遠足
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この街に来て暫く。
──そして新しい家で寝起きし始めて二日目。
オレの一日は残念ながら平和には始まらなかった。
がっしゃあぁあん!!と、
とても耳に優しいとは言い難く、原因を探るのを先延ばしたいような騒音で目が覚める。
同時に九死に一生を得たらしい。
「……」
左耳の数センチ横。枕に突き刺さった鋭利なガラス片。
眠気は飛んだ。が、腐っても寝起きなので言葉を発せないままぼんやりと窓が割れていることを確認する。
そして割れた窓の向こう側で 『あ、やっちゃった』 みたいな顔をしているひょろ長い男の存在も確認する。
「らんぴー」
「あ、やっちゃったっ!」
予想通りのコメントをしながら近寄ってくる。
硝子の無くなった窓枠を無理矢理に開く。どうやら晴れらしい今日の天気を背景に、青い髪に金色のメッシュが揺れていつ見ても変わらない笑顔をにこにこと浮かべていた。
「やっちゃった、じゃないよ。窓、割れたしどうするの」
「割れちゃったねぇ。でも大丈夫だよ、これくらいならいつものことだからハンディが直してくれるよ?」
直してくれるよ?でもない。
またハンディか……小さくてもいいなら、と凄い速さでこの家を建ててくれた大工。まだ代金支払いの目処が立ってないのに。この歳で家のローンを組むなんて、普通じゃない。と、思う。多分。
ぼうっと考えていれば突然日差しを遮る影が落ちた。いつの間にかサッシに頬杖をついたランピーが面白そうに人の顔を覗きこんでいる。
「なに」
「イチちゃんって、無口だよねえーっ──て思ってたんだけど」
だけどなに。
「ハジメマシテの時より喋るようになったなあって」
オレは夏休みの朝顔か何かだろうか。観察されている。
「でぇも、まだ頭で考えてること全然口に出してないでしょ!そんなことじゃ誰かさんみたいに誤解されちゃうよう?大人しい子だって」
「誰かさん……」
誤解、ということはオレは大人しい子じゃなかったらしい。初耳だけど。
大きい手と長い指が伸びて、意味もなくオレの額を突いてくる。
そもそも。
「人に会わないし、誤解もされない」
「……イチちゃんさあ、もしかして全然外出てない?」
「ない」
「うん、そっか」
ランピーはそのままへらっと笑った。
「それはとても良くないねぇ」
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