心中
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苦しい。
喉が勝手に絞まって、肺が酸素を受け付けない。
そう、思い込んでいるだけなのだろうけど。
シフティもリフティも、いつものようにどうせ生き返る。だから大丈夫だ……とは思えなかった。
この呼吸困難の原因は本質的にそこには無い。
ふらふらと家を彷徨い出て、正直、まっすぐ歩けてるのかさえ分からない。どこにもぶつからないから、きっと歩けているのだろうという程度の事しか。自分がどこに向かっているのかすら分かっていない。
最初は零を追おうとした。
しかし既に姿も見えず、どこに行ったのかも見当がつかない。
それに、零はオレにはあまり会いたくないだろう。……何と無く分かるのだ。零は多分、オレの顔も見たくないと思ってる。
オレは、一体どうしたら──
「……ぃ、おいってば!!」
「……あれ」
どうやら呼びかけられているらしい事に気付き、殆ど惰性で動いていた足を止める。顔を上げれば、目に入るのは明るいオレンジ色。
「ハンディ?」
仕事の帰りなのか仕事中なのか、工具箱を肩に微妙な表情で見下ろしてくる。
「あれ、じゃない!大丈夫かお前。さっきからずっと呼んでるのに」
むす、と一瞬顔を顰めたかと思えば、ふぅ、と溜息を吐いたりする。
「なんか、あったか?」
そしてそっぽを向きながら、気遣わしげな声で言う。
そんなハンディの姿に、ああ、と納得する。
「ハンディ、知ってるんだ」
零や、フリッピーたちのことを。
零が、オレのことをよく思っていないことも。
確信して言うと、髪と同じオレンジの瞳は少しの躊躇いの後にこちらへ向けられる。
「知ってる。ていうか、さっき聞いた。同じ顔が双子以外に居たら驚くだろうってランピーが」
「そう、か」
そう呟いて、……呟いた後、言葉が出なくなってしまった。
ぼんやりと、無言のままであの家を作ってくれた大工さんを見上げた。
ぜんぶ、知ってるんだ。なら多分、ハンディは心配してくれてるんだろう。でもそういう人に、なにを言えばいいのか、思いつかない。脳が勝手に考えることを止めている。
心配しないで、と明るく振舞うべきだろうか。たった三日間だけど零をよろしく、と傲慢に言うべきだろうか。それとも──
そうやって無理やり頭を働かせれば、嫌でも辿り着くのはオレのせいで転がる双子の死体。
──それとも、いっそ放って置けと。
オレたちに、オレに構わないで欲しいと、突き放せばいいのだろうか。
「……イチ」
ただただ開きっぱなしで、何も映っていなかった目の焦点を合わせれば、ハンディは遣る瀬無い面持ちで、お前が何考えてるのか知らないけど、と前置いた。
「そんな死人みたいな目、するな」
死人みたいな、目。
死んだみたいな、目。
殺されたような、目。オレはそんな──被害者面をしていたのか。
「別に死んではないけど、」
確かに少し、
「しにたいきぶんだ」
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