17 Feeling of Shota ~lost lover~ .
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――― 時は遡り、病室で目を覚ました次の日。
昨日目が覚めてから、正直ずっと体が重い。
寝続けたせいかな?
メンバーとかには余計な心配かけたくないから、
元気にふるまってるけど、
そういえば、あの女の子…
“ちいちゃん”
亮の彼女。
俺が目覚めた時に、
メンバーと一緒に真っ先に駆けつけてくれた。
彼氏の亮の前で俺に抱き着いて泣くほど、
俺を心配してくれてた女の子。
あの子の笑顔がどっか懐かしく思うんは、
たぶん亮の彼女として
事故に逢う前に何回か会ってたから…。
お医者さんの話では、
俺はその事故で一番大事な記憶を失くしてるらしい。
おそらく俺の彼女やっていう
“妃愛”のことなんやろけど、
…なんか、俺、疲れてんのかな、
家族がおって、メンバーがおって、
妃愛っていう彼女までおってくれんのに、
心が元気にならへん。
お医者さんは、記憶を失くした虚無感からくる
精神的疲労やろうって言うてたけど、
なんか、そういうのじゃなくて、
おれはもっと、大事なもんを
失くしてしまってるんとちゃうかな…
ー…ガラッ
考え込んでた矢先、おもむろにドアが開いた。
『…誰?』
外はちょっと薄暗くて、
ドアの向こうに立ってる人の顔がよぉみえん、
「………あたし。」
聞こえたのは、少し甲高い女の子の声。
『妃愛?』
反射的にその名前を呼んだ。
だって、俺の病室に来る女の子って少ないし…
「っ?!(汗)」
「……あ、ちい…っ」
声の主は少し戸惑ったように息を吸って、
まるで震えそうなんを抑えるように
か細く言った。
『…ちい…?
っああ!亮のっ(笑)
どしたん?ってか、ごめん、
顔よぉみえんから、もぉちょい寄ってもらえる?(汗)』
「…っあ、や、
すぐ、帰るから、ここで…っ(笑)」
意外な名前にびっくりしたけど、
俺はなんか嬉しくて
椅子をベッドの横に出した。
でも、ちいちゃんがそれに座ることはなかった。
『そ?
ああ、面会時間かぁ。
せっかく来てくれたのに悪いなぁ(汗)』
ちらっと時計を見ると、
18時47分
ここの病院の面会時間はたしか19時までやから…
あと13分?!
そんなけのために、来てくれたんや…
「…大変、だったね…事故…っ
体、もう平気なの?」
気のせいやろか、
絞り出すように話すちいちゃんの目が
きらきら光ってるように見えるけど…
『ん?ああそっか、俺事故ったんやなぁ(笑)
体はもうほんっま、事故ったとか嘘やろってくらい
元気なんやけどなぁ!』
「みたいだね(笑)
…その、
記憶…は…?(汗)」
『…医者がゆうには、
俺、一番大事な人のこと
忘れてもーてるらしいねん…
でも、メンバーのことも家族のことも、
自分のことも覚えてるのに、
それ以上に大事な人って…(汗)』
俺の話に、困ってるんかな?
沈黙の空気が流れる
「……恋人……とか?」
ちいちゃんがポツリとつぶやく。
『それな!
妃愛がそうらしいねんけど…
なんか、俺が忘れてるからなんかもしれんけど、
…違和感ってゆーか、よくわからんくって…
って、こんなん妃愛に悪いよな(苦笑)
今の、ちいちゃんと俺だけの秘密なっ(笑)』
「……うん(苦笑)」
不思議と、すらすら言葉が出てきた。
誰に言うたらええんかもわからんと
もやもやしてた心のとっかかり。
『こんなんメンバーにも言えんかったのに、
なんでかちいちゃんにゆーてもーたっ
なんか、ちいちゃんって親近感沸くんよな(笑)
あ、変な意味ちゃうで?!(汗)』
「…わかってるよ(笑)」
“親近感”
“二人の秘密”
そんな
中学生や高校生のカップルみたいな言葉が、
なんかちょっとくすぐったくて、
ほんまちょっとだけ、
切ないような…
『…なあ、変なこと聞くんやけど、
ちいちゃんって、
俺のなんやったん?(汗)』
たまらず聞いてもーた。
なんか、記憶の中におるわけじゃないのに、
この子の笑顔は、
声は、言葉は、
妙に俺ん中を揺らすから…
「………。」
沈黙。
そらそーか、困るよな、こんなんいきなり言われても…
『あっごめんな?
