12 嘘
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今日はテレビ局でレギュラー番組の収録。
…あの日ちいと別れてから、今日でもう3か月。
最後のちいのあの言葉、
あれが、ちいの本音なんかな、
海に行った日、ちいの様子はちょっと変やったけど、
あのときにはもう、ちいの心は離れてたんかな…
あかん、頭痛い。
俺の頭は完全に、考えることを怖がって、
思考は逃げてばかりいた。
考えた末にたどり着く、
残酷すぎる現実だけが目の前に用意されていて、
そこに行くのが怖くてしょうがなかった。
そんな俺の様子にメンバーが気付かへんわけもなく、
3か月も隠してたのに、
[そろそろ時効やろ]とかゆーて、
けっきょく昨日、みんなに全部吐かされた。
だれも、言葉を発さんかったけど、
みんな、怒りと心配と、不安の入り混じった
複雑な顔で話を聞いてくれてた。
すばる君だけは、話し出す前に
[コーヒー買ってくる。]とかゆーて楽屋出てって、
けっきょく戻ってこーへんかったけど…
でも、話したことで、ちょっと軽なったってゆーか、
考えても考えても答えは見つからんけど、
前に進むしかないんかなって思いだすのに、
3か月ってゆーんはある意味ちょうどいい時間やった。
…収録の時間まであと30分。
遅刻魔の俺にしては早く着いたな(笑)
でも、いっつも無駄に早く来るヤスとか
村上くんとか、だれも楽屋におらへん…
おっかしいなあ、
…15分前。
絶対おかしい。
この時間に来てないのなんて
いっつも俺か横山くんくらいやのに、
もしかして俺、集合場所間違ったかなあ?(汗)
それかもうみんなとっくにスタジオにおるとか?
ちょっと心配になって、みんなを探しに行くと、
普段だれも使わんはずの廊下の奥から、
何人かの話し声が聞こえてきた。
っと、思ったら、
なんか…怒鳴り声?聞こえんで…(汗)
え、ちょっと、大丈夫なんっ?!
気になって、でもちょっと
巻き込まれたら怖いなってのがあったから、
俺はそーっと近づいて、
聞き耳を立てることにした。
そしたら…
信じられん。
…ちい ?
ちい、と…∞のみんな。
え、なんなん、全員集合やん。
俺、呼ばれてへんぞー?
あ、すばるくんがちいの肩抱いてるっ!
え、ちょっとなにやってんの…?(汗)
状況がうまく飲み込めなくて、
しかもなんか声ちっさいから
うまいこと会話はつながらんけど、
とりあえずみんなのやり取りを眺めてた。
いきなりのことやった…
ガッ…!
よく、わからんけど、
亮ちゃんが叫んだと思ったら、
すばるくんが亮ちゃんに殴り掛かって、
ちいは咄嗟に、かばうように
亮ちゃんとすばるくんの間に割って入り、
亮ちゃんの代わりにすばるくんに殴り飛ばされた。
その拍子に、床に倒れこむちい。
駆け寄りたい衝動を必死で我慢していると、
すぐさま、すばるくんがちいの体を抱き起こした。
…なんなん、ほんまに…
しかも、さっき亮ちゃん、
[最低女]とか叫んでた?
それって、ちいのことゆーてんの?
なんで、それですばるくんが亮ちゃん殴ろうとするん?
なんで、ちいは笑ってんの…?
目の前で繰り広げられる
めまぐるしいほどの展開に、
頭は真っ白になる。
程なくちいが、こっちに向かって
走ってくるのが見えたけど、
体が固まって、俺はその場から離れることができなかった。
見つかる…っ!
そう覚悟したけど、
ちいは俺に気付かなかったのか、
まっすぐ出口に向かって走っていった。
∞のみんなは、ちいが去った後も
そこから動く気配もなく、
6人で何か必死に話していた。
俺は、もっとはっきり
会話が聞こえるくらいのところまで近づいて、
そっと、聞き耳を立てた。
亮[っすばるくん!どういうこと?!
なんですばるくんがあんな女かばってんの?!?!]
昴[………]
安[っなあ!渋やん!!]
