16 犠牲
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目が覚めると、
見慣れない天井、
でもどこか懐かしいにおい。
『…起きたか?』
ベッドの横には、
心配そうにあたしの顔をのぞきこむ
「…ヒ、ナちゃん?
なんで…?」
ヒナちゃんはゆっくり、
昨日あったことを話してくれた。
そっか、
あたしあのまま、
亮の家のドアにもたれかかって
動けずにいたんだ、
それをヒナちゃんが拾ってくれて…
「…ごめん、ね?
こんなときまで、迷惑かけて…(汗)」
申し訳なさに顔を伏せると、
ヒナちゃんの大きな手があたしの頭を包み込む。
『あほか。
迷惑なんか掛けられた覚えないわ(笑)
ゆーたやろ?
俺がしたくてしてることや。』
優しくなでるその手の温かさに、
涙がこぼれそうになる。
『…言いにくいかもしれんけど、
昨日何があったか話してくれへんか?』
…ヒナちゃんには、
嘘つけない。
あたしは素直に、
ぜんぶ吐き出した。
なにがなんだかまだ
自分でも整理がついてないことも
ありのまま。
ヒナちゃんは、
黙って
あたしの言葉を待って聞いてくれた。
『…そうか。』
すべて話し終わった時、
そう一言だけ言って、
ヒナちゃんはうつむいてしまった。
「…ごめんね、
まだ自分でも整理しきれないんだ…
でもね、
あたしのせいで亮が苦しむのはもう、
耐えられな…っ」
涙で、言葉が詰まる。
次の瞬間、
あたしはヒナちゃんの腕の中にいた。
「…っ?!」
『…あほやな。
お前も、亮も…』
「…ヒナちゃん…?」
『二人して、
自分犠牲にして相手守ろうとして、
それでお互い傷つけあってんの
なんで気づかんねん…っ!』
「ヒナちゃん…」
『…やめろよ、
もう…っ
これ以上……、』
ヒナちゃんは、涙を流していた。
「…ヒナちゃ…
…… っ?!」
おもむろに、
あたしの唇に、ヒナちゃんの唇が重なった。
『…っごめん…
でも、俺もう無理や。
好きな女がこんなにぼろぼろになってくの
これ以上、見てられん…っ』
好きな…女…?
うそ、
なにいってるの…?(汗)
「…ヒナちゃん?(汗)」
『………好きやねん。』
あたしを抱きしめながら、
耳元で、
ゆっくりつぶやいた。
その声はどこまでも優しくて、
抱きしめる腕は暖かく、
あたしのすべてを包んでくれる。
『…俺に、
お前のこと守らせてくれや…っ
周りからも、あの俳優からも…
っ亮からも…
これ以上、誰からもお前を
傷つけさせたくないねん…っ』
辛いとき、いつも一番近くで
あたしを支えてくれた人。
亮に言えないことも、
全部受け止めて、
その胸で、泣かせてくれた人…
大切な人。
ヒナちゃん…
そんな風に泣かないで、
『…ごめんな、
ほんまはこんなん、
一生言うつもりなかった…っ
お前は優しいから、
こんな風に困らせんのわかってた。
やから、亮の隣でお前が幸せに笑ってるなら、
それでいい…って、ずっと思ってたんや。
…
でもっ、今のお前、
ぼろぼろやんか…
俺やったら、こんなになるまで、
お前のことほっとかんっ
俺やったら、お前のすべて、
守ってやれる…
俺やったら…っ、
俺の方が、
お前を幸せにできる…。』
ヒナちゃん…
いったい、
いつからそんな風に、
あたしなんかのこと想ってくれてたの…?
亮と一緒に、笑うあたしを、
一番そばで、
いったい、どんなふうに見てたの?
あんなに人を愛した今だからわかる。
愛する人が、違う人の隣にいること、
すごくつらいよ…
それでも、
ずっと、
好きでいてくれてたの?
亮とあたしの、
背中押してくれたの?
