12 帰るべき場所
name change .
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あれから2ヶ月して、
あたしの大学卒業と同時に、
章大との、東京での新しい生活が始まった。
『章大~?
今日早いんじゃなかった~?』
ードタドタドタドタ…っ
「…っやっばい!遅刻っ!!!(汗)」
…また?
って、ちょっとまって!(汗)
『っあ、これ!
…お弁当、作ったの…(照)
よかったら…
っきゃ?!』
そういってお弁当の包みを差し出したら、
お弁当ごと章大に抱きしめられたっ
「っ初!愛妻弁当~~~~~っ!!(笑)
うれしいっうれしいっ!
ありがとうちい~~~!!!」
っあ、愛妻って…(照)
『っもう、章大ったら、
…遅刻しちゃうよ?(照)』
火照った顔を隠すようにうつむくと、
「っほんまや!
じゃ、いってきます!!」ちゅっ
『っ?!?!?(照)』
触れるだけの軽いキス
いってきますのキス…
「…へへ(笑)
ちょっとやってみたかったことっ(照)」
そういってはにかんだ章大が無性に愛しくて、
おもわず、
章大の服の裾を引っ張っちゃった…
「…ん?」
不思議そうに、あたしの顔を覗き込む章大。
たぶん今、
あたしの顔真っ赤なんだろーな…
『…あ、
……もう、一回…っ(照)』
「…っうっわ!
そーれ反則やでちい~(苦笑)」
そういった章大は
耳まで真っ赤だった。
少し見つめあって、
また、キス。
今度は
お互いを求めるような深いキス。
どのくらいこうしてたんだろう…
それくらい、夢中になってキスしてた…
安心する。
できるならこのまま、
ただ平穏に、
ずっと章大といられればいいのに…
なにもいらない。
章大さえいれば、それだけで…
どうして神様は、
そんな小さな願いすらも
叶えてはくれないんだろう…
ープルルルル…プルルルル…
『…ん、章大…
ケータイ…っ』
鳴り響く着信音をものともせずに、
章大はあたしの後頭部をつかんで離そうとしない。
ープルルルル…プルルルル…
『……んっ…
し、章大ってばっ(汗)』
「っんもぉ!!
誰やねんこのくそ忙しいときに…(怒)」
忙しいって…(笑)
ープルル…ピッ
『っもしも…』
雛[ヤスこらお前
いつまで待たしとんねんボ…っ(怒怒怒)]
ーピッ!!
「………っ(絶望)」
電話に出た途端
ケータイを耳に当てなくても響くくらいの
ヒナちゃんの声が聞こえたと思ったら、
瞬間、章大のなにかのセンサーが反応したのか
すごい勢いで電話を切った…(汗)
『…し、章大?
今の電話…(汗)』
「やっっっば!!!!!
下に待たしてるマネージャーの車、
今日先信ちゃん乗ってんねやっ(汗)」
今日、あたしたちを引き裂いたのは、
まさかのキューピットヒナちゃん(呆)
章大の顔は一気に青ざめ、
急いで玄関に二人して向かったっ
『ごっごめんね!あたしが…っ』
ーちゅっ…
「気にすることなーいの!
かなりテンションあがったんやからっ(照)
…
続きは、帰ってからな…(妖笑)」
『…っ!(照)』
「っふは、真っ赤(笑)
んないってきます!」
『…いってらっしゃい。』
びっくりしちゃった…
耳元であんなセリフ、反則だよ…(照)
章大が出ていくと、
途端に静かなあたしたちの家。
家事を午前中に済ませて、
フラっと買い物に行くことにした。
まだあんまり東京の地理が分からないあたしは、
とりあえず電車に乗って、
行き当たりばったりに探検気分で
お散歩してみることに♪
『…ここがあの有名な…っ』
目の前には、
天神祭でもお目にかかれないほどの人だかり、
すべての人々が不規則に、
瞬く三色のシグナルに合わせて
動いたり止まったり時に走ったり…
すごい…すごい…っ
『………っスクランブル交差点!!(輝)』
初めて肌で感じる大都会に、
あたしは田舎者丸出しではしゃいでいた(笑)
目を輝かせて
大衆の波のような動きに身をゆだねると、
次第に雲行きが怪しくなってきて…
『…あ~あ、
降ってきちゃった…』
小雨がパラパラと、
先を急ぐ人たちの頭上に降り注ぐ。
雨宿りできるところを探すため、
とりあえず向こうにみえる
点滅するシグナルのもとまで
小走りで行こうと思った
その瞬間、
あたしの…
正確には、あたしたちの時間は止まった。
うそでしょ…
こんな人だかりで、
こんな広範囲にわたるスペースで、
いろんな人々が縦横無尽に
走り抜けてく風景の中で、
どうして、あなたの周りだけ
止まって見えるの…?