丸[ちいちゃんと、なにがあったん?!]
すばるくんに食って掛かる三人。
昴[…っお前ら、なんも知らんと
あいつに…っなんてことしたんやっ]
すばるくんは歯を食いしばって、
言葉をかみ殺すようにつぶやいた。
その様子を見ていた横山くんは…
横[なんか、知ってんのか?すばる…]
…は?
昴[………っ、(汗)]
雛[…話せや。
俺らにも隠さなあかんことなんか?]
村上くんまで、待って、なにゆーてんの?
しばらく考え込んだ後、
すばるくんは重々しく口を開いた。
昴[………大倉には、黙っとけよ…。]
…え?
すばるくん、ほんまになんか知ってんの?
なんですばるくんが…
てゆーか、やっぱり、
ちいのあの別れには、なんか事情があったん…?
昴[実はな、あいつらのこと、、
……とっくに、バレとったんや…。]
[[…はぁ?!]]
昴[大倉と、ちいが別れるちょうど一週間前。
ちい、社長に呼ばれて、事務所に来とってん。
そん時、社長がギリギリで差し押さえたっちゅう
大倉とちいのデート現場の写真と、
そのことが書かれた
フライデーのゲラ見せられたらしい。]
[[………]]
昴[俺も偶然、別件で事務所行っとって、
来たついでに社長にあいさつでも思って社長室寄ったら、
中からちいの叫び声聞こえるからさ、
ノックすんのも忘れてドア開けたら、
床にへたり込んで泣いてるちいと、社長、
それからなんでか、光一くんが立っとった。
俺、詳しく聞こうと思ったんやけど、
ちいが急に立ち上がって、社長に向かって
“一週間以内に、約束は果たす”ゆーて、
俺の手ぇ引っ張ってさっさと出て行ってもーたんや…
…
んでそのちょうど一週間後に、
ちいは大倉を振った。]
横[…それって(汗)]
昴[別れろ…って、言われたんやろうな。]
丸[っそんなんっ…]
昴[そん時は、なんぼ聞いてもはぐらかすばっかりで
ぜんぜん教えてくれへんかってんけど、
大倉がちい探しに行って、
あいつらが完全に別れた時、
…あいつ、もう限界やったんやろな、
ぼろぼろ泣きながら、やっと話してくれたんや。]
[[………]]
昴[…っあいつは!
…大倉を守ってくれたんや。
今の俺らにとって、女関係のスキャンダルが
どんなけ重いか、理解して、
19かそこらの女が、自分の感情かみ殺して、
大倉の…関ジャニ∞の…っ
俺らの未来を、守ってくれた…。]
安[…っちいちゃんの嘘つき…っ
どこが…理由なんてないやっ…!]
昴[…あの時、
社長室に部外者のはずの光一くんがおったんが
どうしても気になって、
飲んでる時にさりげなく聞いてみてん、
そしたらさ…、っ。]
雛[…なんやねん?]
昴[…っ俺も、信じられへんかってんけど、
あの時光一くん、もし、ちいが
別れたくないってごねたら、
無理やりにでも大倉と引き離すために
ちいを……っ、ヤれ、って、
命令受けてたんやって…
二度と、大倉の元に戻られへんくらい、
めちゃくちゃに、しろ…って…っ]
亮[…なんやねん、それ?
いくらなんでも、手段選ばへんすぎるやろ…!]
昴[…でも、ちいが条件飲んでくれて、
そういう強行手段はとらずに済んだから、
よかったわ…って、光一くんゆーてた。
あいつ…社長に別れろって言われて、
一番に考えたんが、
自分の幸せじゃなく、
大倉の未来やってん…
事情聞き終わった後、このままでいいんかって、
お前はどーすんねんって聞いた、
そしたら、あいつ、なんて言うた思う…?]
[[………]]
昴[…めっちゃ、綺麗な顔して、
笑ってさあ、
“忠義の幸せが、私の幸せ”って…っ]
すばるくんの話を聞きながら、
気づけば俺のほほには、暖かいしずくが伝っていた。
ちい…
お前、いったい、自分一人を悪者にして、
何人の心を救おうとしたん…?
