色づいた世界で、君と
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昨日は壊里ちゃんと轟くんと一緒にトランプをして、壊里ちゃんは楽しんでくれたし、轟くんの笑顔が見れて何だか良い日だったな、なんて考えていた。
「・・・葵ちゃん。なんか良いことあった?」
『ん?』
更衣室でお茶子ちゃんそう言われて、昨日の出来事を話す。
「へぇ!轟くん笑うんやぁ!」
『うん!本人は笑ってるのあんまり分かってない感じだったけどね。でもこうやって、少しずつ患者さんの気持ちとかも分かってくれればって思ってさ。』
「そうやねぇ。前爆豪くんに怒られてたって言ってたもんな。」
『そうそう!爆豪くんに怒られずに済むかなって思って。』
そんなことを話しながらナースステーションへと向かっていると、轟くんが入院している鈴木のおじいちゃんに話掛けられていた。
「昨日検査結果が良くなっとると言われたんだが、本当なのかい?」
「検査結果ですか?」
「おぉ。わしゃ数字は小さくて読めんからな。先生の言っていることが本当だとは思うが、昨日の検査結果の話もあっという間に話するもんだから、分からんくてな。それにもしかするとわしに気を遣っとるのかもしれんだろ?」
「はぁ。」
「だから君に聞いておるんだが、どうだろうか?」
「昨日の検査結果・・・、ちょっと待ってもらえますか?」
「おぉ。頼んだぞ。」
そう言って、私のところにやってきた轟くんは、鈴木さんに本当のことを言っていいのか確認してきた。
先生が言っていることは正しくて、本当に回復傾向にある鈴木さんだけど、どうやらとても心配性のようで、自分に嘘を吐かれているんじゃないかって思っているらしい。
だから、安心させてあげるつもりで轟くんに本当のことを言ってあげていいよ、と言うと、彼は「分かった」と告げて、鈴木さんのところに戻る。
そして、鈴木さんが酷く納得するまで細かく説明していたから、鈴木さんは満足して病室へと帰って行った。
その様子を私の隣で見ていたお茶子ちゃんは「なんか変わったね。」って笑いながら言うから、なんだか私も嬉しくなっていた。
『轟くん。』
「ん?一ノ瀬か。」
『さっきの、良かったよ!ちゃんと前に言われたこと実践出来てたし、鈴木さんとっても満足そうだった。』
「・・・そうか。なら良かった。」
そう言って穏やかな顔をする轟くんは、アンドロイドだけど、気持ちは私達とそんなに変わらないんじゃないかなって思う。
機械仕掛けなのかもしれないけど、その仕掛けはきっと人間とそんなに変わりないものなのかもしれない。
だって彼は彼なりに考え行動しているから。
アンドロイドは機械だなんて爆豪くんは言っていたけど、それだけじゃないんじゃないのかな。
「・・・そういえば、今日午後から何か打ち合わせがあるって言ってたのは何なんだ?」
『あ!そうそう!この時期に毎年入院患者さん達と催し物をしてるんだけど、その打ち合わせ。』
「催し物?」
『ずっと入院している人達とかは、季節感も無くなっちゃうの。だから、季節毎のイベントをして、みんなに元気を出してもらうって企画。』
「そんなのがあんのか。」
『で!今回は何と!私と轟くんが、率先してその企画を考えようってことになったから、轟くんもよろしくね!』
「・・・俺にそんな大役出来んのか?」
『大丈夫大丈夫!去年どんなことしてたかとか資料もあるから。それに別に何をしなきゃいけないってこともないから、みんなを楽しませれること考えよう。』
「・・・そうか。分かった。」
そうして、打ち合わせの時刻となり、私は去年どんな催し物をやったのか写真や病院内の掲示物を持ってきて、轟くんに説明する。
すると轟くんは何か難しい書物でも読んでいるかのような難しい顔をして、その資料達と睨めっこしてるから、感心する反面、可笑しくなってくるから不思議だ。
今日の打ち合わせは轟くんにどんなことを今までやっていたのかってことを共有する時間だったから、次回の打ち合わせの時に、何をやるのか各自考えてこようということになり、その日は通常業務に戻った。
そして数日後、各自考えた案を持ち寄る日。
『じゃあ今日は考えて来た案を発表して、ある程度絞り込んでから、他の看護師のみんなに多数決を取るって感じで!』
「あぁ。分かった。」
『じゃあ轟くんが考えて来た案を先に聞こうかな?』
「俺が考えて来たのは・・・」
そうして轟くんが発表してくれた案は10を余裕で超えていた。
大体1つか2つ、多くても3つくらいだろうと考えていたけど、沢山考えて来てくれている彼は業務を終えてから、色々検索したりしてたんだろうと思うと、何だか心があったかくなる。
「・・・後は、春だから花見とかが良いんじゃねぇかって思ったんだが。」
『・・・。』
「・・・ワリィ。もしかして言い過ぎたか?」
『えっ!?ぁっ・・・ううん!そんなことないよ!』
何だか嬉しくて彼の言うことに耳を澄ましていたら、いつの間にか返答するのを忘れてしまっていたみたいだ。
