知識
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「どうです、何か分かりました?」
「……解離性同一性障害の場合、主人格は別人格のことを認識しないらしい。フリッピーはどうなってるんだろう」
「残念ながら、僕はフリッピーさんの治療は受け持った事が無いのでなんとも……ところでイチさん」
「なに」
「趣旨ずれてませんか?」
「うん」
フレイキーの髪の毛を括った次の日、オレは図書館に居た。というか、連れてきてもらった。眼鏡をかけたスニッフルズ少年にだ。正直、一人だと、公園と家との往復ぐらいしか自信が無い。
書庫兼閲覧室だという奥まった部屋に案内して貰い(その際スニフは「あんまり騒ぐと殺されちゃうんで気をつけてください」と言い捨てて出て行った。)何となく居心地も良く、しばらく過ごすと、スニッフルズは分厚い本を何冊か抱えて帰ってきた。
『うーん、じゃあ昔よく本を読んでたんじゃないかな?』
公園からの帰り道、偶然会ったランピーにオレの中にある『知識』の話をしてみると、そう言った。昨日は白衣を着ていなかったので医者には全く見えなかったが、仮にも医師免許を持っているわけだし、オレの主治医はランピー以外に居ないので、オレはその意見を尊重することにした。
そして何か思い出す手掛かりになりはしないかと、図書館までわざわざやってきたのだった。
「なら結局何も分からなかったんですね?」
積み上げた中から一際重そうな本を一冊取り上げながらスニフは言った。
「いや、そっちの棚のを読んだんだ」
「は?全部ですか!?速読ですね!」
「流し読みだし、全部って訳じゃ……まあ、とにかく」
オレは目を丸くするスニッフルズを宥めると、
「書かれてる内容に覚えはあった」
「読んだ事があると?」
「……よく分からない。正しく言えば、本に書いてあった内容を『ああ知ってる』と思う事が何度もあったんだ」
スニフはぱたんと本を閉じた。どうやらオレの記憶探りに本格的に付き合ってくれるらしい。
「どこかの国の歴史とか、偉人伝とか、そんなのは特に知ってるのが多かった。逆に、単語の意味とか変わった文法なんかは読めなかったし……だからその本を読んだ事があるかと訊かれれば自信は無い」
「ノンフィクションだけなんですか?イチさんが知っている、というか持っている知識は」
「……いや、そんな事はない。多分」
「例えば?」
ずれてきた眼鏡を直しながらスニフが聞いてきた。
今の話題に全く持って関係ないが、スニッフルズは歳の割には小さい方だと思う。カドルスもだけど。
「例えば、今日読んだ中にはなかったけど、──女の子がウサギを追いかける話とか」
言ってしまえば、少し胸が躍るような痛むようなどっちつかずの気持ちになる。よく分からないが
「キャロルですか?」
「は、きゃろる?」
「……ちょっとどんな話か言ってみてください」
「確か午後が金色なんだ」
「そこからですか」
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