09 お前に会いたい。
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一晩泣き明かして、
気づけば朝になっていた。
重い体を起こし、
とりあえずなにか胃に入れようと
冷蔵庫をあさっていると、
鳴り響く、大好きだった着メロ…
錦[…今さら、なんやねん。]
鳴り止まないケータイを冷たく見下ろし、
俺は机の上に置いてあったバナナを手に取り、
ケータイを部屋の隅に放り投げて、
つまらない雑音をかき消すように、
面白くもないテレビの音量を最大にして付け、
ソファに腰かけてただ眺めていた。
しばらくして、やっとコールが止まると、
少しの間の後に、今度はメールの受信音。
…絶対、見ぃひん。
そう決めてたのに、気づけば
手が勝手に受信ボックスを開き、
ディスプレイに本文が映った。
今思えば、俺はまだこの時、
かすかに希望を捨てきれていなかったのかもしれない。
もしかしたら、昨日のことには何か事情があって、
ちいからキスを求めているように見えたのも、
本当は俺の見間違い。
そんな、俺にとって都合のいいセリフが
書かれてるんじゃないかって…
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亮へ
昨日は連絡もなしに
約束やぶってごめんね(>_<)
ちょっと、おなか痛くなっちゃって…
また、近いうちに
必ず埋め合わせするね?
この前おいしかったお店、
また連れてってほしーな!♪
早く亮に会いたいよ。
ちい
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錦[…っは、わっかりやすい言い訳。
吐き気するわ。]
部屋には俺の乾いた笑いが響くだけ。
だって、そうやろ…?
メールのちいは、
まるで悪びれる様子もなく、
ケロッと嘘つくんやもん。
典型的な浮気女。
俺と寝た後、そんなメールを男に打つ女の背中を
何回も見てきたからな。
そのたびに俺は、
ああ、女ってこういう風に嘘つくんやって、
心の中で軽蔑してた。
でも、ちいと出会って、
こんな女もおるんや、って、
俺は気が緩んでたんかな。
やから、こんな風に裏切られるんや…
まさかこの俺が、こんなメール送られる側に回るなんてな、
ほんま、ダサすぎて泣けてくるわ…
そう、この涙は、
裏切られた悲しみなんかじゃない。
ただ自分の間抜けさに、泣けてくるだけ…っ
ぬくもりなんて微塵も存在しない、乾いた涙。
しょせん女なんて、醜い生き物…
なあ、ちい、知らんやろ?
俺、ちいのゆーてるその店、
昨日予約しとってんで?
まあ、もう二度と行くことはないやろーけどな…
俺はケータイを閉じ、
食べかけのバナナを捨てて家を出た。
ー関ジャニ∞楽屋
安[なぁ横ちょ~、レベル上がったぁ?]
横[おぅ!俺昨日がんばったからな♪]
丸[裕ちんさぁ、俺が行くときいつでもおることない?(笑)]
昴[こいつは寝ながらでも狩ってるからなっ(笑)]
忠[とかゆーてすばるくんも相当でしょ~!]
丸[なあ、亮ちゃんやらへんのっ?]
錦[っあぁ、俺?…や、今えぇわぁ(笑)]
今∞の楽屋はモンハン大会中、
そういえば、村上くんおらんな…
ーテコテコテコ…
安[…亮、信ちゃんならドラマやで。]コソッ
ービクッ
っびっくりしたぁ!(汗)
いきなりヤスがテコテコ近づいてきた思ったら
耳元で話しかけるから
思わず体が跳ねてもーた(苦笑)
…でも、ほんまなんでわかるんやろ、ヤスはいつも、
錦[…ぁあ、そっか、おん。]
安[…昨日は、大丈夫やったん?]ニコッ
と思ったら、
今度は俺の横に座って
にこって笑いながら首かしげて
妙に核心をついてくる…(汗)
なんてゆお…
錦[あー、まぁ、…おん(汗)]
変に言葉を濁してもーた。
やのに、
安[…ん、わかった。了解(笑)]
そういうと、ヤスは深く聞くでもなく、
またゲーム画面に目を戻して、
何でもないように狩り始めた…
でも、腰は俺の横に下ろしたまま。
俺はなんか気まずくて、
机の上に置いてあった誰のでもない
今朝出たばっかの週刊誌になんとなく目を通しながら、
小さい声で、つぶやいてみた…
錦[…昨日は、態度悪くて、ごめん…]ボソッ
安[…いつものことやん(笑)]
聞こえるか、聞こえへんかくらいの声でゆーたのに、
目はゲーム機の画面に向けながらも
笑って答えたヤスに、
なんか…こみ上げるものがある…(汗)
錦[………っ]ッバシ!
安[っいったーーー!(泣)]
丸[なにぃ、章ちゃん?!]
昴[安田うるさいぞ!!(怒)]
安[やって亮がいきなり殴ったーーっ(泣)]
忠[っちょ、ヤス黙って!集中切れる!!]
