封鎖
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フリッピーが歩いてきた。
道の向こうから。
オレはそろそろ買い物に行こうかと出かけたところだったので少し悩んだけれど結局はそのまま進む。するとフリッピーは何だか嬉しそうに口角を上げると黙ったまま横をすれ違い、通り過ぎる。驚いて振り返ると、フリッピーも緑の眼をこちらに向けていたようで、慌てて逸らした。
オレは呆然としながらも呟いた。
「……コンタクトレンズ?」
次の瞬間オレはすぐ横の路地裏に引きずり込まれた。
「なっんで!わかんだよ!このっ……あ゛ぁあああクッソッッッ!!」
「やっぱりこっちのフリッピーか」
コンクリートに何故だか刺さるナイフをオレの耳横に突き立てて、いつもは金瞳の筈のフリッピーは両手で頭を抱えてしゃがみ込んだ。くしゃりと若草の髪が跳ねる。
その様子を見るに、どうやらあっちのフリッピーのフリをしたかったらしい。
双子にも言ったのだが、いくら見た目が同じでも、内面や雰囲気で違いぐらい分かる。さすがに間違えたりはしない。
「ありえねぇありえねぇ本ッ気でありえねぇえ……!」
──あれ?
フリッピーは叫びながら地面を殴りつけて、ぶつぶつと呪いの言葉を吐いているが、一向にナイフを抜こうとしない。経験から言わせて貰えばまだ腰にはもう二、三本獲物が収まっているはずだ。実はさっきからいつ刺されてもいいように身構えていたのだが。
「あの、さ」
「あぁああ゛!?んだよクソガキ!!」
機嫌悪いにも程があるだろう。
「殺さないの?」
「殺して欲しいのか!」
「ほしくないけど」
いつもならそんなこと訊きすらしない癖に。と見つめていると、フリッピーはこれ以上ないくらいに眉間に皴を寄せている。薄暗い路地裏で、やけに明るい発色の緑色が妙に違和感だ
。
「……てめぇには関係ねぇよ」
と、言う割りにには思いついたようにオレを見て「殺してぇ」と呟いている。かなり危ない人だ。何か、事情があって今は殺したくてもオレを殺せないらしい。
「何かあったの?」
「あぁ?」
金目のフリッピーは凄い勢いで立ち上がった。
「ねぇよ。詮索してんじゃねぇぞクソガキ」
「……そう」
無いというのなら無いのだろう。ということにしておこう。特に意味もなく刺さっているナイフに手を置いて、オレは天を仰いだが空は見えなかった。隣り合った建物の屋根同士が重なり合っているからだ。通りで昼間から暗いと思った。
「もういい明日殺す明日殺してやる殺す」
ブツブツと物騒なことを言いながら、フリッピーはオレに背を向ける。その後を追うべきか、事情の込み合っていそうな今日は大人しく見送るべきかオレは悩みながら手を伸ばす。
そしてその瞬間、辺りに轟音が鳴り響いた。
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