11 あたしがあなたを求める以上に…
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…
楽屋には、重い沈黙が続いていた。
ヤスが、なんや知らんけど
ちいを追いかけようとした俺を止めて
代わりに追いかけてってもーた。
まあ、
あいつはいろいろ気ぃつくやつやからな。
さっきも妙にむずかしい顔しとったし、
昨日の感じから
なんか察してくれてんのやろ、
とりあえずヤスやったら安心やし、
ちいはそっちに任して…
『…亮、さっきの話…』
錦[…なに、もう終わったやん。]
亮はそう吐き捨てると、
力なく、椅子に座りこんだ。
ヨコたちは記事に目を通したみたいで、
信じられないとでも言いたげに
目を見開いたり顔をこわばらせたりしていた。
そーいえば、どこまで書かれてんねやろ?
俺はすばるから記事を受け取り、
一通り目を通した。
なんや、これ…
あいつ、ちいの家まで行ってたんか…?
それよりも…
こいつ、もしかして…
…グルか?
だってそうやろ、ここまで的確に、
しかもあいつのあの勝手な交際宣言聞いてたってことは
現場におったスタッフの中に
記者が紛れ込んでたってことやろ?
…っどこまでくさっとんねん!!
俺は怒りのあまり記事を握りつぶした…
『っ亮、こんな記事信じんな!
しょせん週刊誌や、あることないこと…』
錦[…ちいは、事実やゆーてたやんか。]
『っそれは!』
錦[ってゆーかさあ!
もうええねん。
なんか、疲れた。]
『…はぁ?』
錦[…あいつ、最近忙しいゆーて
ろくに連絡もよこさんと、
こんな奴と遊んでたって…
けっきょくゲーノージンに言い寄られてほだされたんやろ、
っしょーもない…
どーせ適当に遊ばれて捨てられる…っ]
ーガッ!
横[っヒナ!(汗)]
俺は、思わず亮に殴り掛かった。
ヨコが止めてくれんかったら確実に、
馬乗りなってさらに怒りをぶつけてた。
…ほんまは、亮の気持ちかって
わかるくせにっ
亮が、ちいに出会う前…ひどいもんやった。
事務所やマネージャーからどんなけ注意受けても、
女遊びをやめる気配もなく、
でもいつも何かが欠けてるみたいに
虚無感を漂わせていた。
いつか言ってた、
[なんぼ抱いても、足りひんねん。]
そう言った亮の目は、とてもじゃないけど
遊び人の目じゃなくて、
真っ暗で、まるで闇みたいやった。
小さい頃からエリートコースで
ずっと仕事してた亮。
あいつは、商品としてじゃなく、
自分っていう存在を確かめるように、
女に狂っていってたんやな。
それでも誰のことも愛せずに、そんな自分さえ愛せずに…
そんな時、ちいに出会った。
最初亮が、
[今日、俺のこと知らん女に会った(笑)]
って笑いながら楽屋に入ってきたときは、
[“錦戸亮”知らんとかどんな女やねん(笑)]
ってみんな笑ってた。
けど、その女と会うようになってから、
亮に不特定多数の女の影は消えて、
なんかいつも楽しそうやった。
カメラマンからも、“表情が柔らかくなった”言われとったし、
亮本人も、
[最近、なんか調子いいねんっ。
頑張れば頑張るだけ、
自分の中がちゃんと埋まってく感じがする。]って
生き生きした表情でゆーてた。
その目には、確かに一筋の光を宿して。
後日、メンバーの飲み会にちい連れてきたときには、
二人はもう付きあっとって、
[“錦戸亮”知らんとかどんな女やねん(笑)]
ってどっか小ばかにしてた俺らはちょっとびっくりした。
だって、ちいがあまりにも
きれいやったから。
顔がええとか、格好がええとかじゃなく、
や、もちろん顔も可愛いけど(笑)
なんてゆーか、心がきれいなんやなって思った。
メンバーともすぐに打ち解けたし、
なんか、この子のそばにおると、
自分まできれいになってく感じがする。
亮もそんなちいをまぶしそうに見守ってて、
こいつが、亮を変えてくれたんやって、
まあ本人、そんな自覚ゼロやろーけど(笑)
その飲みの席で、お酒も入ってちいに
[大変やろ?“錦戸亮”と付き合うんは?]
ってちょっと意地悪して聞いたったんを覚えてる。
だって亮はこんなにマジやのに
知らんふりして近づいて、
実は“錦戸亮”ってブランド目当てで付き合われてたら
メンバーとして黙っとけんやん?
したらちいはキョトンって顔して、
[なんで?
