったことがあったら言ってください。力になります」
「えっと・・・」
「何かありましたか?」
せっかくこう言ってくださっているから、と私は勇気を出して聞いてみた。
「四半時って一体どれくらいの時間ですか?」
******************
驚いた。
名前さんは四半時さえ分からないのか。
驚きで反応が遅れた私に彼女は両手を前に出して横に振った。
「すみません!こんな簡単な質問を先生にしてしまって。やっぱり後で仙蔵くんにでも聞いてみます」
「あ、いえ。驚いただけです。今は午の刻ですが・・・こういった刻の読み方は分かりますか?」
そう聞いたらフルフルと首を横に振った。
「では、そこから教えますね。まず一日を十二で区切って・・・」
一通り教えた後、名前さんは首を傾げた。
「え?じゃあ何時何分とかそういう概念は無いってこと・・・?」
独り言を呟く彼女を不思議な思いで見つめた。
「何時何分・・・ですか?」
「あっ!」
しまった!という顔でパッと手を口に当てた。
「えっと・・・えっと・・・そう!私の記憶にある時の数え方とは違うなぁ~って思っただけです。でもきっと私の記憶がおかしいんです!あははは」
パタパタと顔を仰ぐ手をぎゅっと握って目線を合わせた。
「教えてください、貴方のその記憶を」
保健室には基本的に新野先生が在中しており、時折足の様子を見てくれたり、世間話をしてくださったり。
新野先生の柔らかな雰囲気は安心した。
「少し席を外します。もし誰か来たら四半時ほどで戻ると伝えてください」
「分かりました」
障子を閉めて出ていった新野先生の足音が遠ざかっていく。
私は「うーん」と一つ伸びをした。
入れ替わるようにして遠ざかっていった足音と逆方向から足音が近づいてきた。
ズズズと障子を引いて入ってきたのは、二十代ぐらいの黒い忍装束を纏った男性だった。
「あ、新野先生ならたった今出ていかれて、四半時程で戻るそうです」
四半時が一体どれぐらいの長さなのか分からない。
が、きっと言えば分かるだろうと思い、そのまま伝えた。
「そうなんですね。では私がいつもの薬を貰いに来ていたとだけ伝えてもらえますか?」
「あ、えっと・・・」
「すみません。名乗ってませんでしたね」
優しそうな笑顔を浮かべた男性が私の前に正座した。
「土井半助と申します。一年は組の教科担当をしています」
「土井先生・・・。私は名字名前です。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げると土井先生も下げてくれた。
いい人そうだ。
「記憶が無いなんて大変ですね。お辛いでしょう」
気遣うように眉を下げた土井先生に対して、私はハハ・・・と乾いた笑いが出そうになるのを飲み込んだ。
「私も実は記憶喪失になったことがありまして」
「え!?そうなんですか!?」
実際に記憶喪失になったことがある人なんて初めて出会った。
「ええ。そのときは随分と人格も変わってしまって」
「二重人格・・・」
「だから貴方の辛い気持ちはよく分かります」
い、言えない!!!
これではもう記憶喪失のフリしてますなんて絶対言えない・・・。
「いえ、でもそんなに辛い感じはしなくて・・・戸惑いの方が大きいです。分からないことが多いので・・・」
「困ったことがあったら言ってください。力になります」
「えっと・・・」
「何かありましたか?」
せっかくこう言ってくださっているから、と私は勇気を出して聞いてみた。
「四半時って一体どれくらいの時間ですか?」
******************
驚いた。
名前さんは四半時さえ分からないのか。
驚きで反応が遅れた私に彼女は両手を前に出して横に振った。
「すみません!こんな簡単な質問を先生にしてしまって。やっぱり後で仙蔵くんにでも聞いてみます」
「あ、いえ。驚いただけです。今は午の刻ですが・・・こういった刻の読み方は分かりますか?」
そう聞いたらフルフルと首を横に振った。
「では、そこから教えますね。まず一日を十二で区切って・・・」
一通り教えた後、名前さんは首を傾げた。
「え?じゃあ何時何分とかそういう概念は無いってこと・・・?」
独り言を呟く彼女を不思議な思いで見つめた。
「何時何分・・・ですか?」
「あっ!」
しまった!という顔でパッと手を口に当てた。
「えっと・・・えっと・・・そう!私の記憶にある時の数え方とは違うなぁ~って思っただけです。でもきっと私の記憶がおかしいんです!あははは」
パタパタと顔を仰ぐ手をぎゅっと握って目線を合わせた。
「教えてください、貴方のその記憶を」
