18 I was happy because dare you .
name change .
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『ただいまーーー。』
妃《っおかえりなさい!》
玄関を開けると、
笑顔で駆け寄ってきてくれる妃愛
妃《今日はね、酢豚つくったの!
初めて作ったんだけど、
美味しいんだから!(笑)》
『えぇ?なにゆーてんの、
酢豚はお前の唯一の
得意料…理……?(汗)』
え…、なに?
今喋ってんの…俺…?
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「章ちゃん!あのね!
あたしお母さんに教えてもらって、
酢豚だけは得意なんだ!♪」
『酢豚ぁ?!
なにそのチョイス(笑)』
「えぇ?!
章ちゃん、酢豚嫌いなのぉ?!(汗)」
『や、ふつーに好きやけどさ(笑)』
「なにそれぇ?(笑)
でもね、これは特別!
これ食べたらね、章ちゃんきっと
酢豚大好物になるよ!♪」
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誰や…
あんたは…誰……?
妃《…え?
章、ちゃん……?》
妃愛も不安そうにしてる…(汗)
それよりなんやろ…
この感じ…、
この会話、前にもどっかで…っ
『っあ、ごーめんごめん!
俺なんか今日疲れてるみたいで…(苦笑)』
妃《そうなんだ?(汗)
じゃあご飯食べて、今日は早く寝よ?♪》
やっばい、本気で疲れてんのかな…
荷物を部屋に置いて、妃愛が待つリビングに急ぐ、
テーブルに二人分の夕飯の用意。
真ん中にはメインディッシュ。
妃《じゃあ、食べよ?》
『うんっ、いつもありがとうな♪』
妃《な、なに急に!(照)
いいから、食べて食べてっ》
妃愛に急かされて酢豚を一口ほおばる。
……あ、れ?
酢豚って、こんな味やっけ…?
『…妃愛、これ、酢豚?』
妃《…?
うん、そうだけど…
なんかおかしかった?》
『いや……なんか……っ?!』
妃《っ章ちゃん?!(汗)》
またや…頭が割れそうに…っ
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『っうっま~~~~~!(笑)』
「でしょお?♪」
『ーー!
これ、めっちゃうまいやん!』
「そーなの!
これのポイントはね、パインを入れることなんだよ♪
うちのお母さん直伝の秘密兵器なんだから(笑)」
『こんなうまい酢豚食べたことない!
これやったらーーー
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『……“これやったら、俺大好物にするわ、ちい”…』
…“ちい”?
なんで、今亮の元カノの名前なんか…っ
妃《…章ちゃん?
……思い出した、の…?》
『…妃愛?…思い出したっ、て…?』
なに?妃愛は何でこんな青い顔してんの?
なんか知ってんの?
妃《…章ちゃん、聞いて。
ちいちゃんは……》
『“ちいちゃん”……?
“ちい”……?
っ…………?!?!?!?!』
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「章ちゃん!」
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『…………………ちい。』
そう呟いた俺の頬には、
生暖かい涙が伝っていた。
ああ、なんで俺は、
忘れることができたんやろう。
名前を呼んだだけでこんなにも
締め付けられるほど愛しい人の存在を…
俺は泣いた。声も上げずに。
妃愛はそんな俺を、
突き放すでもかといって抱きしめるでもなく、
ただ、同じように前に座り込み、
同じように、静かに涙を流していた。
しばらく涙を流し、
少し平静を取り戻して、妃愛の方を見ると、
妃愛は、覚悟を決めたような表情を浮かべ、
今までに起きたことをゆっくりと話してくれた。
俺が忘れていたのは、
ちいのことだということ。
妃愛が、俺の彼女だと嘘をついていたこと。
メンバーとちいは、
俺の脳に負担をかけないように、
思い出させるようなことは言わないと決めていたこと。
妃愛は泣いていた。
終始 “ごめんなさい” と繰り返しながら…
そして俺は思い知った。
記憶を失った俺が、
どんなにメンバーを、妃愛を、
そして最愛のちいを傷つけていたのかということを…
その日は疲れからか、
ひさしぶりに深く眠った。
ちいの夢を、見た気がする。
まるで贖罪のように、
幸せやったあの日々を。
次の日、目が覚めると、
妃愛はいなかった。
代わりにあった置き手紙には、
もう妃愛がここには帰ってこないことが書かれていた。
でも、今の俺は正直それどころやなくて、
早くメンバーに、
なによりちいに会いたい気持ちで一杯やった。
一晩寝て、たぶん記憶は全部戻ってる。
気がかりなんは、昨日の信ちゃんと亮のやり取り…
朝起きて、一番にちいに電話したけど、
発信音さえならんかった。
…着拒って可能性もあるけど…(汗)
信ちゃんも亮も連絡取れへんゆーてたし…
楽屋に着く。
…なんや、ドア開けんの、緊張する…
ーガチャ…
『…ちゃっすー。』
横[おはよ、ヤス]
丸[章ちゃん章ちゃん!ちょ、これ見てやー♪]
『…っちょ、ごめん丸、
その、信ちゃん、か亮来てない…?』
丸[信ちゃんはまだやけど、亮ちゃんやったら…]
錦[何?ヤス。]
『…亮、その…
ちい…、今どこにおるん?』
[[っっ?!?!]]
