11 I love you forever , but ...
name change .
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
妃《…ちいちゃんの言う通り。
あたしと章ちゃんは…恋人同士だったの。》
「…っ」
わかってたとはいえ、実際こんなに
きれいで大人っぽくて、
章大と同じ世界にいる妃愛さんの口から聞くと
少なからずショックだな…
妃《…3年くらい、前になるのかな…
まだ章ちゃんもあたしも駆け出しで、
最初は、ただの気の合う同期みたいな関係だった。
この世界でこれから一緒に頑張っていこうねって、
お互いの悩み相談したりね…
でも、いつの間にか、あたしたちはお互いに
惹かれるようになってて、
自然に、付き合うようになったの…》
…聞キタクナイ…
妃《本当に、幸せだった…
周りからも祝福されてたし、
あたしも、きっと章ちゃんも、
お互いが特別で、大好きだった…っ》
…ヤメテ…ッ
これ以上、二人の幸せな思い出なんて、
章大が、あたし以外の人と愛し合った過去なんて、
聞きたくなかった…
妃《…結局、
すれ違ったまま別れちゃったけどね…(苦笑)》
そういって、苦笑いを浮かべながら遠い目をして、
妃愛さんはうつむいた。
「…えっ?」
妃《…章ちゃんと付き合ってからしばらくして、
あたし、初めてドラマの主演のオファーをいただいたの。
あたし嬉しくて…っ、
撮影期間は、もうそれしか頭になくって、
でも…っ、それが原因で…っ(泣)》
そこまで言って、妃愛さんは言葉を詰まらせた。
その大きな目には、こらえきれなくなった大粒の涙を浮かべて…
「…それって、【100回目の愛歌】、ですか?」
妃《…知って…?(汗)》
そう、それはテレビに疎いあたしでも知ってるくらい
有名すぎる名ドラマ。
不動の人気を誇って、
視聴率王とまで言われていた人気俳優さんの相手役が、
ドラマ初主演で当時まだ新人の“妃愛”さんということで、
メディアからも注目された恋愛ドラマ。
主演二人の激しい絡みがリアルすぎると
視聴者から絶大の反響を受け、
一気に“妃愛”さんの名前が全国区になった先駆けでもある。
妃《…ドラマの撮影で、あたしのスケジュールが
一気に忙しくなったせいで、
章ちゃんともなかなか会えなくなっちゃって、
すれ違いの毎日が続いたの。
…そんな時、相手役の俳優さんと
週刊誌に撮られちゃって…っ》
「…っ!」
妃《…っ章ちゃんは、あたしのこと、
信じるって言ってくれたの…
だけど…っ
メンバーのみんなが、許せないって…。
当然、だよね…
噂立つような行動したあたしが悪いんだし…っ
っでも!誤解なの…!!
あたしは、章ちゃんだけ…っ(泣)》
そういった妃愛さんは、
芸能人としての彼女じゃない。
あたしと同じ、純粋に章大に恋する、一人の女の子だった…
妃《…っごめん、ね。ちいちゃん…っ
でも…あたし、やっぱり章ちゃんが好きで…
振られたけど、あきらめようって思ったけど…
…だめ、みたい…っ(泣)》
妃愛さん…
「…辛、かったよね…っ(泣)」
自然と、涙があふれた…
そして、ゆっくり、妃愛さんを抱きしめた。
だって、あたしだったら辛い…
好きな人に、誤解されたままなんて…っ
妃《…優しいね。ちいちゃん。
あたしのために、泣いてくれるの…?(泣)》
そういって、妃愛さんはその
華奢な体で、優しく、あたしの背中を抱き返してくれた。
あたし以外に、こんなに章ちゃんを想ってくれる人、
きっといない…
あたしは覚悟を決めて、ゆっくり、
妃愛さんの肩を押して、まっすぐに目を見つめた。
「…章大を、よろしくお願いします…」
そう言って深々と頭を下げた。
妃愛さんは、状況が呑み込めないのか
きょとんとした顔であたしを見つめてる…
妃《…ち、さと…ちゃん?(汗)》
「…章大ね、あたしのこと、忘れてるんです。
で、妃愛さんのこと、彼女だと思ってるんですよね?」
妃《っそれはあたしが!(汗)》
「っいいんです!!
…お医者さんに、言われたんです。
無理に記憶を取り戻させれば、
そのショックで無事だった記憶も失いかねないって…
過去を思い出させるより、新しい思い出を
作っていく方が現実的だって…っ」
妃《…っそんな…!》
妃愛さんは、ショックを隠し切れず、
顔が少し青ざめていた。
章大の記憶は、
失ったんじゃなく、混乱してるだけで、
すぐに思い出してしまうと思っていたらしい。
…ほんと、そうだったらよかったのにね…
でも…っ
「…たとえ、章大があたしのこと思い出してくれたって、
そのせいでこれ以上章大の大事な記憶が消えたりしたら
あたしはその方がよっぽど辛い…!
…妃愛さんになら、章大を任せられる。
だから、これからは妃愛さんが、
章大を支えてあげてください。
いい思い出で、章大を埋め尽くしてあげてください!
…章大の幸せが、あたしの、幸せ…だから…っ(泣)」
だめだってわかってるのに、涙が止まらない…っ
ごめんね、妃愛さんのセリフ、今度はあたしに使わせて?
