赤色の宝石
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ドラグーンと過ごすようになって、結構な時間が経った。
ドラグーンは少し気を許してくれたのか、居眠りをするようになった。
穏やかな寝息が聞こえる。名無しは顔を緩ませた。
実のところ、この期間でドラグーンが気になる男性になってしまったのだ。
触れてしまえば壊れてしまいそうな優しさに、ミステリアスなその雰囲気と、感情がないと言っていたのに何かへの強い信念を赤々と燃やしている佇まいに、胸が締め付けられる。
恋だと認めてしまえば、この気持ちを伝えたら、きっとドラグーンは面倒だと思うだろう。
黙っていれば気持ちに気付かれることもない。そもそも、ドラグーンと名無しは住む世界が違う。それに、ドラグーンに釣り合う女性もきっといるだろう。
「……」
こんな風に、言い訳を列べれば列べる程気付かされてしまう。
「ドラグーン……」
好き、と言いそうになった。
目頭が熱くなる、机の上に雫が落ちた。それを隠すように机に突っ伏して、独白する。
「本当はね、手を繋いでほしいの。頭を撫でてほしいの。抱きしめてほしいの……」
「誰にしてほしいんだ」
「……っ……! ドラグーン……! 聞こえてたの……!?」
頷いて、ドラグーンは名無しに向き合った。
「私の目的が終わったら、叶えるための手伝いをしよう。どんなひとが良いか考えていてくれ」
ドラグーンにしてほしい。その気持ちは言わなかった。
「あ、あはは……考えておくね……」
代わりに出た言葉が、胸をささくれさせる。
お願い、気付いて。いや、気付かないで。
背を向けて何処かへ去るドラグーンの背中に向かって、口を動かした。
好き。
声もなく、ただ想いは行くあてなく空を揺蕩った。
血紅玉は未だに見つからない。なぜだかドラグーンの思考は焦りに駆られる。
人間界で見聞きし、調べたものの中にも血紅玉はなかった。
いや、ヒントはあった。
ピジョンブラッドルビーと呼ばれる赤い宝石、あれが魔力を持っているなら、血紅玉の可能性はないことはない。
「おや、ドラグーン」
「司祭……」
司祭と呼ばれた人物、この人物はドラグーンに血紅玉の探索を頼んだ者だった。
「人間界でヒントはあったかな」
「なくはない。だが、参考するものも、資料も何もかも足りない」
「ふむ……竜が好いた者の胸に顕れる可能性はあると読んだよ」
「竜?」
「私達も模索中なんだ、それではこれからも頼むよ」
そう言って司祭は去ってしまった。
残されたドラグーンは歴代の司祭が記した書物で血紅玉の情報を探した。
1時間ほど経った。ふと、名無しのことが頭に過ぎった。
(親しい人間に恋人でもできたのだろうか)
手を繋いで。頭を撫でて。抱きしめて。
自分にそれを求めたのだろうか。もしあの時、触れていれば。この渇きも飢えも満たされていたのだろうか。
そんな考えに耽っていた。途端に激しい目眩と耳鳴り、重々しい動悸がした。
──ね、ドラグーン……。
「何、者だ……?」
女性の声がドラグーンが呼ぶ。
呼吸がうまくできない。苦しい。
濁流のように押し寄せる誰かの『記憶』。
白い細い指が、誰かの頬に触れる。
──好きなのだろう?