なんか、ちいちゃんって
初めましてな気がせんくて…(汗)
亮の彼女さんやねやったら、
紹介とかされてたんかなって…っ』
うそや、
俺ほんまは、
ちいちゃんに違う答えを求めてた。
『…なんか、ほんまにごめん(汗)
あかん、俺いま、妃愛にもちいちゃんにも、
亮にも悪いことしてる…っ
俺、最低や…っ』
俺にとって都合のいい答えを、
なんでか彼女が言ってくれる気がして…
ほんまは、
“亮の彼女のちいちゃん”
よりも、
もっと俺に近い
“ちい”
を求めてたなんか…
最低や、俺…
「だまっちゃってごめん(笑)
別に、怒ってないよ!
そ、あたしは亮の彼女として
事故の前に章ちゃんに会ってたんだよ?
…忘れちゃっても仕方ないよ、
一回しかあったことないんだし(笑)」
パニくる俺を不憫に思ったんか、
ちいちゃんが早口で話す。
でもそっか、
やっぱりちいちゃんは、
“亮の彼女のちいちゃん”
なんやね…
『あ、そうなん?
でも悪いわ~(汗)
もう忘れんから!ごめんな?!』
「…気にしないで(苦笑)」
そういって笑ったちいちゃんは、
ほんまにちょっとやけど、
さみしそうに見えて、
俺はたぶん、この時彼女が
俺のベッドのわきに座ってたら、
なんも考えずに
彼女を抱きしめてたと思う。
「…そろそろ、面会終わりかな…」
そういったちいちゃんは、
なんかほんまにさみしげで、
消えてしまいそうなほど儚く見えて…
『っ、また!…来てや。』
反射的に、そう叫んだ。
『…病院、ひまやねん(笑)』
言い訳のように付け足した。
ほんまは、理由なんかいらん。
ただもうちょっと、
彼女とかかわってたいと思った。
「…心当たりはないと思うから、
聞き流してくれていいんだけど…っ」
帰ろうとして背中を向けたそのままで、
ちいちゃんはゆっくりと話し出した。
『…?』
なんかしらんけど、
すごい大事な気がして、
俺は彼女の声を聞き逃さんように、
耳を澄ませてた。
彼女は少しこっちを振り返って、
懐かしいあの声で…
え、懐かしい、?
「ねぇ、章ちゃん?
あたし、あなたに逢えて…」
≪面会時間終了でーす!≫
「…っあ…」
≪恐れ入ります、面会時間が終了しましたので、
速やかに退室願います。≫
「…はい。」
けっきょく、大切なところは
看護婦さんの声に遮られて
俺の耳に届く前に墜落した。
『…“章ちゃん”?
“あなたに逢えて”…?
つづきは、なんやったんやろう…
“ちいちゃん”…』
耳に残った言葉のかけらは、
脳裏を忙しく駆け回り、
俺はいつの間にか、眠りに落ちていた。
あれから3週間たって、俺は晴れて退院!
入院中は絶えずメンバーとか友達が
お見舞いに来てくれて、
今日はみんなが退院祝いの花束もくれた!
俺って幸せ者やなー(笑)
…でも、あれから、
ちいちゃんが病院に来ることはなくて、
亮に聞きたくても
なんか毎回話題そらされたり、
あの時の言葉の続き、聞かれへんままや…
まあでも!
メンバーに迷惑かけた分、
これから仕事もがんばらななー!
『おっはよーございます!
今日からまた、よろしくおねがいしまーーーーす!!!』
横[ヤス、うるさい!]
丸[章ちゃんテンション高いなー!(笑)]
『あったりまえやん!
迷惑かけた分、しっかり働きますよー♪』
忠[ヤス、なんか事故ってうざさ増したんちゃうー?(笑)]
昴[…色ボケしてんやろ。]
雛[っすばる!(汗)
ヤス気にすんなよ!
すばる昨日の撮りけっこうかかって疲れとんねん(苦笑)]
すばるくんの言葉に、俺はひやっとした。
『…う、うん(苦笑)』
雛[どや、ヤス?