章大とずっと一緒にいたかった。
あたしのこと、思い出してほしかった。
一緒に、幸せになってほしかった…。
そんなエゴは全部、一生この胸にしまっておくから…
今だけは、あなたのように、
綺麗な言葉で飾らせて…っ
「…じゃあ、あたし行きますね(笑)
みんなきっと待ってるから…」
そういって、腰を上げた。
…本音を言うと、早くその場から逃げ出したかった。
妃《っちいちゃん!!(汗)》
「妃愛さん。そんな顔しないで?(笑)
大丈夫。一度は愛し合った二人だもん。
妃愛さんなら、章大を幸せにできる!」
ちゃんと、笑えてる?
あたしはそう言い残して、妃愛さんに背中を向け、
エントランスに向かって歩く。
自動ドアを抜けると、みんなが駆け寄ってくれた。
雛[っちい!!]
忠[大丈夫?!妃愛になんて言われたん?!]
横[殴られたりしてへんやろな?!ほっぺた見せぇ!!]
丸[泣いてんの?!目ぇ赤いで!!]
昴[あんのボケ女、やっぱ殴っとけばよかった!!!]
錦[ヤスもヤスやんな!
あんな女とちい取り違えるなんざ…っ]
そういってあたしを取りかこんで
ほっぺやら目元やらべたべた触って確認するみんな(笑)
「…みんな、ずっと待っててくれたの…?(汗)」
けっこう時間かかったはずなのに…
雛[当たり前やんけ!で、決着ついたか?!]
まるで何事もないかのように
みんなはうなずいてくれるけど、
ふつうこんな時間まで文句ひとつ言わずに待ってくれるかな?
優しすぎるよ、みんな…
「…うん。ついたよ。」
錦[やったなあ!!
よっしゃ、任しとけよちいっ
俺ら全面的に協力するからな!!
あんのくそチンパの頭、
ど突きまわしてでもちいのこと…]
「っ章大のことは、…ね、
妃愛さんに任せたからさ(笑)」
[[………は?]]
横[…ちょ、任せたからって、どーゆーことやねん?]
忠[妃愛にゆわれたんか?!]
昴[あのボケ調子乗りくさって…っ]
「っ違うよ!!(汗)
妃愛さんは、謝ってくれたんだよ?
…あたしが、自分から、お願いしたの。
幸せにしてあげてくださいね。って…(笑)」
あたしがそういって笑うと、
みんな訳が分からないと言わんばかりに
あたしの方を見つめていた…
丸[…ちい、
妃愛と章ちゃんのこと、聞いたん?]
「…うん。」
忠[っやったらなおさら!]
「っみんな!…
妃愛さんのこと誤解してる…っ
妃愛さん、章大と別れた時も、
浮気なんてしてなかったんだよ…?」
昴[……うそや。]
「うそじゃない。」
横[っそんなん!
今ならなんとでも言えるやん!
あいつはちいだましてヤスのこと…っ]
「っ違うって言ってるじゃん!!!!」
あたしが大きな声を出したことに驚いたのか、
みんなが一瞬押し黙った。
「…大きな声出してごめん。
でもね、お願い。
妃愛さんのこと、これ以上悪く言わないで…っ
あたしと妃愛さんは、一緒なんだよ…」
錦[…一緒?]
「そう、一緒。
芸能人だとか、一般人だとか、
年とか立場とかっ、関係ない。
あたしたちは、同じように、
安田章大っていう一人の人を好きになって、
恋をした。
おんなじ気持ちを共有してるの。…っ仲間なの!
さっき、話してみて、
ああ、この人本当に章大が好きなんだな…って、
この人なら、
章大のこと幸せにできるんじゃないかな、って、
そう感じたの…。」
忠[っでも、ちいは…]
「…あたしは平気。(笑)
お医者さんも言ってたでしょ?
章大に今さら、過去なんていらないんだよ…。」
そういったものの、いざ言葉にすると、
本当の決別みたいで…っ
っだめ、泣かない…
雛[…で、ほんまんとこは?]
「……っ(泣)」
ヒナちゃんのばか…っ
我慢してたのに…
錦[…ちい…っ]
亮ちゃんが、優しく抱きしめてくれる。
横[…溜めてるもん、いったん吐け。]
そうやって、亮ちゃんの腕の中で
侯くんに優しく頭を撫でられれば、
あたしの心に作った防波堤はもろく崩れ去り、
とどめていた感情があふれだす…
「っ悲しいよ!
…なんで、忘れちゃうの…っ
妃愛さんに、幸せにしてなんてほしくない…
あたしが、したかった…っ
たとえ、忘れてたって、
どんな形でも、側に…っ(泣)」
消さないで…
かけがえのない時間なの…っ
錦[ちい……っ]
亮ちゃんの、あたしを抱きしめる腕に力がこもる。
「…妃愛さんが、もっとヤな女なら、よかったのにね(苦笑)
そしたら、思いっきりひっぱたいて、
正々堂々と、立ち向かえたのに…っ」
自嘲気味に笑ったあたしの頭は、
苦しそうに歯ぎしりする亮ちゃんの掌で包まれる。
みんな、ありがとう。
こうしてみんながいてくれるから、
とめどなく襲いかかるさみしさや、喪失感にも、
負けないでいられるんだよ…
ごめんね、章大。
もう一緒にはいられない。
私は、一人で歩くこの道を選んだから。
だけど、約束。
誰よりも、きっと
なによりも、ずっと
あなたを愛し続ける。
だから、ねぇ?
いつか生まれ変わっても、
私きっと、あなたを愛し続けるから。
だからその時は、
今度こそ、一緒にいようね…