今度は違う声。
「何の……話だ……!?」
──もう少し、君は自分の感情のことを考えたほうがいい。またう……
雑音も何もかもがひどい。
何かが落ちる音を聞いて、ドラグーンの意識は返った。
「……耳鳴り……?」
否、違う。
(何者かが私に干渉した)
ドラグーンの意識は既にそちらに向かっていた。
耳をすまして、指先で魔力の糸を伝う。
(魔力の形跡がどこにもない、少なくとも何も発動されてない)
致し方ない、そう言って落とした本を拾う。そしてもとに戻して、ドラグーンはその場をあとにした。
「なに……これ……」
お風呂に入ったときだった。吹き出物と思った胸部に血液みたいな紅い宝石らしいものが埋め込められている。
少なくとも今日の朝はこんなのではなかったはずだ。
「もしかして……ドラグーンの求めてるやつ……?」
触ると少し熱を持つそれ。
震える指でそれの輪郭をなぞれば、やましい考えが頭に浮かぶ。
これをドラグーンにあげるから、彼氏になれ、手を繋げ、抱きしめろ、キスをしろ、そういうことをしろ。
「だめっ……私は……なにを……!」
邪な考えを理性でねじ伏せる。
ドラグーンに相談しよう、彼ならきっと判るだろうから。
心地良いはずのシャワーは、ただ微温湯が皮膚を打ち付けるだけだった。
ドラグーンは少し気を許してくれたのか、居眠りをするようになった。
穏やかな寝息が聞こえる。名無しは顔を緩ませた。
実のところ、この期間でドラグーンが気になる男性になってしまったのだ。
触れてしまえば壊れてしまいそうな優しさに、ミステリアスなその雰囲気と、感情がないと言っていたのに何かへの強い信念を赤々と燃やしている佇まいに、胸が締め付けられる。
恋だと認めてしまえば、この気持ちを伝えたら、きっとドラグーンは面倒だと思うだろう。
黙っていれば気持ちに気付かれることもない。そもそも、ドラグーンと名無しは住む世界が違う。それに、ドラグーンに釣り合う女性もきっといるだろう。
「……」
こんな風に、言い訳を列べれば列べる程気付かされてしまう。
「ドラグーン……」
好き、と言いそうになった。
目頭が熱くなる、机の上に雫が落ちた。それを隠すように机に突っ伏して、独白する。
「本当はね、手を繋いでほしいの。頭を撫でてほしいの。抱きしめてほしいの……」
「誰にしてほしいんだ」
「……っ……! ドラグーン……! 聞こえてたの……!?」
頷いて、ドラグーンは名無しに向き合った。
「私の目的が終わったら、叶えるための手伝いをしよう。どんなひとが良いか考えていてくれ」
ドラグーンにしてほしい。その気持ちは言わなかった。
「あ、あはは……考えておくね……」
代わりに出た言葉が、胸をささくれさせる。
お願い、気付いて。いや、気付かないで。
背を向けて何処かへ去るドラグーンの背中に向かって、口を動かした。
好き。
声もなく、ただ想いは行くあてなく空を揺蕩った。
血紅玉は未だに見つからない。なぜだかドラグーンの思考は焦りに駆られる。
人間界で見聞きし、調べたものの中にも血紅玉はなかった。
いや、ヒントはあった。
ピジョンブラッドルビーと呼ばれる赤い宝石、あれが魔力を持っているなら、血紅玉の可能性はないことはない。
「おや、ドラグーン」
「司祭……」
司祭と呼ばれた人物、この人物はドラグーンに血紅玉の探索を頼んだ者だった。
「人間界でヒントはあったかな」
「なくはない。だが、参考するものも、資料も何もかも足りない」
「ふむ……竜が好いた者の胸に顕れる可能性はあると読んだよ」
「竜?」
「私達も模索中なんだ、それではこれからも頼むよ」
そう言って司祭は去ってしまった。
残されたドラグーンは歴代の司祭が記した書物で血紅玉の情報を探した。
1時間ほど経った。ふと、名無しのことが頭に過ぎった。
(親しい人間に恋人でもできたのだろうか)
手を繋いで。頭を撫でて。抱きしめて。
自分にそれを求めたのだろうか。もしあの時、触れていれば。この渇きも飢えも満たされていたのだろうか。
そんな考えに耽っていた。途端に激しい目眩と耳鳴り、重々しい動悸がした。
──ね、ドラグーン……。
「何、者だ……?」
女性の声がドラグーンが呼ぶ。
呼吸がうまくできない。苦しい。
濁流のように押し寄せる誰かの『記憶』。
白い細い指が、誰かの頬に触れる。
──好きなのだろう?
今度は違う声。
「何の……話だ……!?」
──もう少し、君は自分の感情のことを考えたほうがいい。またう……
雑音も何もかもがひどい。
何かが落ちる音を聞いて、ドラグーンの意識は返った。
「……耳鳴り……?」
否、違う。
(何者かが私に干渉した)
ドラグーンの意識は既にそちらに向かっていた。
耳をすまして、指先で魔力の糸を伝う。
(魔力の形跡がどこにもない、少なくとも何も発動されてない)
致し方ない、そう言って落とした本を拾う。そしてもとに戻して、ドラグーンはその場をあとにした。
「なに……これ……」
お風呂に入ったときだった。吹き出物と思った胸部に血液みたいな紅い宝石らしいものが埋め込められている。
少なくとも今日の朝はこんなのではなかったはずだ。
「もしかして……ドラグーンの求めてるやつ……?」
触ると少し熱を持つそれ。
震える指でそれの輪郭をなぞれば、やましい考えが頭に浮かぶ。
これをドラグーンにあげるから、彼氏になれ、手を繋げ、抱きしめろ、キスをしろ、そういうことをしろ。
「だめっ……私は……なにを……!」
邪な考えを理性でねじ伏せる。
ドラグーンに相談しよう、彼ならきっと判るだろうから。
心地良いはずのシャワーは、ただ微温湯が皮膚を打ち付けるだけだった。