横[どっくんもヤスなんか構ってんとこっちきぃや!(笑)]
安[っ横ちょひどい!!もう回復したらん!!(拗)]
横[っヤス!それはあかんぞっ(汗)]
なんとなくむかつくから、
訳もなくヤスの頭はたいたら、
なんやねん、涙目なんなや(笑)
そのまま、ヤスをほっといて、
みんなの座ってるソファに行く。
しばらくしてヤスも来たけど、
座らしたれへんねん(笑)
こいつらが、メンバーでよかった。
こいつらじゃなかったら、
俺、今頃ふてくされるかうなだれるか、
どっちにしろ、仕事なんか手についてなかったやろな。
抜け殻みたいに笑ってた朝が考えられんくらい、
今はほんまに笑えてる。
普段なかなか言えんけど、…ありがとうな(照)
…ちいとも、ちゃんと話しよう。
こんな風に思えんのも、こいつらのおかげや…
ちい…お前に会いたい…
そんなことを思いながら、
ぺらぺらと週刊誌をめくっていると、
ふと、あるページが目に留まった。
これが、俺の最後の希望を粉々に打ち砕き、
俺をまたあの暗黒の時代に引きずり戻すことになるなんて、
このときは知る由もなかった…
【超人気俳優隼人(24)熱愛?!お相手は新人女優(19)!!】
…隼人…って、今、ちいとドラマやってる?
熱愛…新人女優……
え、…ちい…?
信じられなくて、記事を開いてボーっとしていると、
横から手元を覗き込まれる気配がして、
はっとして週刊誌を勢いよく閉じた。
横[っとぉ、びっくりしたっ(笑)
ページ開いたままフリーズしてるからなんか思ったら…
どっくん?…なんや顔真っ青やで…?(汗)]
気づけば顔の血の気は引いてて、
手は冷たくなっていくのを感じた。
メンバーの視線が一瞬集まり、
やばいと思って俺はトイレに駆け込んだ。
忠[…なん、亮ちゃん…生理?]
横[あほかっ(笑)]バシッ
昴[っなに?!妊娠したぁ!?!?!]
横[っどんな耳しとんねん!]バシッ
丸[っえっと、えーっとっ!(汗)]
横[…ないんやったら捻り出さんでえーねん!!]バシッ
安[………。(亮…)]
横昴忠丸[[………。っいやなんかゆえよ!!]]バシバシッ!!
安[っぇえ?!?!(汗)]
そんなコントが繰り広げられてるなんて知らんくて、
や、ってゆーかそれどころじゃなくて、
俺は落ち着いて、文章に目を通した。
ゆーても週刊誌、過剰にあおってるだけやろ…
そんな甘言はすぐに否定された。
〝人気俳優隼人(24)と新人女優の熱愛が発覚。
普段、共演中のドラマの撮影現場でも
仲睦まじい姿を披露していた二人は
少し前から熱愛のうわさはあったものの、
今回やっとのことで決定的写真を入手。
昨日、都内の新人女優宅に訪れた隼人さんは、
5時間にわたり彼女の自宅で愛を確かめ合い、
のち隼人さんの車で西麻布の某ホテルへ、
最上階のバーでは終始寄り添ってラブラブなキスも見せつけ、
次の朝二人仲良くホテルから出て、隼人さんの車で
共演中のドラマ現場へ向かった模様。〟
ここまで読んで、
新人女優=ちいだと、あの場を目撃した俺が見れば
もうすでに一目瞭然。
ここでやめてれば、
あるいはあんなことにならずに済んだんかな…
事実なんて、そのほとんどが
知ったところで汚くて
むしろ知らない方が幸せなものやったのに…
でももう遅い、
俺の開けてしまったパンドラの箱の底に残ったのは、
ひとかけらの希望なんかじゃなく、
終わりのない、闇やった…
〝なんと、今朝の速報で
一緒に現場入りした二人は
そこにいたスタッフやキャストに向かって
堂々の交際宣言。
のち、濃厚なキスを見せつけるなど、
オープンなお付き合いをしていく方針な模様。
双方の事務所からも、“お互いの意思を尊重する”など
肯定的なコメントが寄せられおり、
デビューしてすぐの連ドラヒロイン抜擢に続き
超人気俳優をも射止めた
まさに現代のシンデレラガールと言っても過言ではない彼女。
近々大がかりな記者会見も行われる模様。
今後も彼女らの動向から目が離せない。〟
もう、言葉もない。
この瞬間、俺の目の前は真っ暗になった。
ちい、俺はギリギリまで、
せめてお前の口から真実を聞くまでは、
お前のこと信じようと思った。
あんな場面でも、
ちいならうまく言い訳して、
俺の心の黒い部分を取りのぞいてくれるって、
俺、信じてたんやで?
でも、もう、限界や。
だって、このでっかい写真、
今朝交際宣言したって時に撮られたもんやろ?
お前はもう芸能人やから、
モザイクなんかで守ってくれなくってもろに顔でてるし、
ちゃんと、お前と、隼人とかゆう俳優の
くちびるが重なってんの、写ってんねんもん。
俺はトイレのドアを開け、
持ってた週刊誌を机の上に投げると、
近くに置いてあったギターを手に取り、
心のままにかき鳴らした。
昴[…~、あれほど、オマエ愛してた~♪…]
忠[なんでいきなり“レイニーブルース”?(笑)]
昴[…え?…や、亮が弾いてるから…?]
安[……亮…?]
俺の代わりに、ギターが泣く。
ちい、お前が先に裏切ったんやで?
ーガチャッ
『…ちっすー』
丸[あ、信ちゃん、おつかれさまでーす!]
昴[おぅ、ヒナ!先狩っとるぞ!]
安[…あれ?ちいちゃん!ひさしぶりー♪]
は?
俺は思わず、弾いてたギターの手を止めた。
だってそこには…
「……ひさしぶり。」
錦[……ちい…?]