05 おまえが幸せなら
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ちいが、あの隼人とかゆう俳優(スタッフに名前聞いたっ)に
連れてかれた後、
俺はなんか嫌な予感がして
ちいの楽屋まで行ってみた。
でもそこにちいはいなくて、
不意に、あの日のことを思い出す…
まさか…またあいつの楽屋に…っ
虫の知らせを頼りに、
あいつの楽屋に行こうとドアノブに手をかけた時、
ちいの言葉を思い出す…
ーーー
『…っ、離せちい!こいつ…っ』
「っだめだよ!!
違うの…いいの…っ」
≪ちい!!
この頭おかしいやつ、黙らせろよ…≫
『…おいこらガキ、お前ちょーしのるんもたいがいに…っ』
「っヒナちゃん!!
あたしたち忙しいの、
お願い…邪魔しないで…っ」
ーーー
あんときは、本気でちいがどーかしてもーたんかと思った。
でも、甘かったんは俺の方。
あれからちいは、あいつと常に行動を共にするようになって、
ドラマの内容も二人の絡みが多くなるように
ちょいちょい直されとった。
キャストもスタッフもいつの間にかがっつり変わってて、
現場はあいつの独擅場。
そんな状況なら、あほでもわかる。
あいつに逆らったら飛ばされる。
ちいはそれが分かってたから、
あの時あんなことゆーたんや。
…正直、この状況で
あの時の楽屋に居合わせた俺が飛ばされてないんが
不思議やったけど、そんなんどーでもええ。
今となっては、この場でちいを守ってやれるんは俺だけや。
ちいも、俺を頼ってくれてる。
だから、俺が飛ばされるわけにはいかんっ…
俺が…っ
そんなことを考えてたら、
いつの間にか数時間が経っていた。
自分が飛ばされる怖さなんかより、
ちいを一人にすると思ったら
あいつの楽屋まで足が動かなかった。
でも、次の瞬間、
俺は激しく後悔した。
不意に楽屋のドアが開いて、
視線をやると、
そこにはぼろぼろにされた衣装を身に着けて
涙を流すちい。
『っちい?!
…お前、どーした…なにがあったんや?!
こんなに、…っ』
「…っく、ヒ、ナちゃ…あたし…っ(泣)」
俺は咄嗟に駆け寄って、
その細い体を抱きしめた。
抱きしめると、細いと思ってはいたものの、
その体は想像以上に華奢で、今にも壊れそうなほど。
ちいの肌からかすかに香るあいつのにおいに、
俺も理性は今にも崩壊寸前で、
今、ちいを離すと、
そのまま駆け出して、あいつの楽屋に
殴り込みに行ってしまいそうだった。
「…っあたし、もう…っ(泣)」
『…なにがあったんや…っ』
身にたぎる怒りを抑えて、
ちいが落ち着けるように、冷静な口調で聞き返す。
泣きじゃくるちいは、
過呼吸を抑えながら、
俺にすべてを話してくれた。
こんなことになるなら、なりふり構わず
あいつの楽屋まで押しかけて、
ちいを連れ戻せばよかった。
防げたはずのこと、
守れたはずのちい。
ちいがこんなに傷ついたのは…俺のせい…っ
「…ヒナちゃん、ありがと。」
話し終わる頃には、
ちいの涙は止まってて、
優しく微笑みながら、そう言った。
『っなにがやねん!!
…っけっきょく俺は、お前のこと、守ってやれんくて…っ』
「んーん、そんなことない。
こーやって、ちゃんと話聞いてくれるじゃん、
…今だって、ヒナちゃん、あたしのために
泣いてくれてるんでしょう?」
気づけば、行き場を失った俺の怒りは、
涙となって流れていた。
『…お前のためなんて、かっこいいもんじゃないっ
ただ…自分が情けなくて…っ』
そう、こいつのために泣く資格なんて俺にはない。
ただ、守れなかった自分が情けなくて、腹立たしくて…
涙が出るほど、悔しかった。
「…優しいね。ねえ、あたしは大丈夫だよ。」
『っ大丈夫なわけないやんけ!!』
なんで、そんな風に笑えんねんっ
大丈夫なんて、
なんでそんな見え見えの嘘つくねん…っ
一番傷ついたんは自分やのに、
俺のことなんかほっといて、泣けばいいのに…っ
悲しいほどのこいつの強さ
そして、その強さの裏に隠した叫びに応えるように、
俺はちいを引き寄せ、
そのぼろぼろの心が壊れてしまわないように、
できるだけ優しく抱きしめた。
『お前が、どんなに亮が好きか…
どんな思いで、この世界に入ったのかも、
俺は全部そばで見てきた…っ
それを、こんな風に傷つけられて…っ笑ってんなやっ!!』
そういうと、また、
ちいはぽろぽろと、涙を流し始めた。
そう、ずっと見てきた。
亮の隣で幸せそうに笑うその笑顔も、
会えんときは、そのさみしさを隠して笑いながら、
一人になった瞬間に落とす切なすぎるその涙も、
ずっと、一番近くで見てきたんや…っ
「…あたし…亮を裏切ったんだよね…っ」
今、ちいの一番近くにおるんは…俺…?
