元拍手十一月
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ハロウィンと言えば元はケルトの祭事である。……と、いうのは存外有名な話で、自慢げに述べるまでもなく大抵の人が知っている。しかしながら、それでも多くの人々は10月の最終日を迎える度に、『Trick or treat』と戸口を叩き、夜の街を賑やかす。そこには古代ケルトへの思い入れは特に無く、ただ仮装をして悪戯か菓子かと問うことにこそ意味があるのだ。
反復行動による固定化は中々に馬鹿できない。現在に置けるハロウィンという言葉の正しい意味合いは既に、『悪戯から逃れるために菓子を用意する日』なのかも知れない。大勢の人々による意識統合は得てして新たな慣習法を生み出すものである。身近な話で例えるならば、パワーストーンなんかとても分りやすいと思う。知人曰く「あんなものただの石」らしいが、実際昔はただの道端の石ころだったに違いないのだが、それでも今や、美辞麗句で飾り立てられショーウィンドウに並ぶソレらは時としてただの石には身に余る効力を購入者にもたらすらしい。これは個人的な見解になるが、それを一言『偽薬効果』で片付けてしまうのには無理があると思う。人々の意思というものは時として壮絶に凄まじく、神にも勝る現象を引き起こしてしまう事があるのである。
「…………で?」
十月の三十一日、ではなく。
一日明けた霜月の初め。鼻の上に乗っかる掛け慣れない眼鏡を持て余しながら述べた、オレのなけなしの見識をその人は容赦なくぶった切る。伺い立てるまでもなく不機嫌に染まったその瞳は金に鈍く輝いていて、今にも暴れ出しそうだった。
「で、と、……言われても」
いつもは見上げている筈の、その鋭い眼光を、オレは見下ろす。
細い肩とそこで揺れる緑の髪、華奢な手足……鈍色の瞳だけが健在で、他は見る影も無いほどに変化しきった元軍人を。
──まぁ要するに何が言いたいのかといえば、慣習を甘く見ると痛い目に遇う、という話である。
( Trick, trick, and Trick ! )
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