妃愛とは順調なんか?]
気ぃ使ったんやろな、
信ちゃんが聞いてくれたけど、
俺は正直気が重かった。
『…まあ、うん、そやな。(苦笑)』
曖昧な返事をしてしまったことを後悔するよりも一瞬早く、
信ちゃんが俺のそばに寄ってきた
雛[今日の夜、時間あるか?
復帰祝いに、おごったるわ。]
錦[………。]
そんな優しくせんといて。
俺は今、一番大事な仲間を裏切ってるのに…
仕事が終わって、コーヒー飲んでたら、
信ちゃんも着替え終わったみたいで、
二人で近くの個室居酒屋に入った。
乾杯をして、信ちゃんは他愛もない話をする。
俺が話しやすいように、
タイミングをつくってくれてるんや。
この人にやったら、言ってもええかな…?
俺はこの夜、久々のお酒でちょっと気が大きなってたんや。
雛[それでな、すばるが…(笑)]
『信ちゃん!
ちょっと、聞いてもらってええかな…?』
雛[…妃愛のことか?]
黙ってうなずく俺に、まったく動揺してへんのは、
この人が恐ろしく勘がよく、
そして仲間思いやっていう証拠なんやろな。
『…俺な、正直わからんねん…っ
一番大事な記憶失くしてるって言われて、
彼女やっていう妃愛のことやと思った。
でも、その、
妃愛のことは、彼女やって一生懸命思ってるけど、
ってか事実彼女なんやけど、
亮の彼女の
“ちいちゃん”のことが頭から離れへん…
あの子が一回、俺の病室に一人で来た時あってんけど、
そのときから…
俺、いろんな人裏切ってるよな…っ(苦笑)』
たまってた想いを、一気に吐き出した。
この人なら、受け止めてくれる気がして…
案の定、黙ってまっすぐ俺を見る信ちゃん。
『…信ちゃん。』
雛[…ん?]
『…ちいちゃんって、
おれのなんなん?』
雛[………。]
『ほんまに、
亮の彼女ってだけ?
俺っ、前に彼女が俺の病室来たとき、
ほんまは彼女に…っ』
雛[っヤス!!]
溢れそうになった俺の本音は、
信ちゃんのまっすぐな声に遮られて、
正気を取り戻した。
『…ごめん。
でも、ほんまに、
そんな薄い繋がりな気がせんくて…(汗)』
言いながら、なんでか、
俺は泣いてた。
訳はほんまにわからんけど、
たしかに俺の頬には温かい涙が伝ってた…
雛[ヤス…、申し訳ないけど、
俺の口から言えることはなんもない。]
『…そやんね、ごめん…』
雛[でもな、誰になんて言われても、
お前は自分の気持ちを一番大事にしろ。
今までも、そうやって大事なもんを守ってきたんや。
たとえ記憶を失くしても、
忘れることなんかできん思い出が心にあるはずや。]
『…信ちゃん…』
俺はあほやけど、
この言葉を、絶対忘れたあかんってすぐに理解した。
『記憶はなくなっても、心がおぼえてる…?
…っ、どうしよう、信ちゃん、
俺、涙が止まらへん…っ(泣)』
その晩信ちゃんは、
ただひたすら涙を流す大の男に、
怒るでも呆れるでもなく、
ただそばにおって、背中をさすってくれた。
それから1週間後くらいに、
俺は妃愛に一緒に住もうと提案した。
いきなりの提案に妃愛はちょっとびっくりしてたけど、
笑顔で受け入れてくれて安心した。
早く、俺の中を妃愛でいっぱいにしたい。
たとえ俺がなんかを失くしてるとしても、
そのせいで今あるもんをなくすことは愚かやと
俺なりに考えて思ったから。
俺を愛してくれる、可愛い妃愛。
できるだけ長い時間を妃愛と過ごして、
俺の中の深いとこから出てってくれへん、
“ちいちゃん”の影を消してしまえたら…
きっとこの時の俺は、
自分が楽になることしか考えてなかった。
そのためにいろんな人が
犠牲になってることに、
気づかんようにしてた。
3ヶ月くらい経ったある収録の日、
俺はあれから、妃愛とたくさんの時間を過ごして、
それなりに深い関係も持って…
仕事も休んでた分がんばって、
事故にあってから欠けてしまったピースを
埋めようと必死で走った。
久々の、関ジャニ∞みんなでの収録
楽屋は相変わらず騒々しい
でも、亮だけはなんかさっきからボーっとしてる。
ープルルルル…プルルルル…ッピ
『もしもし、…ああ、妃愛?