‘俺が守る’なんてでかい口叩いて、
けっきょく、守られてたんは 俺。
なんも知らんと、悲劇のヒーローみたいな面してた俺の影で、
表面上は、あざけるように笑いながら、
いったいどれくらい、一人で涙流したん?
俺は、どんなに落ち込んでても、
そばにはいつも必ずメンバーがおってくれたし、
味方になってくれてた。
そんな俺の辛さなんかとっくに及ばんところで、
お前はずっと一人やったん?
安[…っ!大、倉…?!(汗)]
どんなにがんばっても、
零れ落ちる涙は止まってくれなくて、
俺は無意識のうちに、みんなに駆け寄っていた…
みんな、特にすばるくんは
びっくりしてか、ちょっと不安そうに俺を見ていた。
『今の話…ほんまなん…?』
昴[…ほんまや。]
…っ!
ちい追いかけようとする俺の前に、
亮ちゃんが立ちふさがる。
『っどいてや!いまならまだ…っ』
亮[っあほ、落ち着け!
今追いかけたら、ちいの決意が無駄になる…っ]
決意…?
なんやねん、それ…っ
『うるさいっ!
俺はちいを守らなあかんねん!!
ちい一人にそんな辛い思いさせて、
黙ってられるかぁ!』
ガッ…!
『…ったあ、(汗)』
昴[…今まで散々あいつ一人に背負わしといて、
いまさら何都合いいことゆーとんねん。
…あいつは強いよ。ええ女や。
それに引き換え…お前はなんやねん。
女に振られたくらいでうだうだ腑抜けやがって、
そんなお前に、あいつ守れんのかっ!!]
『…っ』
返す言葉が見つからんかった。
すばるくんの言う通りや、今まで散々
ちいばっかに責任負わして、
ちいが、わざわざ俺が苦しまんように、
周りがみんな俺の味方してくれるように
お膳立てしてくれた上にのうのうと過ごして、
そんなちいを…俺が守るなんて…
昴[…っは、なんや、
守るなんてたいそうなことゆーても、
けっきょくはその程度の覚悟やったんか。
あきれた腑抜けやな。
やめとけやめとけ!お前には無理や…っつっ!]
…ガンッ!
『…っはあ、はあっ、』
頭に血が上って、俺は思わず、
すばるくんの顔を思いっきり殴った。
安[っ!ぉ大倉っ!!
お前なにやって…っすばるくんっ(汗)]
メンバーを本気で殴るなんて初めてやったから、
みんな目をまるくしてた。
村上くんと横山くんを除いては、
『…確かに、
今まであいつには
散々辛い思いさしてたやろうし、
今さら守りたいなんて都合いいかも知らん。
でも!
…俺にはちいがおらなあかんねや…
社長からも、世間からも、…誰からも!
俺が守る。
今度こそ、辛い思いなんかさせへんっ
やから…俺…っ』
焦るヤスとか丸をしり目に、
すばるくんはすぐに起き上がって、
俺に向かってふんって笑った。
昴[…そんくらい、あいつにも
本音でぶつかったらええやん。
…
守ってやれよ。]
『っすばるくんっ、みんな…
俺…俺ぇ…っ(泣)』
泣き続ける俺を、村上くんが、
そっと、抱き寄せた。
雛[…行って来い。大倉。
今ならまだ、近くにおる…]
村上くんの無駄にごつい胸を借りて、
俺は涙を流し続けた。
守れなかった ふがいなさ、
気づけなかった 悔しさ、
悲しい程の ちいの強さ…
すべてが、今となっては悲しみにしか姿を変えず、
あふれ出る涙は、情けない俺を容赦なく責め立てる…
神様、あんたは意地悪や。
なんでこんなに辛い選択を
ちいにだけ課したんですか?
時間を戻せるのなら…
どうかその試練と、
ちいを守るチャンスのすべてを僕の身に…
ちいが今なお背負っている
辛さも悲しみも、
半分なんてケチらずに、ぜんぶ俺にください。
ちいを苦しめることに比べれば、
そんなもの、怖くなんかないから…
この涙が止まったら、
俺は君を探しに行く。
もう迷わへん。
守るから。