06 すれ違う心
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ちいが芸能界にデビューしてから、
俺が思ってた通り、
めっきりちいとは会えなくなった。
おまけにちいと付き合ってることがばれたらまずいからって
たまに会えてもまともにデートもできやんし、
ドラマの撮影で忙しいちいは
ろくに連絡もくれやん。
ちいの様子は、ドラマで一緒の村上くんから
ちょいちょい聞くくらいでしかわからんくて、
おまけに一回ドラマの撮影現場見に行ったとき、
ちいが相手役のなんとかって俳優(名前なんか知らんけど)と
妙に仲良くて、
もやもやした気持ちのままふてくされて帰ってしまったから
そのあと現場へも微妙に行きづらいし…
なんか、せっかく一緒の世界におんのに、
ちいが前より遠いとこに行ってしまったみたいや…
そんなときに、ちいから
“明日オフやから会おう”って連絡来て、
俺、スカした返事してもーたけど
内心めっちゃ嬉しかった。
俺はやっぱ、ちいがおらなあかんねやなって
やから撮影もめっちゃ笑って頑張って
マッハで終わらして
早めに待ち合わせしとるスタジオのロビーで待っとんのに、
約束の時間が過ぎても
ちいの来る気配がない。
ケータイに連絡も入ってへんし、
心配なってこっちから連絡しよーにも
あいつなんでかケータイの電源切ってよるから
連絡つかへんし…
なんやねん、
楽しみにしとったからよけい、
なんや腹立ってきたわ…(怒)
安[亮~♪
これなーんだっ?(笑)]
錦[っうっさいんじゃチンパ!!
失せろボケ!!(怒)]
あーもう!
こんな時に絡んでくんなやチンパっ
イライラ時に見たくないもんベスト3に入ってる自覚持て!!(怒)
昴[!!ぉいっヤス、どれやほら俺が見たるからっ!(汗)]
あ、すばるくん、気ぃつかってくれたな、
でも、ごめんやけど今はそれどころちゃうねん…
安[え~、渋やんにはさっき見せたや~ん(拗)]
昴[えーからこっち来いっチンパ!!]
安[!? そんなチンパチンパゆわんでよ~(泣)]
あー、遅い。
なにやってんねやろ?
昨日の夜電話かかってきてんから
先約あったとかないよな?
『…ちいから、連絡ないん?』
村上くん…
そっか、村上くんは昨日も
撮影でちいと一緒やったんやし、
今日待ち合わせしとることも知ってんのやんな。
錦[…っあいつ、ケータイの電源切ってるし、
さっきから全然つながらんっ
…もう1時間も経ってんのに…っ]
久々に会えるからって
せっかくあいつが気にいっとった店予約したのに
間に合わんからキャンセルせなあかんし、
もー最悪やん。
あかん、ほんまにイライラしてきた…
安[っえ?亮、ちいちゃんと約束しとったん?]
またかヤス。
頼むから俺にかまうな。
錦[…それがなんやねん。]
あ、やばい、
今の言い方はさすがにとげとげしすぎてた…
くそっ、謝りたいけど今は…なんか…っ
『約束の時間1時間も過ぎてんのに来ーへんねん。
ヤス、なんか聞いてんのんか?』
俺が葛藤してんの汲んでくれたんか、
村上くんが水を差してくれた。
ほんま、メンバーのことよぉ見てくれてんのやな…
安[えー?だってちいちゃん、
今日は隼人くんと会ーてるはずやで?]
…は?
まず隼人って誰やねん?
錦[…はぁ?(怒)]
一瞬場の空気が凍ったけど、
もともとイライラしとって
さらに意味わからんこと言われたから我慢できずに
ヤスに向かって切れたみたいなことゆーてもーた(汗)
もーっ
さっきからメンバーに当たり散らして
俺、なにやってんねやろ…
安[や、隼人くんって今ちいちゃんとドラマ共演してるやん?
俺、前からプライベートで隼人くんと友だちなんやけど…]
ヤス、俺、こんな態度やのに、
まるで気にしてへんみたいに喋ってくれるんやな。
お前って、いつもそうやんな、
ほんま誰にでも優しくて…
いっつも素直になんて言えんけど、ありがとう…
安[…“明日飲み行かへんかー?”ゆーて誘ったら、
“明日はちいと会うんで”ってゆーてたもん!
