05 過去 -前編-
name change .
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
みんなの視線が集まる。
大丈夫。
あたしは、一人じゃないよね…?
『あたしは…、…っ』
そう言いかけて、
章大の手を握った。
怖い…っ
この真実を話したら、
どうなるの?
章大は、あたしを軽蔑するかな…?
怖い…
怖い、怖い…っ
いつのまにか、
体がかすかに震えていた。
悟られまいと、
章大の手を放そうとしたら、
逆に、
ギュッて握り返された。
「…ちい、
…僕、ここにおるよ?」
心配そうに、
でもまっすぐあたしを見つめてくれる
大好きな瞳。
大丈夫。
返事の代わりに、
あたしもギュッと握り返して、
章大の目を見て、頷いた。
深呼吸して、息を整える。
大丈夫。
全部話し終わった時、
あたしはやっと、前に進めるんだ。
この手と一緒に…
『あのね、章大。
あたし、実は、光一さ…、光ちゃんと、
初対面じゃないんだ…』
ー2年前ー
『…あ~あ、
やっぱり雨じゃん…
お天気おねーさんの嘘つき…。』
友だちを訪ねてきた東京。
初めての大都会にわくわくしてきたのに、
天候は天気予報大外れの雨。
『雨のにおいするのに晴れなんて、
おかしいと思ったよ…』
しょうがなく、
近くのマンションの下で雨宿りしてると、
一人の男の人が傘も差さずに歩いてくるのが見えた。
『……あの人…』
ずぶ濡れなのに走る気配もなく
目の前を通り過ぎようとしたその人を、
思わず引き寄せてしまった。
その瞬間のその人の顔ったら
たぶん一生忘れない。
ハトが豆鉄砲くらったお手本みたいな顔だった(笑)
『っちょっと、
こんなに雨降ってるのに傘も差さずに…
ずぶ濡れじゃないですかっ(汗)
風邪ひいちゃいますよ?』
そう言って、
持っていたハンカチで
とりあえずその人の頭と顔を拭いていく。
光[…あんた、誰や?]
『どーもはじめまして、
ちいと申します!
傘忘れたもの同士として、
とりあえず雨やむまではここにいてもらいますからねっ』
光[…俺のこと、
知らんの?]
『…へ?
…知り合い、でしたっけ?(汗)』
光[…っふは、
や、えーわ、ありがとうな(笑)]
そう言って笑った顔は、
なんだか天使みたいにかわいかった気がする。
それがまさか
ジャニーズの王子様だと分かるまでは、
まだもう少しかかるんだけどね…
これが、あたしと光ちゃんの出会い。
あとで聞いたら、
光ちゃんはこの日傘忘れたわけじゃなく、
なんとなく濡れて帰りたかったんだって、
それでも、
雨がやむまで一緒にいてくれて、
[ハンカチのお礼に今度飯でもいこーや]って
連絡先を交換して、その日はばいばい。
メールとかしてくうちに、
光ちゃんも地元は関西なんだって知って、
関西に帰ってきた時は、
ちょくちょく連絡を取り合って会うくらいの仲になった。
雛ちゃんともその時に
光ちゃんの紹介で仲良くなって、
たまに三人でご飯行ったり、
雛ちゃんだけこっちにいるときは
二人で会うようにもなったりした。
そんな出会いから3か月も経ち、
あたしが大学に入学したある日…
『っ光ちゃん!!(汗)』
光[っ?!なんやねんちい~、
鼓膜破れるやろ~(呆)]
雛[相変わらずやな~、ちいは(笑)
あ、そういえば、
大学生なったんやろ?おめでとーさん♪]
『そうなの!
もーありがと~(笑)…
ってそうじゃない!!なにこれ?!?!』
そう、
あたしはついに、
二人がジャニーズという
天下のアイドルだと知ってしまったの。
…ま、遅い方なんだろうけど(汗)
光[…あ~(汗)
ばれた?(笑)]
『ばれた?(笑)じゃないよ!
なんで言わないの?!
こんな大事なこと!!(汗)』
雛[別に、そない騒ぐようなことでもないやんけ。
仕事なんか、俺らの友情に関係あるんか?]
『大ありよ!!』
そう、この頃のあたしは
光ちゃんに片想いしてたの。
まさかジャニーズだなんて知らなかったから…
光[…なんや、
お前も、アイドルやってわかったら
見る目が変わったか?w]
光ちゃんは自嘲気味に笑ってた。
今思えば、この時あの雨の夜のこと
思い出してるべきだったね…
『そーゆーのじゃなくて!
あたしの気持ちはどうすればいいのよ!!』
雛[…気持ち?]
『っだから、
光ちゃんが好きだってゆーこの気持ち!