あたしのこと、
優しいなんて言わないでよ。
あなたの方が、
あたしなんかより
ずっと優しくて、
ずっとずっと、綺麗だよ…
そう、
あたしなんかとは
釣り合わないくらい…っ
「…ありがとう、
ヒナちゃん。」
『っじゃあ…っ』
「…でも、
ごめんなさい。」
「ヒナちゃんの想い、
あたしなんかにはもったいないくらい
すごく、すごくうれしいよ。
でも、応えられない…
ううん、応える資格が、
あたしにはないの…」
『…なんでや
…なんでや…っ
資格なんていらんねん
…お前はそのままで十分っ』
「っだめだよ!!」
『……ちい…?(汗)』
「…だめだよ、ヒナちゃん。
こんな女に安売りしちゃ…っ(苦笑)
ヒナちゃんには、
もっと相応しい人が…」
『っお前じゃないとあかんねん!!』
「…あたしは、
汚いから……っ」
自嘲気味にうつむいた時、
再び、ヒナちゃんはあたしを自分の胸に押し付けた。
『…どこが汚いねん?
俺の目の前におるお前は、
誰よりも、純粋で、強くて…
綺麗な女や…
なあ、
もう、亮のことはええやろ?
俺が、お前支えるから…っ』
ヒナちゃんが本気なの、
痛いくらい伝わるよ…
「…だめ…っ
気づいたの。
あたしの心には、まだ、亮がいる…
こんな中途半端なまま、
ヒナちゃんの優しさにすがりついていいわけない…っ」
…そう、
気づいてしまった。
隼人さんに抱かれても、
いくら亮に拒絶されても、
…ヒナちゃんが、求めてくれても、
あたしの心は、
痛いくらいに、亮を求める…っ
ごめんね。
自分でも、わからない…
抑えなんてきかないのっ
「…ヒナちゃん、
あたしね、嬉しいよ。
ヒナちゃんの想い。
でも、だからこそ、
ヒナちゃんには幸せになってほしいの。
あたしなんかより、もっっと素敵な人と。
…ねえ、わかって?
ヒナちゃんのこと、大切なんだよ…っ?
でもあたし…
やっぱり…っ」
それ以上、
言葉が続かなかった。
あんなにヒナちゃんに頼っておいて、
いつも自分のことばっかで、
けっきょく何も返せなくて…
都合いいときだけ支えてもらうなんて、
ずるすぎる…
わかって…
『…よーやく気ぃ付いたか、あほ(笑)』
「…へ?」
思わず間抜けな声も出る。
だって、そう言ったヒナちゃんの目には、
涙なんかみじんも感じられなくて、
悪戯っぽく
こっちを見て笑ってるんだもん…(汗)
『ほんっま、世話焼けるで(笑)
そんなけ亮が好きやったら、
へったな小細工せんと、
今ゆーたこと、
直接伝えたらええやん。
…亮かて待ってる。大丈夫や。』
そういって、
いつもみたいにふわって笑って、
あたしの頭に手を乗せた。
「…え、でも…
さっき…えぇ?!(汗)」
数秒前と同一人物とは思えないほどの
態度の豹変ぶりに、
あたしは理解が追い付かなくてプチパニック
『…?
ああ、
まあこれくらいは、
役得やろ?(妖笑)』
「っ?!(照)」
そういってあたしの唇を指でなぞるヒナちゃんに
思わず顔が赤くなる(汗)
『亮が好きなら、
そう言えばええ。
我慢なんかすんな。』
「…でも…っ」
こんなに汚れきった体で、
そんな都合いいこと…
『…難しく考えすぎやねん、
あほのくせに!』ッバシ!
そういってあたしの頭を小突く。
いや、つっこむ←
『なんやあいつに抱かれたこと
引け目に感じてるみたいやけど、
じゃあお前は、
いろんな女と寝まくったあいつを
汚いと思うんか?
そんな男には
もう触れてもほしくないって思うんか?』
「っそんなこと!!
…そんな過去なんかより、
今、側にいてくれればそれで…っ」
『…亮かて、いっしょかもしれんで?(笑)』
ヒナちゃんの言葉は、
いつも優しく、
あたしを包んでくれる…
『あいつにとって何よりショックやったんは、
ちいの体が
ほかの男に抱かれたことなんかより、
ちいの心が、亮から離れていったと
思ったことなんやからな…』
言葉を返さないあたしを
きつく抱きしめて、
耳元で、ヒナちゃんがささやく。
『いってこい。
んで、もっかい振られたら
…戻ってこい(笑)』
そういって、
背中を押された。
今、
あたしの足は、
まっすぐ亮に向かってる。
亮…
待ってて…