楽屋のメンバーみんながこっちを見た。
錦[……なんで?]
昴[………。]
『…みんなも、今までごめん。
俺、昨日全部思い出してん…っ
その…ちいのこと…も…(汗)』
ーガチャっ
雛[おはっす!
って、なん?いきなりこの空気(笑)]
横[…ヒナ、ヤスが…(汗)]
『信ちゃん…
俺、ちいのこと…っ』
雛[記憶戻ったんか?!?!?!]
でかい声…(笑)
『うん…今までその…、ごめ……っ?!』
ーッドカ!ー
昴[…っ!]
雛[っすばる!(汗)]
いきなり、すばるくんに殴られて、
俺は茫然と地面にへたり込んだ。
忠[大丈夫か?!ヤスっ(汗)]
昴[謝る相手、間違ぉてるやろ…っ]
雛[すばるっ、落ち着け…!]
すばるくんに言われて、はっとした。
『…そやんな。俺、
ちいに会いたい…っ』
錦[…ちいは、おれへん。]
『…え?』
亮の言葉の意味が、一瞬分かれへんかった。
ちいが…おらん…?
雛[正確には、少なくとも
すぐ連絡が取れるようなとこにはおらん、やな。
あいつ、俺らに何の相談もなしに
住所もケータイも替えとる。
大学も、通信制に変更したらしい。]
『……なんで…っ』
錦[お前がそんなんやからやろ?!
お前が…っ、ちいを追いこんで、
ちいは耐えられへんくなって逃げたんや!
全部お前のっ]
雛[っ亮!!
…ヤスが悪いわけちゃうやろ…]
錦[っでも村上くん!]
雛[ええ加減にせえ!
亮もすばるも!
ヤス責めたところでなんも変わらんやろ!!]
信ちゃんの言葉の後に、
声を発する人はおらんかった。
忠[…ちい、もう俺らの前に帰ってこんのかな…]
ボソッと大倉がつぶやいた言葉は、
みんなの想いやった。
やりきれない思いを抱えて、
季節は巡り、2度目の春を迎えても、
ちいが俺らの前に姿を現すことはなく、
気づけば俺らは、紅白にも出場するような
アイドルになっていた。
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「ねぇ、章ちゃん?
あたし、あなたに逢えて…」
――――――――――――――
ちい…
彼女は今、笑ってるかな?
俺に出逢ったこと、後悔してないとええな。
俺はお前に出会えて、
こんなにも幸せな気持ちを知ったから。
願わくば、どこかの空の下で
幸せそうに笑っているであろう彼女の耳に
この歌が届きますように。
そんな下心を込めた、未練たらしいラブソング。
決して届くことはない、
終わらないラブソングを今日も…
神様どうか、
彼女を守ってやってください。
僕のこれからに待ち受ける
幾千もの幸せと笑顔のすべてを彼女のもとに。
そのためなら僕はこのまま、
一生解けない雪に囲まれて、
死んでも、構わないから…