俺なら、ちいをこんなになるまでほっといたりせん。
俺がちいの男やったら、
無理やりにでもあいつから引き離してやれる。
このまま、抱き寄せてくちびるを重ねてしまえば…っ
…違う。
『……そんな風に気負うな。
こんなときこそ、亮に支えてもらえや…』
そんな風に、ちいを手に入れたいわけじゃない。
間違えるな…ちいの幸せを…
お前に今必要なんは、亮やろ?
そう、俺にはそれが分かるから、
今は胸を貸すくらいしか方法が浮かばん…
こんなんでも、お前が笑顔になるんなら
俺はそれで十分やから…
ー次の日
この日は俺とすばると亮とヤスで雑誌の撮影。
ちいからは、自分で伝えたいから
亮には何も言うなって言われてる。
俺も、それが一番ええと思う。
ただ、今日ちいはオフやってゆーてたから、
俺らの仕事も昼には終わるでって教えたったら
じゃースタジオまで迎えに行くって
ゆーてた時間をとっくに回ってんのに、
ちいが来る気配がない…
さっきからケータイも繋がらんみたいやし…
ほら、うちの若頭の機嫌がそろそろ大変なことに…
錦[………。]イライラ
あーあー見てみ、
さっきから1分置きにケータイ開いては閉じて、
眉間にしわ寄せながら貧乏ゆすりしたはる。
こーゆー時は近寄らんのが一番や。
触らぬ神になんとやら…って
…あ(汗)
安[亮~♪
これなーんだっ?(笑)]
錦[っうっさいんじゃチンパ!!
失せろボケ!!(怒)]
昴[!!ぉいっヤス、どれやほら俺が見たるからっ!(汗)]
安[え~、渋やんにはさっき見せたや~ん(拗)]
昴[えーからこっち来いっチンパ!!]
安[!? そんなチンパチンパゆわんでよ~(泣)]
…ヤスよ、
お前にはどうしてこの空気が伝わらない…(汗)
すばるなんか伝染してピリピリしとんゆーのに…
まあ一応、すばるがさっきから
すごい目ぇでこっちに助け求めてるわけやし、
ヤスは任して若頭のフォローにいきますか…
『…ちいから、連絡ないん?』
錦[…っあいつ、ケータイの電源切ってるし、
さっきから全然つながらんっ
…もう1時間も経ってんのに…っ]
たしか亮、店予約したゆーてたし、
この分やとキャンセルせなしゃーないやろな…
安[っえ?亮、ちいちゃんと約束しとったん?]
さっきまですばるにあやされとったヤスが
いきなり首突っ込んできてびっくりした。
錦[…それがなんやねん。]
あーあー、亮も機嫌悪いのー(汗)
『約束の時間1時間も過ぎてんのに来ーへんねん。
ヤス、なんか聞いてんのんか?』
安[えー?だってちいちゃん、
今日は隼人くんと会ーてるはずやで?]
ヤスの言葉に、全員の動きが止まった。
…隼人?
って、あのドラマの?
確かちいは今日オフのはず…
昨日までは確かに今日は亮に会いに行くゆーてたもんな、
…なんで?
ってか、なんでヤスがそんなこと知っとんねん?!
錦[…はぁ?(怒)]
一番に口を開いたのは亮やった。
安[や、隼人くんって今、ちいちゃんとドラマ共演してるやん?
俺、前からプライベートで隼人くんと友だちなんやけど、
“明日飲み行かへんかー?”ゆーて誘ったら、
“明日はちいと会うんで”ってゆーてたもん!
ちいって呼び捨てるくらいやから
相当仲いいんやろなー♪
ちいちゃんもやるなあ!(笑)]
…なんや、それ。
っやば、亮がもう怒りを隠しきれてない…(汗)
錦[ヤス、それ、どことかわかるか?]
安[ん…っと、確か西麻布のホテルのバーとかゆーてたかな?]
『っ亮!!』
叫んだ声も聞こえなかったのか、
亮はヤスの話を聞くとダッシュでその場から去り、
たぶんヤスのゆーてた西麻布のホテルに向かった。
にしてもホテルって…
あいつっ!
昴[…っえ?!ヒナ?!]
俺も、亮の後を追うようにスタジオを出て、
タクシーを捕まえ、西麻布に向かった。
ゆーてたホテルに着いて、
最上階のバーまで上がると、
入口に、亮が立ち尽くしているのが見えた。
『っ亮、いきなり飛び出して…
どーしてん?ちい、おらんのか?』
錦[……奥の席。]
亮の指さす方を見る。
次の瞬間、おれはとんでもない光景を目にして、
思わず言葉を失った。
『…なんや、おるや……えっ…?!』
そこには、
妙に露出の高い服を着た、
いや、着させられたちいと、
ちいの腰に手を回し、深く口づけるあいつの姿。
『…っ、?!』
なにやってんのか、二人のもとに歩み寄ろうとした
俺を制止した亮の目は、
思わずぞくっとするほど、冷たいものだった。
錦[……出よう。村上くん。]
『っでも亮、お前…』
俺の言葉を無視して、
エレベーターに乗り込む亮。
仕方なく俺も乗り込み、
同じタクシーで帰った。
車中亮は一言も話さず、俺も、
なんて言葉をかけたらいいかわからなくて、
亮が先降りて、その日はそのまま。
ちい、はやくなんとかせな、
取り返しがつかんくなるぞ…っ