アイドルだなんてわかったら、
簡単に、言えなくなっちゃうじゃない…っ(泣)』
光[…っごほっごほ、
は、はぁ?!?!?(汗)]
光ちゃんが、飲んでたビールを吹きだしても、
あたしは自分の言ったことに気が付かなかった。
雛[っちょ、ちい?
おま、今なんて…?(汗)]
『っだからぁ!
あたしの光ちゃんへの片想いは
いったいどこに…やれば
…って、
えぇぇええぇぇぇぇぇ?!?!?(汗)』
パニくった。
あたしたぶん、
この時人生で一番パニくった。
『あた、あたし…
今…なんて言った?!?!?(汗)』
雛[…まぁ、簡潔に言うと、
公開告白?(笑)]
あのときの雛ちゃんの面白そうな顔。
今でも夢に出る。(拗)
光[…お前、
俺のこと好きやったんや?w]
二人してにやにやしちゃって!
『っなっ…
し、知らないっ(照)』
光[またまた~w
顔真っ赤にしちゃって♪(笑)]
『もうっからかって!
あたし帰る!!(照)』
顔から火が出そうな恥ずかしさに、
あたしは店を飛び出した。
家に向かって競歩並みのスピードで帰っていたら、
後ろから、
ふわって、暖かい香りに包まれた。
光[…ちょー待てよ。
言い逃げなんか、ずるいやん?]
『っ離してよ、
さっきのは言い間違いなんだからね?!(照)』
光[そうなん?残念。
じゃ、俺からゆーたるわ。]
『…へ?』
光ちゃんは、
あたしの肩をつかんでくるっと自分の方に向けると、
不意に、
唇を重ねた。
びっくりして固まってると、
真剣な顔で…
光[…好きや。]
思考がうまくまとまらない。
なに、言ってるの…?
光ちゃんは、天下のジャニーズなんだよ?
でも、
そう言った光ちゃんの目があまりにも真剣で、
そらせない自分がいた。
光[…ほんまゆうと、
一目惚れなんかもしれん。
お前と出会ったあの雨の夜、
俺、女と別れたとこやってん。
好きやった女に裏切られて、
自暴自棄なりかけとった。
最初は、人が歩いてるとこいきなりひっぱって、
悪質なファンかなってちょっと警戒しとったんやけど、
話してみたらほんまに俺のこと知らんみたいで、
めっちゃ普通にしゃべってくれて、
なんか、そーゆーん久々で、
嬉しかってんな…。]
面と向かってそんなこと言われて、
顔が赤くならない女の子なんていない…(照)
光[…仕事のこと、
黙っててごめん。
ほんまのことゆーたら、
もう友達でもおれんくなるかもって、
怖かった。
逆に、芸能人やからって
態度変えられても嫌やし…(汗)]
『そんなことするわけないじゃんっ
…光ちゃんも、雛ちゃんも、
芸能人とかの前に、
あたしの友だちでしょ?』
光[ありがとう。
ちいのそーゆー偏見とか持たんとこ、
めっちゃ好き。(笑)
でもちい?
友だちって…
俺のこと振ってんの?]
『えっなん…っ?!』
また、キス。
光[…俺、
今告白したつもりなんやけど…?]
『…あ、(照)』
光[…返事は?(笑)]
『…っ、大好き!(照)』
光[っふは、
ん、了解。(笑)]
そういって、
今度はどちらともなく、
唇を重ねようとした瞬間…
雛[はい、ストップ。]
雛ちゃんがあたしたちを引き離した。
『ひっ雛ちゃんっ(汗)
見て…?!』
光[村上~(呆)
タイミング考えろよ!]
雛[いやいや、お二人さん(苦笑)
そんっな目の前で何回もちゅっちゅされても…]
『め、目の前?!?!(照)』
雛[ずーっとここにおるがなw
ま、よかったやん?
…光一くん?(笑)]
『…え?』
光[っあほ!
村上おま…っ(汗)]
雛[ずーっと我慢してましたもんね?
ちいまだ高校生やったから、
犯罪者にはなりたないーゆーて(笑)]
『…光ちゃん…(照)』
光[ちっ、ちゃうねんちい!(汗)]
雛[まあまあっ、
…一応ゆーときますけど、
泣かさんといたってくださいよ?
俺もまあ兄貴みたいな気持ちでやってますんで(笑)]
光[っ、生意気じゃあほっ(照)]
そういってあたしの肩を抱き寄せる光ちゃん。
『もう、二人とも…っ(笑)』
この日、初めて二人が芸能人だって知って
正直戸惑いの方が大きかったけど、
光ちゃんに告白されて、
あたしは本当に幸せだったと思うの…