……うん、大丈夫、
今日はこの後撮影だけやからすぐ帰るよ…
…あ、ごはん?んーーー、……わかった(笑)
一緒に食べよか!……うん、
…うん…じゃーね!…』
妃愛からの電話、
内容は、今日の晩飯は家で食うんか外で食うんかってこと
雛[なんやヤス、電話、妃愛か?]
『うん!今日何時に帰ってくんねやー?って。』
錦[え?ヤス、今妃愛の家泊まってんの?]
え、亮?
俺たしか、同棲してすぐ
メンバーにこのことゆーたよね…?
横[なんやどっくん、話聞いてなかったんか?
ヤスちょっと前から…]
『俺なっ、今妃愛と一緒に住んでんねん(照)』
錦[……そーなんや。]
昴[………。]
なんか、神妙な顔になる亮と、
さっきから、ってか、
俺が仕事に復帰したあたりから
なんとなくいっつも機嫌悪くて黙ってるすばるくん。
『って、前におれみんなの前でゆーたやんか!
なんで亮きいてないねん!(笑)』
和ませようとおどけて見せても、無反応。
…なんやねん…
雛[っそういえば、亮!
お前最近、ちいと連絡取ってへんか?]
空気を読んでか話題を変える信ちゃん。
…え……まって………っ
錦[…いや、俺もそれ聞こう思っててん。
村上くん、ちょいちょいとか電話してたやん?]
雛[や、そやねんけど、2ヶ月くらい前かな?
一緒に晩飯食ってたら急に帰ってもてなぁ、
家帰ったかな思て電話しても出ぇへんし、
そのあとも音沙汰なしや。]
………あたまがっ(汗)
『……っ!』
丸[っ章ちゃん?!どないしたん?!(汗)]
忠[頭痛いんか?!ヤス!]
突然頭が割れそうに痛くなって、
たまらずその場にうずくまった。
『…………“ちい”…?……っ』
信ちゃんの発したその名前が、
頭の中で割れるほど鳴り響いてる…っ
横[…“ちい”?
ヤス、なんか思い出したんか?!]
みんなの動きが止まったかと思ったら、
横ちょが重そうに口を開いた。
“思い出した”…?
『…いや、そーゆーのじゃないねんけど…
ただなんか、その名前聞いた途端、
頭の奥の方がいたなって…(汗)』
この感覚…いい夢見た後の寝起きみたいな…
たぶん考えても思い出されへん、
もやもやした感覚…
『でも、ちいちゃんって、
あの亮の彼女やった子やろ?
亮、連絡取ってないって、
あんまりうまくいってないん?』
久々にその名前を聞いて動揺したんかな。
俺はそれを隠すように、
慌てて亮に話題を振った。
錦[……別れたんや。
その話はもー俺の前ですんな。]
でも、亮の口から出たのは想像もしてなかった言葉で、
心なしかみんなも一瞬戸惑ってた。
[[っ?!………。]]
『っあ、そうなん?
なんか、悪いなあ…っ(汗)』
別れてたんか。
亮と“ちいちゃん”…
…っ?!
あかん、なんか、その名前を聞くと、
頭が割れそうになる…
『ごめん、俺今日はもう帰るなっ(汗)
なんか体調悪いみたいやし、
妃愛も家で待ってるしさ…(苦笑)』
雛[お、おう、またなっ。
妃愛に、よろしく…(苦笑)]
億劫な空気を振り払うように、
俺は妃愛の待つ家に帰った。
こうやって、心が揺らぎそうになるたびに、
妃愛という確かなものにすがりついては
自分を保とうと必死になる。
俺はほんまに
妃愛を愛してるんか?
その答えさえ、
どうでもいいと思ってる。
今の俺は、
昔の俺から見たらやっぱり
みじめってやつなんかな…
それでもいい。
恋人を忘れた俺には、
こんなことしかできひんから…