『轟くんが、そこまで色々考えてきてくれたから、本当に嬉しい。』
「一ノ瀬が嬉しいのか?なんでだ?」
『んー・・・なんていうんだろう。親心的な?』
「でも一ノ瀬は俺の親じゃねぇよな?」
『・・・まぁそうなんだけどね。』
私は轟くんの親じゃないのに、親心と言ったもんだから、轟くんは少し困り顔。
そんなところも何だか可愛いなんて思ってしまうから、本当になんていうかやっぱり親心なんだろうななんて考えちゃったけど、これ以上は彼が本当にどうすれば良いか分からなくなるだろうから、私の胸の内に仕舞っておくことにした。
数日後、私と轟くんで看護師のみんなに催し物の多数決を取って、院内花見を行うことになった。
外に行けない人達のために、自分達で段ボールや色紙を使って桜の木を作る。
そして、その周りに出店のようにブースを作って、ヨーヨー釣りや、射的を行えるようにすることにした。
これから本番までは業務時間後に、各自少しずつ準備を進めていって、迎えた本番当日。
病棟の中央に位置する談話室隣の広場の中央に手作りの桜の木を置いて、周りに出店をセッティングしていく。
準備を終えて、患者さん達を連れてくると、みんなが桜の木を見上げて、笑顔になっていた。
『いらっしゃいませーっ。・・・あ。壊里ちゃん!洸太くん!』
「一ノ瀬さん、ヨーヨー屋さん?」
「一ノ瀬、ヨーヨーやらせろよ。」
『うんうん!どうぞどうぞ~っ。』
私がヨーヨー屋さんをしていると、壊里ちゃんと洸太くんが来てくれて、何だかんだ必死にやっている2人を見ると、可愛くて、嬉しくて自然と笑顔になってくる。
「あ・・・。ヒモ切れちゃった。」
『あ!じゃあもう1つどうぞっ。』
「おぉ!でけーの釣れた!」
『おぉっ!洸太くんさすがっ!』
「子供扱いすんじゃねぇ!」
『え・・・だってまだ子供・・・』
「うるせぇ!」
手術を無事終えた洸太くんはもうすぐ退院だ。
爆豪くんが手術しただけあって、術後経過も良好で、彼の腕前には流石の一言。
一緒にオペに立ち会ったけど、2時間以上かかると言われていたオペは半分程度の1時間越え程度で無事終了。
口は悪いけど、腕は確かな彼の元には全国から沢山の患者さんが集まって来る。
そこはやっぱり自分でも言ってるけど、彼の腕が超一流だからで、尊敬するところだ。
「・・・オイ、クソガキ。もう違和感ねェンか?」
「お!バクゴー!」
「・・・先生付けろや。」
どうやらあの後、洸太くんは爆豪くんに懐いてしまったらしく、こうして時折2人で会話しているところを見かける。
何だかんだ、爆豪くんも洸太くんを無視せずにちゃんと相手してるから、その様子が微笑ましい、なんて思っちゃうことは内緒だ。
「なぁ、一ノ瀬。あの半分野郎って今日来てねぇの?」
洸太くんにそう言われて、誰のことだろうって考える。
『はんぶんやろう?』
「うん。なんかバクゴーがそう言ってた。」
『え・・・。爆豪くん、誰のこと?』
「ア?あの機械野郎だろが。」
髪の毛が赤と白の半分ずつだからか?なんて考えるけど、その呼び方を洸太くんに教えるのはどうだろうと思いながらも、轟くんの姿を探す。
確か、轟くんは射的コーナー担当だったはずなのに、そこに轟くんはいない。
どこにいったんだろう、と考えていると遠くの廊下に轟くんの姿を見つけた。
そして入院している男の子にと目線を合わせるかのようにしゃがんで何かを話しているようで、少し気になった。
『あ・・・、ちょっと待っててくれる?』
「お・・・おう。」
洸太くんにそう言って、私は轟くんの元に駆けつけた。
「・・・みんな友達出来てるのに、僕だけ友達いないんだ。」
「・・・それでこっちに逃げてきたのか?」
「・・・うん。」
「友達作りたいんじゃねぇのか?」
「そうだけど・・・。僕、学校でも友達出来ないし、病院でも友達なんて出来る訳ないよ。」
「・・・んなことねぇと思うけどな。」
「知ったようなこと言うなよ。お前に何分かんだよ。」
「・・・確かに。俺にも友達はいねぇ。」
「・・・そうなのか?」
「あぁ。だから、もしお前が良かったら俺と友達にならねぇか?」
「お前と?」
「・・・だめか?」
「ううん。・・・嬉しい。」
「そうか。」
何かまずいことを言ったら止めようかと思っていたけど、要らぬ心配だったようだ。
轟くんに手を引かれて、男の子は嬉しそうにイベントに参加するから、私もつい嬉しくてニヤニヤしちゃっていたようだ。
「・・・オイ。」
『へっ!?』
「・・・半分野郎。何かしてたンか。」
『え?あっ・・・ううん!寧ろ良いことしてた!』
「ア?いいことだ?」
『爆豪くん、最初轟くんのこと、機械だなんて言ってたけど、きっとそれだけじゃないと思うよ。』
「・・・どういうこった。」
『ふふふ。見ててあげて。彼も彼なりに考えて、ちゃんと成長してるから。』
私がそう言うと爆豪くんは「とりあえず俺の邪魔すンなっつっとけ。」と言い残して、広場から去って行った。