この目は、あなたを離さない…
そしてきっと、
あなたもあたしを捕えてる…
『…光、ちゃん…』
あたしたちはしばらく見つめあって、
人の波にもまれながら、
引き合うように
お互いの目の前に身を寄せ合った。
光[…久しぶり、
やな?(苦笑)]
少し戸惑ったように笑うあなた。
『…うん。
元気、だった?』
ねえ、あたしもあなたみたいに
上手に笑顔作れてるかな…?
雨をしのぐために、
二人で近くのファミレスに入って、
飲み物をオーダーする。
光[…コーヒー、ブラックで。]
『………アイスミルクティー。』
光[っふは、変わらんすぎやろ…(笑)]
『うっ、うるさいな!
いいでしょ?!(照)』
しばらくの沈黙の後、
店員さんが持ってきてくれた
飲み物に口をつける。
光[…こっち、
来てたんや?]
静寂を切ったのは光ちゃん。
光ちゃんだって、変わんないじゃん
そーゆーとこ…
『…うん。少し前から。』
光[そーか。]
『っ章大と、…
住んでるの…。』
光[…そーか。]
ほらね。
光ちゃんは顔色一つ変えず、
コーヒーを一口含む。
そういうと思ったよ。
だから今のタイミングで言ったんだもん…
ずるい女。
また、沈黙。
でも不思議と、
思ったよりも重くない。
あたしには、
光ちゃんに聞かなきゃならないことが一つある。
答えの察しも実は大体ついてて、
でもその答えを聞いたら、
あたしはきっと、大切な人を
傷つけなきゃいけなくなるの…
だから、釘を刺した。
『…光ちゃん、
ひとつだけ、聞いていい?』
光[……ん?]
〝なんであの時、あんなこと言ったの?〟
準備してた言葉。
でも、あたしの口をついたのは…
『……
…いま、幸せ?』
本当に、
どこまでずるければ気が済むんだろう。
贖罪でも求めるかのように、
紡がれた言葉。
〝幸せやで。〟
それであたしは楽になれるの?
〝幸せじゃない。
お前がおらな、幸せになれへん。〟
もしも、そう言ってくれたなら…
光[…ま、それなりに?]
放たれたのは、
予想の選択肢にはなかった言葉。
窓の外の雨を見ながら、
困ったようにはにかむ光ちゃん。
その瞳がさびしげに伏せられたことに、
どうして気づいてしまうんだろう…
光[…お前には負けるけどな(笑)]
そういって、
今度はあたしの目を見ながら、
悪戯に笑う。
ここであたしが笑って言葉を返せたら、
あるいは友達くらいには戻れたのかな。
でも、それがあなたの優しさだって
気づいてしまうあたしは、
とことん、可愛くない女だね…
その後二人は、
何か言葉を交わすでもなく、
ただ窓を叩く雨を見ていた。
気づけばもう夕方。
『……帰らなきゃ。
章大が、帰ってくる…』
そう呟くと、光ちゃんは何も言わずに席を立ち、
あたしの分までお会計を済ませ、店を出た。
『あ、お金…(汗)』
光[じゃーな、
元気で。]
そのまま、光ちゃんはネオンの街に消えて行った。
『〝じゃーな〟か…』
〝またね〟とは、
言ってくんないんだね…
帰らなきゃ。
あたしには、帰るべき場所がある。