自称ペリカン便
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バッサバッサ、バッサバッサ
とててててて、バッサバッサ······
と、カフェ内で一人の女の子が両腕をばたつかせていた
「············」
『今度こそ!』
両腕をバッサバッサと動かしていた女の子はそのまま駆け出し飛ぶよう跳ねた
実際女の子は人間なので飛べずに床に顔面からダイブした
『うきゅっ!!』
ベチッ···と音を立ててそのまま地面に倒れ込む
「また痛そうな音したけど大丈夫なの?」
「大丈夫かいリンちゃん、立てる?」
マスターのしろくまと常連客の1人であるペンギンに声をかけられる女の子
女の子はゆっくりと立ち上がり、とぼとぼとカウンター席に座る(自力では座れないからしろくまさんに手伝ってもらった)
『今日も飛べませんでした······いつになったらおっとうとおっかあみたいな立派なペリカンになれるのです······』
「立派なペリカンって、そもそもリンちゃんは人間なんだから飛べないのは当たり前だと思うんだけれども」
『人間でも出来るですもん!努力すれば必ずあいきゃんふらい!出来るですもん!』
うー!と唸る女の子、名前はリン
ここのカフェや動物園に食材やら小さい備品などを運ぶ運送業者をしている
「リンちゃん、いつものでいいかな」
『はい!いつものでお願いしますです!』
「ブラックコーヒーのミルク多めってそれもはやカフェラテだよね。しろくま君、僕もカフェモカお代わり」
『ところで今日は笹子お姉ちゃんは居ないのです?お休みなのですか?』
「うん、笹子さんは今日はおやすみ」
お待たせと言いながらリンの前にカフェラテを置くしろくま
『ありがとうございますしろくまさん!わぁっ、今日のラテアートはペリカンだぁ!』
「そのラテアート少し自信作なんだ」
「相変わらず器用だよねしろくま君」
『このラテアートおっとうとおっかあに見せたいです!持ち帰ってもいいですか!?』
「持ち帰ったらコーヒー冷めちゃうよ。写真でなら2人も見れると思うけれどカメラ持ってる?」
『カメラ!その手がありましたです!』
リンはハッとしたように手提げカバンの中からごそごそと何かを探しお目当てのものを取り出す
『カメラあったです!』
「ガラケーだ。リンちゃんはガラケーは大丈夫なの?」
『本物の皮じゃないので大丈夫です、革製ならアウトです』
「そもそも革製の携帯があるかどうかだけどね」
パシャパシャとガラケーでラテアートを撮っていく
「御両親は元気なの?」
『はい!今日も今日とてペリカン便として各国飛び回ってるです!私もいつか世界中を飛び回りたいです······今の私はここと近くの動物園、ぐりずりーさんの所にしか飛べないので······』
「飛び回ると言うより自転車で爆走だよね」
『盗んだ自転車じゃないのでご安心を!』
「でも僕は、リンちゃんが荷物届けてくれるのすごく助かるよ。」
助かるけれど小さい女の子に運ばせる荷物の量じゃないけどね······と内心で思うしろくま
荷物を運ぶと言っても女の子が自転車で運ぶとなると運べる量が限られてくる
それにもかかわらず目の前の少女は大量の荷物を毎日運んできてくれる(多すぎて少々遅れることはあるけれど)
『私もしろくまさんみたいに筋肉付けるべきでしょうか······そしたらお空も飛べますか?』
「筋肉付けたら親御さん鳴くんじゃないかな」
『うむむむ······』
うーん、と悩みながらブラックコーヒー(ミルク多め)を飲む
『美味しい···しろくまさんの淹れてくれるコーヒーは優しい味がするから好きです』
「そう言って貰えると作ったかいがあったね。ペンギンさんもお代わりだけじゃなくてリンちゃんみたいに褒めてくれてもいいんだよ」
「えぇ〜、そんな事を急に言われてもな〜」
『ペンギンさんは誰かを褒めたことないから言葉浮かばないんです?』
「パンダくん並とは言わないけれど君も大概僕に失礼だよね」
『運送業者やってる以上嘘はつかないって決めてるです』
「ストレートすぎる言葉は時として相手を傷付けるって覚えてくれると嬉しいな」
『なるほど』
ペンギンの言葉をメモするリン
『オブラートに包んで言えば大丈夫です?』
「時と場合と言葉によるかな」
『ペンギンさんかっこいいー(棒読み)』
「棒読み過ぎない?」
小さく笑みを浮かべながらペンギンとリンのやりとりを見ているしろくま
しろくまの視線はカフェ内の時計に向けられた
時刻は午後5時、まだ明るい時間とはいえこのまま幼いリンをカフェ内に居させたら帰りが遅くなり、道も暗くなってしまう
「リンちゃん、そろそろ帰る時間じゃないかな」
『あっ、もうそんな時間ですか······』
時刻を見てわかりやすいくらい寂しそうに眉を下げるリン
『まだ帰りたくないです···』
「今帰らないと暗い道の中帰らないと行けなくなるよ」
『それはいやです······』
「途中までペンギンさんと一緒に見送ってあげるね」
「え、僕も?」
『それじゃあ、また来ますです』
「気を付けてね」
「これ僕まで来る意味あったのかな」
夕暮れに染まる道を歩く3人
『次こそは閉店まで居るつもりで来ますです』
「リンちゃんそれ、毎回言ってるよね」
『毎回じゃ足りないくらいです』
自転車に乗るリンの頭を撫でるしろくま
頑張れと言うふうにリンの足をぽんぽんするペンギン
この行為も毎回帰る時におこなわれている
『······しろくまさんは無理だろうけれどペンギンさんならお持ち帰り出来そうです』
「て言ってこの前僕をお持ち帰りしたよね」
『あの時はおっとうとおっかあに元にいた場所に置いてきなさい言われましたですよ』
と言いつつもペンギンを抱っこして前カゴに入れようとする
「なに自然に僕を持ち帰ろうとしてるの!?」
『バレた』
「そりゃバレるから!何バレないと思ったみたいな顔してるのさ!」
『ペンギンさんチョロいから大丈夫かなって······』
「最後の最後で貶すのやめてくれる!?」
「リンちゃん、ペンギンさんと遊んでないでそろそろおうちに帰らないと」
「なんでだろう、僕が悪いみたいに聞こえる」
『それじゃあ、また明日です』
「うん、また明日」
「リンちゃんまたね」
名残惜しそうに二人を見てから自転車を漕ぎ出す
また明日、その言葉を胸に少女は家まで帰っていく
二人は少女の姿が見えなくなるまでその姿を見送った
ブラックコーヒーは優しいお味
(ブラックコーヒーはしろくまさんみたいに優しいお味だから大好き)
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