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A3体調不良ネタまとめ

「綴、どうだ?体調は」
「あ……伏見さん、、、すみません、色々任せちゃって、、、」
「そんなのは気にしなくていいから。どうだ、辛いとこあるか?」
「あー、えーっと、少し頭痛くて、気持ち悪いとかはないんですけど。」
「……熱はだいぶ落ち着いたみたいだな。冷えピタ替えるか。」
「ありがとうございます」

昨日の夕方、やけに気怠そうにしていた綴に熱を測らせて見れば、納得の37.5℃。夕飯の支度はいいからと、部屋で寝るよう促した。一度38℃台半ばまで上がった熱は、一晩明けた今、37℃台前半にまで落ち着いていた。このまま下がりきってくれるといいのだが。

「今日で治すんで、すみません、みんなのこと、よろしくお願いします」
「ああ、わかった。明日はゆっくりできるのか?」
「…いや、明日、バイトなんで、、、治しちゃわないと。」
「そうか………もしキツかったら無理はするなよ。」
「大丈夫っす。もうほとんど熱はないし。あとは寝てどうにか!」
「何かあったらすぐ言ってくれ。おやすみ。」


状況が変わったのは、夕食後のことだった。みんなと同じメニューを、普段より少ない量ではあるものの食べきった綴が「これだけはやらせてほしい」と言って食器を拭いていたとき。拭き終わった皿と布巾を置いて、
「ごめんなさい、ちょっとトイレいってきます」
足早にキッチンを出ていった。
「ああ」
去り際に見えた表情は、なんだか辛そうなものだった。──くそ、気づいてやれなかった。

食器の片付けをパパっと済ませ、トイレに向かう。右手には水の入ったペットボトル。もしもの可能性を考えてのことだ。

あれ、いない。
トイレの鍵は閉まっていなかった。念の為とドアを開けてみても、そこはしんと静まりかえっている。
綴はどこだ、考えを巡らせていたその時。
そう遠くはないどこかから
「えっ、ちょっと、大丈夫?」
少し焦った至さんの声がした。

どうやら洗面所にいるようだった。
慌てて道を引き返す。そこでは、洗面台に手をついた綴が、至さんに背中をさすられている。
「あ、臣。」
「綴、気づかなくてごめんな。吐きそうか?」
「すみませ、わかんない、けど…っ、はぁ」
「なんか吐けないっぽくてさ」
「ちょっと水飲むか?」
「………いや、いいっす」
そう言いながら、ずるずるとしゃがみこんでいった。
「はぁ、はぁっ、」
次第に呼吸が乱れていく。背中を優しくさすっていた至さんの手は、トントンと、呼吸を落ち着ける動きに変わった。
「綴、ゆっくり息しよ」
「なんで……はぁ、ん…っ、どうしよ」
「どうした?気持ち悪いの辛いか?」
みるみるうちに涙を溜めていった綴の目から、ぽろぽろと雫が落ちる。
「ど、しよ、治さなきゃ、っ」

呼吸は乱れるばかり。辛そうな表情が堪らなくて、思わず彼を抱き寄せた。
「おお、臣、大胆。」
胸にかかる息は、服越しでもわかるほど熱い。

口の周りを塞いだからだろうか、次第に呼吸は落ち着いてきた。まあ何より、至さんの声のかけ方が上手だったのだが。優しい声色で、包み込むように。紡ぎ出される言葉にこくりこくりと頷きながら、綴は呼吸のペースを戻していったのだった。この人には敵わないなぁ、なんて思ってしまった。
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