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こんなの見てて楽しいか?
それは前に、今住んでいる家が造られている時にも訊かれた事だが、これが『楽しい』という気持ちなのかどうかオレには分らない。だから楽しいのかどうかは分らなく、でもどうしてかいつまでも眺めていられるので意味も分からず頷きを返した。──歪んだ窓枠を修理している大工に向かって。
「ほら、直ったぞ」
ずっと見てたから言われなくても分かるんだけど、一応近寄ってみる。
まっすぐな枠組みに嵌まったガラス。昨日壊れた窓は完璧に直っていた。ちょうど家の前を通ったので頼んでみたのだが、相変わらず仕事が早い。
「ありがとう……ハンディ」
「ああ、気にしなくていい」
包帯まみれの両腕を使わないで、器用に工具をしまっていくオレンジ髪の青年。歳はオレと一つしか違わないはずなのに、なんか立派だ。
「代金は家のと同じで貸しでもいい?」
そう、この家を作ったのはハンディだ。そしてその金をオレはまだ払っていない。
「いや、別にいいよ」
「別に」
「窓。タダでいい」
「……」
そんな無茶な。
「ははっ、黙るなよ。大した作業でもないし、ついでだからな」
「ついでって、ああ」
ああ。
一笑した次の瞬間に、よく見る顰め面になる青年に同じく納得がいった。オレとハンディは揃って隣家を眺める。アレはモールさんの家なんだけど、
「昨日半壊してたからな……」
ハンディがぼそりと呟く。勿論今は直っている。呟いた本人があっという間に直してしまった。その後オレの家の前を通りかかったのだ。仕事が早い。
……昨日。
よりによって寝室の窓が割れてしまったので、本当はモールさんの家に行こうと思っていた。元々、家が出来るまでオレはモールさんの家のソファを間借りしていたのだ。だから昨日もそうしようと思って、家まで帰ってきたら隣家にはトラックが突っ込んでいた。
──生き返るのは知ってるから、焦ったりはしなかったけど。寝床を失ったオレは結局台所で寝た。
「ていうかアレ、ランピーのトラックだろ。何があったんだよほんとに」
呆れ果てながら言うハンディ。実は直前まで加害者と一緒にいたのだが、本当にあれから何がどうなってトラックが突っ込むのかオレにはわからないので余計なことは言わないことにした。
ハンディが片付けを終えるタイミングを見計らって、せめてものお礼に魚を数尾渡しておく。その手で料理が出来るのかは不明だが喜んでくれたようなのでよしとする。自分で釣ったものではないが、この家にはそれくらいしか渡せるものがなかったので勘弁してもらおう。
肩に工具入れと、魚の入ったバケツを担いで、ハンディは颯爽と帰っていった。いや、まだ働くのかもしれないが。
一人で外にいても特にすることもない。
今日は一日部屋で寝ていようかと家に入ってカーペットにへたり込んだ瞬間ノックの音が響いた。
ドアを開ける。
「よっ」
魚を釣ったラッセルがいた。
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