…あ、好き嫌い多いから?(笑)]
って、ほんま無邪気に笑ってた。
そっから、会ったばっかの俺に
ひたすらのろけ始めて(笑)
しかもその内容が、
ああ、ほんまに“錦戸亮”じゃなくて
“亮自身”がみえてんねやなあって思わせるもんばっかで、
少しでもこの子を疑った自分が恥ずかしくなった。
そっから、その負い目も俺的にあって、
よくちいの相談に乗るようになったりもしたけど、
愚痴をこぼしてるようでも、
聞けば聞くほど、
お互い好きあってんのが痛いくらい伝わってきて、
二人とも、お互いとおる時が
一番幸せそうに笑ってた。
それやのに…こんな風に引き裂かれて…
亮からしたら、
信じてたちいに裏切られたって
思ってもおかしくない記事突きつけられて…っ
錦[…っ、なんやねん、
ほんまのことやんけ…]
丸に支えられながら、
亮がこっちをにらんでる。
でもその目にはなぜか生気が感じられなくて、
そうや、こいつかって、
ちいと会えへん間、
かなり弱っとったんや。
こんなことになって、平気なわけがない。
わかってはいたのに、
俺の崩れた理性は簡単には戻らんかった…
『…お前に、ちいの気持ちがわかんのか…っ』
錦[…わかりたくも、ないわ。]
そういった亮の目からは、
完全に、光が消えていた…
錦[しょせん、ちいもただの女。
…俺、だっさいよな?(笑)]
亮は自分をあざけるように
うつむいて笑みを浮かべていた。
その顔は、あるいは泣いてるようにも映る。
その言葉を最後に、
亮は、体を支えてた丸の腕を振り払い、
楽屋から出て行った。
亮が出て行った楽屋では、
メンバーの視線が俺に刺さる。
横[…おいヒナ、どーゆーことやねん…(汗)]
忠[信ちゃん、なんか知ってるん?]
『……っ』
俺が勝手に、べらべらしゃべっていいもんやろか…
でも…
昴[…もーえーやんけ。
お前らも、わかってないわけやないやろ…?]
そう言ったんはすばるやった。
丸[…っちいちゃんは、亮ちゃんが大好きやった!!]
忠[当たり前や!そんなんわかってる!
っでも…、あの跡…っ]
みんな混乱してる。
『…話すわ。お前らには、全部…』
ごめんな、ちい。
でも、こいつらはお前の味方してくれるから…っ
{関ジャニ∞さん!スタンバイお願いしまーす!!}
『…っ、行こ。話すんは仕事終わってからや。』
みんな、頷いて
楽屋を出た。
スタジオには亮が先おって、
しばらくしたらヤスも来た。
ちいは、今日んとこは帰らせたって聞いた。
それでええ。
どっちにとっても、唐突すぎた。
消化するにはもーちょっと時間かかるやろ…
その日の収録、メンバーは
まるで楽屋でのことなんてなかったかのように
いつも通りのテンションで
サクサク収録をこなしてく。
亮でさえ、笑ってた。
…相変わらず、その目には一切の光も感じれんけどな…
今思えば、こんとき、気づいてやるべきやったんや。
仕事が終わり、
俺は亮を除くメンバーを家へ招いた。
すべてを話すには、時間と落ち着ける空間がいるから…
…ほんまは、亮ともゆっくり話したかったけど、
仕事が終わると、
誰とも言葉を交わさず、
すぐに帰ってもーたからな。
帰る途中、一応許可を取ろうと
ちいに電話すると、
「みんなには中途半端にしちゃったままだったもんね、
あたしも気になってたの(苦笑)
本当は、あたしの口から言うべきなんだろうけど…っ
…ヒナちゃんに、任せてもいい?」
って、言ってた。
たぶん、思い出すんも辛いんやろ、
そらそーや、
だから俺は、『任しとき。』って笑って、
電話を切った。
家について、
みんな、リビングに
思い思いに落ち着くと、
視線が、俺の方に集まった。
しっかりせな。
『…話す前に、ヤス。
お前はあの俳優と友達なんやろ?
俺が話すから、多少なりそいつのこと
悪くゆーてまうこともあるかも知らん。
それでも、聞いてくれるんか…?』
そう、それだけが気がかりやった…
ヤスは優しいやつやから、
我慢さしてまで聞かせたくはない…
こんな、けがらわしい話…っ
安[っ信ちゃん(笑)
ほんま、優しいんやね?
そんなん気にせんでええねん。
友達やろーとなんやろーと、
…メンバーの大事な女傷つけられて
かばってやれるほど、俺、いいやつになれんよ?(妖笑)]
…おっと、ブラック安が降臨しとったんか(汗)
いらん心配やったな(笑)
『おん、そか(笑)
じゃあ、話す…』
俺は、すべてを話した。
ドラマの現場があの隼人とかゆう俳優の
独壇場になってもーてること。
ちいが亮との関係と俺を人質にされて、
あいつに逆らえんようになってること。
それをいいことにあいつが好き放題してること。
昨日起こった出来事のすべてと、その真実。
亮が目にした光景も…
そして、あの記事までもが、
おそらくあいつの陰謀やということ…
丸[っそんなん!