ちいって呼び捨てるくらいやから
相当仲いいんやろなー♪
ちいちゃんもやるなあ!(笑)]
…はい?
つまり隼人ゆーんは…あのときちいに絡んできた俳優?!
そいつとちいが、今会ってんの?
…え、待ってや、
そんなん頭がついて行かん…
俺は状況が理解できなくて混乱してたけど、
とりあえずちいが俺との約束を破って
別の男と会ってるって事実だけで、
震えるほどの怒りが込み上げてきた。
錦[ヤス、それ、どことかわかるか?]
怒りで頭がどうにかなりそうやったけど、
これ以上関係ないメンバーに当たらんように、
なるべく冷静を装ってヤスに聞いた。
安[ん…っと、確か西麻布のホテルのバーとかゆーてたかな?]
『っ亮!!』
ヤスのその言葉を聞いた瞬間、
跳ねるようにスタジオを飛び出し、、
タクシーに飛び乗って西麻布まで走らせた。
後ろで村上くんの声が聞こえた気がしたけど、
そんなことかまってられへん。
とにかく、この目で事実を確かめたい。
いや、この時の俺は、それすらも忘れて、
ただ、ちいに会いたかっただけなんかもしらん…
タクシーが止まると、万札を叩きつけて飛び降りた。
エレベーターのボタンを連打し、最上階のバーへ向かう。
早く…早く…っ
一秒でも早く、この目にちいを映したい…
こんなにも、求めているのに、
現実は無情にも、俺の心を打ち砕く。
エレベータが止まり、向かいにあるバーの入り口に立ち、
中を見渡すと、
淡いブルーの妖艶なドレスに包まれたちいと、
その隣でちいの腰に手をまわす、一人の男。
とにかく久しぶりにちいに会えたことに俺の心は一瞬緩み、
近づいて声をかけようとした
その時、
寄り添っていた二人は、その唇を重ねた。
あまりの衝撃に、
俺の足は根が生えたようにそこから動かず、
ただ、無邪気にキスを繰り返す二人を
まるでスクリーン越しに見る映画のワンシーンのように
息をするのも忘れて眺めていた。
そんな時、後ろから村上くんに声をかけられて、
『っ亮、いきなり飛び出して…
どーしてん?ちい、おらんのか?』
錦[……奥の席。]
俺は表情一つ変えずにちいたちのいる方を指さす。
いや、変えずにというよりも、
動かせずにといったほうが正しいのかもしれない。
次の瞬間、とどめを刺される思いだった。
『…なんや、おるや……えっ…?!』
男がちいに覆いかぶさるようにして、
深く、深く口づける。
『…っ、?!』
二人のもとに駆け寄ろうとした村上くんを
腕一本で制止して、
俺はその場を離れた。
錦[……出よう。村上くん。]
『っでも亮、お前…』
ごめん、村上くん。
でも、俺はもうそれ以上その場にはおれん。
村上くんの言葉を無視してエレベーターに乗り込むと、
少しして、村上くんも来た。
二人でタクシーに乗り込み、帰路に着く。
車中、俺の頭の中には
さっき見たシーンが無声映画のように繰り返されるばかりで、
話しなんかする気になれず、
村上くんもそんな俺を察してか、
一言も口を開くことなく、
俺が先に車を降りて、その日は解散。
俺はその夜、一睡もでひんかった。
だって、そうやろ?
あんなん、明らかにただの友達じゃないよな?
しかも…俺見えてんで?
ちいからもキス求めてたん…
ずっと会えなくて、俺がちいを想ってた間、
ちいはあの男のこと想ってたんかって思うと、
腹立つとか、悔しいとかじゃなく、
無性に、空しくて、
抜け殻みたいに、
ベッドの上で、ただ息をしてるだけだった。
ちい…お前はもう、あの人のものなん?
こんな思いをするなら、
あの時無理にでも、ちいのデビューを止めるべきやった。
住む世界なんか違っても、
俺にはちいが隣にいてさえくれれば、それでよかったのに…
俺は、ちいに裏切られた…?
気づけば俺のほほには、一筋の涙が伝っていた。
それは、俺が流した
最後の温かい涙。