嘘も誠も話の手管
《設定》
名前:翻(ほん)
性別:男
※主×藤
※短い。
目の前の男の舌には複雑な紋様が描かれている。それは、何でも『魔力の源』なのだという。体内から排出されるケムリとして魔力を目にすることは数あれど、その根源がどうなっているのかは体を解剖でもしなければ普通は分からない。というより、解剖したところで何かが見つかる訳でもないと思われる。であるからこそ、明らかに目に見える形でそれが示されているのは、この世界では少し異質にも思えた。
「代々受け継いでんの、コレ。」
「…………は?」
魔力の量がどうだとか────おおよそ自分のコンプレックスに関する話になったとき、■■■が舌をしまった後に言った言葉の意味が藤田にはよく分からなかった。
「うちの家計って、産まれたときは魔力無いらしい。だから両親の魔力を分けてもらうんだと。」
「分けるって……元の、分けてくれた人の魔力は無くなるのか?」
「いんや。なんつーか、コピーっての?無くなるわけじゃないみたいだけど。」
「ふーん……珍しいな、お前ン家。」
自分が生まれ持った実力(ある種の運、とも言える)ではなく、確実にある程度の魔力が分け与えられるのが確定しているのは、藤田にとっては少し羨ましくもあった。
「で。それ、赤の他人にも出来るんだけど。」
「…………は!?」
「やる?」
唐突に示された提案に藤田は面食らったが、徐々に考え込むような表情になり、最終的に何故か声を潜めて聞いた。
「やる……って言っても、どうやるんだ?」
そんなに難しくない、と言った■■■が両手で藤田の頬に手を添えて口を塞ぐまで、この間僅か数秒足らずの事であった。
「嘘だよ。」
「……!!!」
見事に弄ばれたことに対する憤りを飛び越して恥ずかしさと酸欠で涙目のまま顔を真っ赤にするような藤田を■■■はたいそう気に入っている。
「そういう素直なとこが好きなんだよなー。」
「嬉しくない!!」
(了)
あとがき
思いついた勢いで書きました。藤田君の泣き顔が可愛すぎるので、定期的に見たいと思ってしまう。すまぬ。