…かんぺきパワハラとセクハラやんっ
大人は何してん…っ]
丸、パワハラなんてよー知っとったな。
横[…やから、そいつは先に外堀から埋めてったんやろ。
誰も文句言えんよーに…]
ヨコ、なんや頭よさそーやんけ…
忠[じゃあ、ちいちゃんのあの跡も…っ
あの子はまだ未成年やで?!
…酒飲ました上に…っ薬って…!!]
大倉…長い話やったのに寝ずに聞けてんな。
安[…男のくずやな?(妖笑)]
ヤス、頼むからその物騒な笑顔をしまってくれ…(汗)
なんや、こーやって誰かに話すと、
俺ん中でもちょっとは整理ついて、
ほんの少し、軽くなった気ぃする…
こーやってメンバーに突っ込みいれるくらいの
余裕は少なくとも出てる。
ちいも、俺に話すことで、
ちょっとは軽くなってくれたんかな…
あれ?でも…
『…すばる?』
すばるがさっきから黙ってる。
一番に喚き散らすと思ったのに…
昴[…亮が、心配してた通りなったな。]
『…え?』
すばるがなにを言ってるのかわからず、
その場にいたみんながすばるの方を見た。
昴[…あんさ、ちいがデビューするって
俺らに報告してきたときのこと、覚えとる?]
忠[あぁ、俺らめっちゃびっくりして
テンションあがっとったのに、
亮ちゃんだけやたらテンション下がってたあれ?]
昴[そう、そんときさ、亮ゆーてたやん?]
ーーーーーーーー
横[や~、まさかちいが…]
昴[彼女の大出世やなあ!
なあ、亮!(笑)
…って、亮?(汗)]
錦[……おん]
『…なんや、うれしないんか?』
安[あーっわかった♪
ちいちゃんがテレビ出て人気者なんのが嫌なんやろ~っ
芸能人なっちゃったら、
もう亮だけのちいちゃんちゃうもんな~(笑)]
錦[っ…そんなんちゃうわ、ただ…]
忠[…ただ?]
錦[や、俺もこの仕事してるから
余計思うんやろーけど、
やっぱ、さ…忙しいやん…それに…っ]
昴[…まあ、今まで以上に
二人だけで会う時間はなくなるやろな?
…週刊誌とかにも今までの二倍気ぃつけなやし…]
ーーーーーーーーー
ああ、そんなこともあったな、
でも、そん時亮がゆーてたんは
会う時間が無くなるってゆーことやろ?
昴[…その、亮が言ってた“それに…っ”の
続きが気になって、
俺、あとで聞いたんよ、そしたら亮…]
ーーーーーーーーー
昴[なぁ、亮?
さっきゆーてた、ちいのデビューに気乗りせん理由、
俺が週刊誌に気ぃつけなあかんなるゆーて
遮ってもーたけど、それ以外に、
なんか言いかけてたやん?…なんなん?]
錦[…すばるくん…
や、もちろんそれもあるで?
新人がいきなり連ドラ主役なんてまずマークされるし、
…でも…
すばるくんも分かると思うけど、
この世界って、そないきれいなもんとちゃうやん?
裏はぐっちゃぐちゃで、欲望ばっかの汚い世界や。
そんな世界で、なんかあっても
すぐには駆けつけてやれん距離にちい置いとくなんて、
…
もしものことがあったら、
俺、自分を抑えれる自信、ないねん…っ]
ーーーーーーーーー
…亮、そんなこと…っ
まさに、ちいはこの汚い世界に住む
魔物の餌食になった。
昴[…俺も昔、荒れてた時期あるからわかるんやけど、
一回救われて、そん時信じたもんに裏切られるって…
もう、気が狂う思いや。
…俺かて、もし今お前らに見捨てられたら、
まっすぐ立ってなんておれん…っ
亮にとっては、それはちいやったから、
今、あいつはぐらぐらやっ
すがりつけるもんなら、なりふり構わん。
…たとえ、逆戻りする羽目になっても、
抜け出せんのや…っ]
安[ちいちゃんは裏切ってなんかっ]
昴[っそんな綺麗事やないねん!!!]
すばるが叫んで、
一瞬、空気が凍った…
昴[…っ悪い、ヤス。
でも、そんな理屈通じへんねん。
ちいが、亮との約束無視して
他の男に抱かれてた。
しかも亮は薬のこととか知らんねやろ?
…まあ、知ったとしても変わらん思うけど…
とにかく、その事実だけで、
亮の頭はいっぱいになってまう。
そんくらい…ちいは亮のすべてやったんや…っ]
誰も、言葉を発せんかった…
俺も、ほんまは今すばるの話を聞くまで、
なんで受け止めてやれんのやって
心のどっかで亮を責めてた…
でも、違った。
ちいが亮を求めてんのと同じくらい、
いや、もしくはそれ以上に、
亮にはちいが必要やったんや…
こーなると、亮の方が心配や。
亮…お前いま、どこでなにしてんねん…